トレーラー
評価:80/100
ジャンル | オープンワールドサバイバル タワーディフェンス |
発売日(日本国内) | 2018年2月21日 |
開発(デベロッパー) | コナミデジタルエンタテインメント |
開発国 | 日本 |
ゲームエンジン | Fox Engine |
- ゲームの概要
- 余計でしかないメタルギア成分
- 心地よいデスペナルティに支えられた中毒性
- 惜しい点その1 クラフト
- 惜しい点その2 サバイバル
- 惜しい点その3 タワーディフェンス
- まだまだ大量にある不満あれこれ
- 最後に
ゲームの概要
この作品は、『メタルギアソリッド』シリーズのスピンオフの外伝です。『MGSⅤ』と設定はある程度共有していますが、メタルギアの生みの親である小島監督が関わっておらず、本編とはまったくの別物です。
『メタルギア』シリーズとしてはストーリーにもキャラにも魅力が乏しく、ゾンビものとしても底が浅く駄作の極みでした。
しかし、サバイバル要素とタワーディフェンス要素をハイブリッドした中毒性重視のオープンワールドサバイバルゲームとしては光るものがあります。
余計でしかないメタルギア成分

自分はメタルギアの生みの親であり、偉大なゲームデザイナーであり、天才ストーリーテラーでもある小島監督に多大な影響を受けており、ハッキリ言って小島監督ノータッチの本作に対する事前の不安は相当なものでした。PVを作成するなど多少は関係していた『メタルギア ライジング』とは比較にもなりません。
しかし、ゲーム開始直後に「これはゲームのツボを心得た人が作っている!」という安堵を覚え、不安は一瞬で払拭されてしまいました。
メタルギアとして見たら、小島監督という常にセンス・オブ・ワンダーを志向する絶対要素を欠いているせいで演出・シナリオその他諸々は安っぽく見るべきところは特にありません。
『MGSⅤ:TPP』の地形や建物・兵器を使い回すため誰でも知っているある映画(オチが超有名すぎてタイトルを書けない)を連想させる浅い世界観設定と、それと合わせミステリーでもあるメタルギアっぽさを出そうと取って付けたような衝撃展開が置かれる終盤もただただ酷すぎて唖然としました。
その安易さとダサさはメタルギアとタイトルに付いているせいで余計際立って見えます。
小島監督がメタルギアに多大な影響を与えた一本として大好きと公言する超有名映画のオチの丸パクリを、あろうことかメタルギアでやるとはどういう神経をしているのか本当に疑問です(多分、小島監督が本作をプレイしていたらラストでブチ切れたと思います)。
ただ、肝心のサバイバル部分はFOXエンジンの軽快な操作レスポンス相まって非常に中毒性が強く、本作の出来の良さならメタルギア要素を全て取っ払っても十分に一本の新規IPとして通用したと思います。
メタルギアという小島監督を意識させるタイトルだけが邪魔で、メタルギアでなかったらもっと素直に楽しめたのにという本末転倒さが残念でなりません。
心地よいデスペナルティに支えられた中毒性

オープンワールドゲームのスタイルとしては、メインミッションをこなしつつ、ファストトラベルポイントを解放しながら徐々に行動範囲を広げていくというUBIタイプの作りで、それ自体に大して新鮮味はありません。
ただ、サバイバルものというゲームの特性上マップ上のどこにでも序盤から好きに移動できるというよりは、ゲーム進行に応じて行動範囲が徐々に広がっていくような感じで、オープンワールドなのに進むルートは端から決まっているリニア型にも近いプレイ感覚もあります。
そして、作品から受ける感触は、オープンワールドゲームのそれというよりもウィザードリィ系(『世界樹の迷宮』、『エルミナージュ』、など)のダンジョンRPGに近いものを感じました。
それはオートセーブなしで、セーブされるのはベースキャンプ(拠点)に戻った時だけという、かなり厳しいダンジョンRPG的なセーブ制限があるためです(ロストダンボールという、ゲームオーバー時や瞬時に拠点に帰還したい場合に拾った素材をその場に残せる最低限の救済措置はあります)。
本作は拾ったクラフト素材やフィールドに設置してあるコンテナから入手できるクラフトのレシピやレアアイテムなど、手に入れたアイテムを一旦ベースキャンプに持ち帰りセーブして入手を確定しなければなりません。そのため、手に入れたアイテムを失わないためにも、どれくらい進もうか、どこで引き返そうかの選択を常に迫られ続けることになります。
このアイテムを拾っても拠点に持ち帰るまでは安心できないという緊張感は、一瞬でパーティが全滅する高難易度ダンジョンRPGでダンジョンを生き延びダンジョン内で稼いだ経験値やお金を失わずに済んでホッと胸を撫で下ろしセーブする瞬間の安堵に非常に近いものを感じました。
本作はサバイバルものなので空腹や喉の渇きという概念があり、何もしなくてもリアルタイムで腹が減り・喉が渇き、ライフやスタミナゲージの上限が減り続けます。
さらに、塵の海という巨大な塵の壁に覆われたエリアがあり、ここに入ると酸素タンクのゲージも減っていき、敵だけでなく環境までもが牙を向いてくるため、常に進むか退くかのプレッシャーで神経がすり減り続け、心地よい緊張が味わえました。
このダンジョンRPG的な探索の緊張感と、拠点に帰還した際の安堵感をうまく落とし込んでいる手腕は見事でした。
ただ、まだまだ粗削りな点が多く、手放しで絶賛するほどの域には達していません。
惜しい点その1 クラフト
まず疑問だったのが、クラフトのレシピがフィールドに設置してあるコンテナから入手できるという謎の仕様です。
なぜベースキャンプ(拠点)というものを作っておいて、拠点を発展させたらクラフトできるアイテムが増えるとか、アイテムのグレードが上がるとか、そのような当たり前の作りにしなかったのか意味が分かりません。
ベースキャンプの発展とクラフトを連動させたら、
探索してクラフト素材を入手→拠点が発展し強力なアイテムをクラフト可能に→装備を強化してまた素材を求めて探索に出掛ける
というリズミカルなサイクルが作れたのに、現状ではただ探索で入手したものを持ち帰る場所程度の存在感で拠点の設備が充実しても喜びがありません。
惜しい点その2 サバイバル
ベースキャンプに存在感がないことと関連するのが、かなり序盤で食料や飲み水が簡単に確保可能となってしまうこと。
これは食べ物や飲み物を容易に確保することが困難という過酷な世界設定が壊れてしまうので、もう少し飲食物の確保に苦しむという期間は長めに設定して欲しかったです。
それに、かなり重要な問題なのが、持ち運べるアイテム量がいくら何でも多すぎることです。
サバイバルものに最も重要な、どのアイテムを持ち運びどのアイテムは渋々倉庫に預けるのかという葛藤が一切生じないほど大量にアイテムを持ち運びできるため、食べ物も飲み物も持ち運び放題で、中盤からはただお腹が空いたら食べ、喉が渇いたら飲み、酸素が無くなったらクバンエナジー(『ダークソウル』におけるソウルのような経験値&お金の役割を果たすもの)を消費して補給、というサバイバル部分が作業になってしまうという問題が生じます。
終盤は物資に余裕がありすぎて、序盤にはあった探索時に常に拠り所のない不安に襲われ続けた感覚が懐かしくなりました。
惜しい点その3 タワーディフェンス

