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[レビュー]ゲーム・オブ・スローンズ シーズン7 第七章:氷と炎の歌 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:100/100
 

 

イントロダクション

 
 全7話。
 
 あらすじ
 
 デナーリス・ターガリエンと女王の手に任命されたティリオン・ラニスターは、ラニスター家を激しく憎むタイレル家のオレナ、ドーンのエラリア・サンドと同盟を結ぶ。そして、穢れなき軍団アンサリード、騎馬民族ドスラク人、そして三頭のドラゴンという大戦力を引き連れ、七王国征服のため狭い海ナローシーを渡りウェスタロス大陸のドラゴンストーンに上陸する。
 
 一方、七王国の女王として君臨したサーセイ・ラニスターは、圧倒的な劣勢の中デナーリスを迎え討つため、くろがね諸島の玉座を簒奪したユーロン・グレイジョイと手を結び、世界最強の海軍力を手中に収める。
 
 しかし、北部のの向こうでは、ついにホワイトウォーカーを中心とする、夥しい数の死者により構成された大軍勢が南下を開始した。北の王となったジョン・スノウは人間同士の争いを止め、鉄の玉座ではなく北にこそ目を向けるべきだとデナーリスを説得するも、デナーリスは死者たちの存在を信じようとはせず……。
 
 ついに七王国征服のためウェスタロス大陸に上陸したデナーリスと、七王国の女王となったサーセイ、人間同士の争いを止めようと命懸けで二人の女王を説得しようと試みるジョン・スノウを中心に話が進む。
 
 その他、知識の城シタデルで死者たちについて書物を調べようとするも死者の存在を信じないメイスターたちのせいで調査が捗らず憤るサムウェル・ターリー。光の王の導きでブラザーフッドと共に壁の北を目指すハウンド。ベイリッシュ公の策略で仲違いするアリア・スタークとサンサ・スターク姉妹らの話が並行して描かれる。
 
 
 シナリオの溜めがイマイチで盛り上がりに欠けたシーズン6とは打って変わり、映像面・シナリオ面ともにほぼ文句の付け所のない、シリーズ最高の完成度に仕上がっている。
 

「これだよ、これが見たかったんだよ!!」と唸ってしまう、シーズン6からの劇的な変化

 
 前シーズンの脚本の出来栄えにはかなりの不満を覚えたので、ゲーム・オブ・スローンズシリーズ初である次のシーズンに対して期待よりも不安が勝るという心持ちでおっかなびっくりシーズン7を見始めました。すると、シーズン6の体たらくは一体なんだったんだと思うほど、過去のどのシーズンをも余裕で上回る、ドラマとしては破格にも程があるほどの画面の演出密度と脚本の濃密さに感動させられました。
 
 1カット1カット神経を尖らせ画面から無駄を削ぎ落とし切り、手抜きなど微塵も感じさせない張り詰めた緊張感が漂う見事に引き締まった映像に仕上がっており、一話の冒頭から最終話までほぼ魅了されっぱなしでした。
 
 役者だけでなく、背景となる荒れた海や、草原、川面、極寒の雪原といった景色、舞台セットや衣装などの美術、ドラゴンなど幻想生物のCGに至る画面内に納まるあらゆるものに場面に合わせて演技をさせており、これまでのシリーズの中でも突出した画面の豪華さを誇ります。
 
 これまでもずっとされてきた、室内の照明を暗めにして、蝋燭のちらちらとした火の揺らめきを役者の表情や鎧の表面に反射させ画面内で常に絵的な変化が途切れないような趣向。黒い防寒着を着せることで雪の白さを目立たせる工夫。それらに加え、最新のCG技術やそれをどう実在の役者の演技と違和感なく組み合わせるのかのアナログな戦略も極限まで洗練され、隙がまったくありません。
 
 特にシリーズの後半に行くにつれ重要度が増してくる火の描き方のうまさは群を抜きます。蝋燭・たいまつ・篝火・火あぶり・ベリックやミアのソロスの燃える剣・鬼火ワイルドファイア・ドラゴンの吐く炎など、優しかったり・恐ろしかったり、命を救ったり・奪ったりと、様々な表情を見せる火。それを繰り返し見せることで、シナリオ的にではなく、映像で火に演技させ特別な意味合いを持つ対象であると自然と植え付けてしまう手法は、長大なシリーズである利点を最大限発揮し、無類の効果を発揮できています。
 
 シーズン6であれほどげんなりさせられた脚本も、完成度の高かったシーズン3・4……どころかそれすら上回るほどの巧みさで、味方同士で談笑しているだけでも会話内容に作品知識を求めてくる遠回しな皮肉、直接的・間接的な多量な毒を含み、気が抜けません。
 
