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[アニメ]Re:ゼロから始める異世界生活 〈感想・レビュー・評価〉 ヴェノムではなく雷電がエイハブ船長!?

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トレーラー

 
評価:80/100
 
※原作未読
 
作品情報
放送期間
2016年4月~9月
話数
全25話
アニメ制作会社
WHITE FOX
 

TVアニメの歴史に残る? 怒涛の衝撃展開オンパレード

 
 大切な人を死から救うため、自らの死を持って特定の時間(劇中で主人公がセーブポイントと呼ぶ地点)まで時間を遡る死に戻りという能力を駆使し、悲惨な運命を変えていく……という、ジャンルがループもので、主人公がオタクでタイムリープやループものというジャンルを知っているややメタ視点な作りで、アニメ制作会社がホワイトフォックス、となるとまず同社でアニメ版を手掛けたシュタインズゲートが真っ先に思い浮かびます。
 
 シュタインズゲートに比べると、時間を遡れるという非現実的な話に説得力を持たせようとする設定自体の作り込みは大幅に劣るものの、誰かに同じ時間を繰り返しているということを打ち明けようとすると謎の力で自分・もしくは打ち明けようとした相手に死が降りかかるという厳しいルールが存在し、誰にも相談できない孤独と絶望で押し潰されそうになるという、感情描写に焦点が絞られています
 
 特に目を引くのが、この手のループものの中でも極端に死に際の痛みや苦しみ、死への恐怖をじっくり長々と丁寧に描くこと。死に戻りというループ能力を駆使して困難を乗り越えていく話なのに、一回一回の死が心に決して修復できないヒビを刻むようで、「こんなことを繰り返していたら主人公がいつか壊れるぞ……」という、死に戻りが、文字通り命懸けの行為であることの説得力が半端ではありません(映画のオール・ユー・ニード・イズ・キルの死の軽さの真逆)。
 
 特に終盤は辛くて目を背けたくなるほど主人公を精神崩壊のギリギリまで追い詰め続け、毎話ほぼ欠かさず強烈なクリフハンガー的な終わり方なため、次の回が気になって視聴を中断できなくなることも多かったです。
 
 脚本の出来もさることながら、映像テクニック面も恐怖の対象に恐る恐る視線をスライドさせるPAN撮影や、主人公が信じ難い現実に直面した時の心の動揺を反映させ画面をグラグラ揺らしてみたり、主人公が死んだ後に世界が静かに終焉を迎える様をもう二度と動くことはない亡きがら同様フィックスの長回しで見せたりと、サスペンス演出の見本市のような様相も呈し、サスペンス好きとしてはテンションが終始上がりっぱなしでした。
 
 ……ただ、現実世界から突如見知らぬ異世界に召喚されるローファンタジーという設定すらサスペンスに利用した結果、看過しがたい問題もそこここに生じています。
 

衝撃展開を優先した結果、ローファンタジー設定が致命的な説明不足に……

 
 見知らぬ異世界へやってきたばかりで、この世界について主人公が無知であるということを利用し衝撃展開を作るというアプローチの影響で、終始舞台となる異世界そのものの説明不足が付いてまわります。
 
 この世界の住人にとってはただの常識でしかないものに主人公が驚かされるという、あえて詳しい説明を省くだけという手法も多く、その帰結として後々真相が分かると別段大したことはなかったんだなという肩透かし率も高いです。
 
 同じローファンタジーでも十二国記(月の影 影の海)なら中盤までには説明し終えてしまう程度の現実世界とは異なる人々の生活の様子や価値観、舞台となる十二国の基本知識や王選定のルール、この世界における王という存在の重要性などを、本作は全25話ほぼ先延ばしし続けるため、説明不足によるもやもやも晴れることがありません。
 
 この異世界という現実とは異なる特殊ルールが存在する舞台の、特殊ルール部分でサスペンスを作ってしまうことの問題は多くの不具合の原因となっており、中でも特に気になったのは登場人物たちの強さが図れないことと、王選の飲み込み辛さの二点。
 

この人は強いの? 強そうに見えるだけなの?