本作はイベント時やファストトラベルポイントを確保する際や、クリア後にベースキャンプを強化するためのベースキャンプ採掘をする時などに、大量に押し寄せる敵からベースキャンプや機械を防衛するというタワーディフェンスパートに移行します。
このタワーディフェンスパート自体は、若干ダラダラ長いという欠点はあるものの、毎回手に汗握る程度には忙しくタワーディフェンスというジャンルの醍醐味は最低限味わえます。
ただ、欠点というよりはもっと面白くできたのになぜそうしなかったのかという疑問も多々残りました。
まず、敵の進行を妨害するために設置する防衛ユニットの種類が乏し過ぎること。
バリケードやフェンスという、『メタルギア』とは思えないほどSF色がなく垢抜けない設定なのは一旦置いておくとしても、どれもこれもただ敵を足止めするワンパターンすぎるもので作業になりがちな点が気になりました。
もっと攻性のトラップの種類が欲しいとか、タワーディフェンスには当たり前のドローンやタレットなど、敵を自動で攻撃する防衛ユニットの種類の足りないことへの不満が尽きません。
結局一人プレイでは敵の進行ルート全てを駆けずり回って処理しなくてはならず、タワーディフェンスにおけるユニットの効率的な配置の仕方を考え、トライ&エラーをこなす要素が乏しく単調に感じます。
それに、クラフト要素を入れているせいで強力なトラップを作成するのにレアな素材が必要で、使い勝手のいいユニットを好き放題使えないというもどかしさもありました。
クリア後に自動で敵を迎撃できるユニットを使用してみるとあまりの快適さに「どうしてもっと早くこれを使わせてくれないんだろう・・・」と不満を覚えました。
まだまだ大量にある不満あれこれ
近接武器をメインに使う戦闘はゲームに慣れていない序盤はまだ練習がてらいいにしても、中盤以降はさすがに銃火器を自由に使わせて欲しかったです。
タワーディフェンスの防衛ユニットのバリエーションの乏しさと、土台のMGSⅤがそもそもシューターだったため、近接武器を使用する戦闘を主眼に作られていないという問題が重なり、ひたすら敵を切ったり突いたりという作業に飽き飽きします。
ゾンビものでも、『ダイイングライト』のような軽快なパルクールと近接戦を融合させたテンポが抜群の戦闘ならまだしも、本作のような敵の攻撃が及ばない障害物の手前からひたすら地味に攻撃し続けるという変わり映えしようのない戦闘なら、いっそ銃で良かったのにと思います。
探索時は音で敵を引き寄せないように静かな近接武器や弓を使い、敵が大群で押し寄せるタワーディフェンスパートは音を気にしなくていいので銃火器を用いても大丈夫など、メリハリがあれば文句ありませんでした。
後、『MGS3』とまったく同じで怪我の治療要素は邪魔でしかありません。
何かある度にメニュー画面を開いてゲームのテンポを殺すような要素を復活させるくらいなら、3や4で好きだった自分が今どれくらい周囲の景色に溶け込んでいるのかを示すカムフラージュ率のほうを復活して欲しかったです。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
悪玉ストレスを除去して、善玉ストレスを増やしたら、もっともっとサバイバルゲームとして上を狙えるポテンシャルを秘めているので、『メタルギア』という看板を外して新規IPとして出して欲しかった一作です。
リンク