 ドラマの積み上げが丁寧な分、ただこれまで視点が交わらず独立して進んでいた者が合流するのはもちろん、過去に離れ離れになってしまった者同士が再会するだけでも興奮を覚えます。ついに拡散していた群像劇が収斂しゅうれんし、一つの明確な像を結ぶため、大河的なスケールの豪華さが存分に味わえ、贅沢にもほどがあるほどの物語体験が堪能できます。
 

儚く去りゆく者、しぶとく生き残る者

 
 一人一人が主役級の魅力を持つティリオンやデナーリス、ジョン・スノウなどの主要人物はじめ、ほぼ全員スピンオフドラマを作っても成立するほどの脇役と呼ぶには失礼なほど濃いサブキャラたちが一堂に会する様は、話数を重ねられるドラマならではの喜びに溢れ感動的でした。
 
 自分的に大好きだったある人物が今シーズンで退場してしまい寂しかったですが、この人の幕引きの仕方はこれまでのどの人物に比べても丁寧で品が良く描かれています。好きなキャラがいなくなるのに最期が綺麗だから満足という、ほぼ争いに敗れた登場人物は惨い死に方が当たり前なゲーム・オブ・スローンズ特有の現象で、このため「こんなに静かな幕引きを用意してくれるなんて!」と、不満は特に感じませんでした。
 
 今シーズンで一番印象が上向いたのはサーセイ・ラニスターでした。前シーズンの見てて不快でしかなかった状態から脱し、父のタイウィンの狡猾さと息子のジョフリーの暴君ぶりまで吸収し、ラニスター家の生きた象徴と化し、存在感がぐっと増しました。サーセイはこれまでのドラマの積み重ねで「この人絶対自分が破滅しそうになったら王都の全ての民を巻き込んで鬼火ワイルドファイアで自爆して死ぬぞ」という、狂王エイリス・ターガリエンにすら劣らない狂気を宿し、 何をしでかすかまったく分からない緊張感の塊状態で油断なりません。
 
 このキャラだけは何がなんでも平穏な死に方だけはしないだろうなという意味で、サーセイ株が急上昇しました(逆に、意外性を狙って一番穏やかな最期を迎えるという可能性もある。この人が安らかな最期を迎えることが最も衝撃展開)。
 

不満あれこれ ※ネタバレあり

 
 本作の異常な完成度に対して些末程度ですが不満もそこそこありました。
 
 まず、2話の船上での戦いが、激しく燃え盛る船団のビジュアルを夜の暗さで強調させたいという意図は分かるものの、単純に画面が暗すぎて誰が何をしているのかさっぱり分からない点。このシーンでそこそこ出番もあった人物が殺されるため、いくら何でも死に際が惨いとか凄惨ですらなく、ただ単に暗さで見えないなどという最期は地味でかわいそうです。
 
 後、物語の整合性やテーマ・メッセージよりもサスペンス性を優先して欲しいと願うほどの重度のサスペンス大好き人間として、気になった構成が6話と7話。
 
 6話はデナーリスがドラゴンに乗って飛び立ってしまう映像を事前に見せてしまうので、ただの到着待ち状態となってしまうため、出来ればその前の段階で救援に向かうか否か迷っている、もしくはどちらかに決めたがどっちを選んだかは見る側には分からないという段階で提示する情報を止めて欲しかったです。こっちのほうが助けが来るかどうか分からず、来た際のカタルシスがより増したのにガッカリでした。
 
 7話も壁に死者たちが押し寄せ破壊しようとするも最初は壁が頑丈で壁を壊せず一旦安心させてからあの規格外のバケモノが出てきて壁を破壊するという手順のほうがより絶望度が増したのに、いきなり登場してそのまま工夫もなく破壊するので、サスペンスになっていません。この部分にサスペンス性を出すにはまず壁がどれだけ頑丈なのかを見る側に説明し納得させてから、その崩れる筈のない壁が崩れるというプロセスを経ないと絶望感が出ないのに、そこがまるで出来ていません。
 
 この二つのシーンは今シーズンでも最大級のカタルシスポイントになり得たのに、情報の提示の順序や描写の不足のせいでシーズン6と同じように見た目が派手なだけの印象で止まってしまっているので、勿体ないです。
 

最後に

 
 シーズン6で覚えた嫌な予感は、ただただ出来栄えの確かさだけで根こそぎ払拭してくれました。
 
 シリーズのブランドを一切ぶれない見事なバランス感覚で磨いて磨いて磨き抜き、世界の頂点に君臨するドラマの王になるまで育て上げた、小細工なしの神がかった奇跡の完成度!!

 

ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン

 

ドラゴンストーン

ドラゴンストーン

 
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