 
 劇中、魔法使いやら精霊術師やら、剣聖やらといったいかにもな用語が頻出する割に、ほとんど用語の説明がされないため、眼前の敵や味方がどれくらいの手練れなのかイマイチ判断できないという状況が最後まで引っ切り無しに起こり続けます。
 
 敵のハッキリとした力量が計測できないということも見る者を不安にさせる工夫と言えばそれまでですが、それにしても激しいアクション部分は、説明が不十分な煽りを受け、常人を遥かに超えるほど強いから人間離れした動きをしているのか、アクション作画に気合いが入っているからそこまで極端なけれん味のある動きをするのか見分けが付きません。
 
 キャラの人間離れした動きが世界観設定に起因するものなのか、アニメーターの作画のタッチに起因するのか不明なため、凄まじい動きを見せる度に「これは設定上強いのか作画的な誇張表現なのかどっちなんだろう?」といちいち混乱させられ疲れます。
 

この異世界にも楽俊(らくしゅん)がいれば……

 
 主要な舞台となるルグニカ王国の空席の玉座を巡る王候補たちによる玉座の奪い合いという話も、説明不足が祟って非常に飲み込み辛いものとなっています。
 
 王を選ぶ話なのに、肝心の国や民が完全にないがしろにされ、ひたすら主人公のスバルとエミリアの話(もしくはレムとのやり取り)に尺が奪われるので、国がそこまで王を求めているという切迫感が一つもありません。
 
 異世界への無知さをサスペンスに利用したツケで、よく知らない異世界に来たばかりの右も左も分からない自分に優しくしてくれた、よく知らない見た目が可愛い女の子がよく知らない国の王候補で、自分に優しくしてくれるくらいだからよく知らないけどきっとりっぱな王になるだろうと思い、よく知らないシステムで王が選ばれるので、よく知らないけど大変っぽいから手伝ってあげよう、という無茶苦茶な話になっており、主人公の成長などを間に挟んでも、正直まったく乗れませんでした。
 
 十二国記のように、勝手の効かない異世界に飛ばされ苦労した後、十二国について楽俊らくしゅんからしっかりレクチャーを受け細かい疑問を潰し、楽俊のような良い奴が幸せに暮らせる国があればいいのにと願わせ、玉座を巡る話に移行する心構えをするというプロセスが完全に抜け落ちています。
 
 目先の衝撃展開はあるものの、異世界(と、ルグニカ王国)そのものへは1ミリも興味が持てないため話の推進力自体は弱く、派手な展開が過ぎると興味が急速に冷めてしまうことも何度かありました(さすがに終盤の怒涛の勢いの途中では皆無)。
 
 ローファンタジーとしては絶対に必要なその世界そのものをキャラクター化させ興味を持たせるというプロセスをないがしろにし、ひたすら美少女キャラとイチャイチャしてばかりの展開に全25話の大部分を使い切るという、恐ろしいまでの尺の無駄使いぶりで、若干呆れました。
 
 美少女キャラのオマケではなく、もう少し異世界というものを尊重し、そこに生きる人々も丁寧に描いて欲しかったです。
 

最後に

 
 衝撃展開の連続で途中で視聴を中断できなくなるほど病み付きになるサスペンス性という長所。異世界に対する説明不足となんでもかんでも美少女キャラに頼る安易な姿勢で土台がグラグラ過ぎてローファンタジーとしては欠陥だらけという短所。
 
 内なるサスペンス好きな自分は大喜びで、ハイファンタジー・ローファンタジー問わずファンタジー好きの自分は全否定と、長所・短所が極端で自分の中の好み同士もぶつかりケンカになるものの、やはりサスペンスアニメとしてここまでの完成度に仕上げたのであれば評価せざるを得ません(ちなみに、ドラマのゲーム・オブ・スローンズはサスペンス好き・ファンタジー好きの自分、揃って満点だった)。
 
 ローファンタジーとしては魅力に乏しいものの、ループものサスペンスアニメとしては大変刺激的でした。
 

 

始まりの終わりと終わりの始まり
 
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