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[レビュー]ゲーム・オブ・スローンズ シーズン5 第五章:竜との舞踏 〈感想・評価〉

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トレーラー

 
評価:90/100
 
 

イントロダクション

 
 全10話。
 
 あらすじ
 
 無実の罪で死刑にされる直前、辛くも王都から逃げ延びることに成功したティリオン・ラニスター。心底ラニスター家に失望したティリオンは、ヴァリスの提案で、優れた君主となる可能性を秘めたデナーリス・ターガリエンが本当に七王国を統治できる器なのかどうか真価を見極めるべく、エッソス大陸のミーリーンへと向かう。その頃、ミーリーンでは奴隷制を廃止し、街に変革をもたらしたデナーリスに対し、ハーピーの息子たちを名乗る過激な集団が激しく反発し、デナーリスを慕う穢れなき軍団アンサリードの兵士が惨殺される事件が発生しており……。
 
 群像劇の中心的人物であるティリオン(と、アリア・スターク)がエッソス大陸に渡ったため、舞台の中心がエッソス大陸へと移る。その他、憎きタイレル家を潰すため七神正教の過激派に武力を与えるも墓穴を掘ってしまうサーセイ・ラニスター。ナイツウォッチの仲間たちの激しい反対を押し切って、ホワイトウォーカーから野人たちを守るため、何とか壁の南へ逃がそうと奮闘するジョン・スノウ。野人たちを自軍に引き入れ、北部総督であるボルトン公から北部を奪取しようと画策するスタニス・バラシオン。ベイリッシュ公の指示で家族の仇であるルース・ボルトンの息子ラムジーと結婚させられるサンサ・スターク。キャトリンとの誓いを果たすためスタークの娘たちを保護しようと奔走するブライエニー。娘であるミアセラを救出しようとドーンに乗り込むジェイミー・ラニスター。エッソス大陸のブレーヴォスにある黒と白の館で暗殺者になるため修行するアリア・スタークらの話が並行して描かれる。
 
 
 物語の核であるティリオンが王都を離れたため、話の焦点が王都から各地に分散してしまい、シーズン4のような密度がなくなった。話の勢いは止まらないものの、次のシーズンへ向けての布石の印象が強く、衝撃的な展開はあるが、今シーズン単体ではやや物足りなさも残る。
 

悲劇のエスカレートは止まらず……悪が栄え善が滅ぶ世界

 
 相変わらずシーズンを重ねるごとに登場人物たちを痛めつける無慈悲な仕打ちは凶悪さを増していく一方で、今シーズンも罪もない善良な者が残虐極まりない目に遭い、その血も涙もない姿勢は一貫し、志半ばで死にゆく者たちの苦しみや無念さを想像し何回も泣いてしまいました。
 
 主要登場人物たちはほとんど目を背けたくなるようなむごたらしい悲惨な最期を迎える上に、主要な悪党すらも相当数死んだので、もう残っているのは大半が小悪党という異常事態。死を願ってしまうような悪者は生き残り、魅力的な者たちは次から次に退場していくため、もう生き延びて欲しいという願いすら虚しくなり、ただ安らかな最期さえ迎えてくれればいいと考えが変わりました。
 
 シーズンを重ねるごとに悲壮さの色が濃くなる一方なため、新しいシーズンを見終えた後に毎回過去のエピソードを復習がてら見直すと、まだまだ前シーズンはあれでも希望があったのだと思い知らされます。このエスカレートの仕方が非常に計算されており、どんなに人が死のうとも、その人が生きていたことの温もりや影響が次のシーズンにも残り続けるため、過去の衝撃的なエピソードの魅力は何ら目減りしません。
 
 決して悲劇がただの一過性の刺激に没することはなく、作品の血となり肉となる……そして、シーズンを重ねるごとに悲劇を貪欲に吸収し続けてきたゲーム・オブ・スローンズという作品そのものが肥え太り、もはや手が付けられないほどの重みとなりました。
 
 ……ただ、あまりにも魅力的な登場人物を次から次に退場させることで問題も生じてきました。
 

カリスマキャラが次々退場していく弊害

 
 ゲーム・オブ・スローンズという作品の大きな魅力の一つは、繰り返しの視聴に難なく耐えられるほど、映像作品としての豪華さや役者の存在感が強固な点。しかし、次から次に衝撃展開が起こるという物語的な要請上、どうしてもシーズン1から丁寧に描いてきた魅力的なキャラが次から次に容赦なく退場していくため、徐々に小悪党や存在感の薄いキャラ比率が高くなり、若干繰り返し視聴する際に飛ばしたいと思う箇所も増えてきました。
 
 特に、ボルトン公の息子のラムジーは、正直魅力の乏しいジョフリー・バラシオンもどきくらいの存在感しかないので、この人の出番がやたら増えだすと若干退屈に感じてしまいます。変態サディストとしてジョフリー・バラシオンが何をしでかすのか予想できない分素晴らしかったため、あれを見た後だと「またこのタイプか……」と既視感を覚えてしまい、新鮮味がありません。
 
 自分的にはシーズン3から登場したタイレル家のオレナが大好きで、この人が画面に出てきてマシンガントークで喋り出すとワクワクしたのに、出番が急激に減ったため王都の会話劇から華やかさが無くなり味気ないです(シーズン3でヴァリスがオレナが王都に来たら急に王都が明るくなったと社交辞令で言ったセリフはあながち冗談でもない)。実はシーズン3や4の会話劇がやたら面白く感じたのはオレナの存在が大きかったなと、今になって気付かされました。
 
 今シーズンはやたらサーセイ・ラニスターのマージェリー・タイレルへの嫉妬に端を発した自業自得な頭の悪いトラブルを見せられ続けるため、シーズン3や4のタイウィンやオレナ、オベリンといった各名家の切れ者同士の緊張感のある会話劇の楽しさが後退し、正直王都の話はイマイチでした。
 

ティリオンが王都を離れたため、急にダラダラし出すストーリー

 
 どうしてもティリオンがこれまで暮らした王都から逃げ延び、エッソス大陸へ向かうという物語的な転換を迎えたため、この移動描写がチンタラしており、若干中弛みし退屈です。
 
 デナーリスのいるミーリーンに向かい移動している最中にあっちで誘拐されこっちで誘拐されと、「どうでもいいからさっさとミーリーンに到着して、デナーリスとの緊迫したやり取りで盛り上げてくれないかぁ……」と、トラブルのためのトラブル、サスペンスのためのサスペンス展開を見せられ不満が多かったです。
 
 一応災難続きの中でも新しい情報が提示されたり、見ている側からするとすでに既知なキャラでも、ティリオンからしたら初対面となる者との交流があったりと最低限の意味はあるものの、どうせただの寄り道なんだろうなと分かり切っている描写が長く、ダレてしまいます。
 

意味合いが変化し続ける光の王信仰

 
 光の王を信仰する祭司が、今度はエッソス大陸のヴォランティスで登場し、スタニス・バラシオンを救世主のように言っていたメリサンドルとは違い、こっちではデナーリス・ターガリエンこそが奴隷を解放する救世主だと言っていたり、あっちこっちの視点で度々登場するごとに印象が変わる描かれ方は興味深いです。
 
 最初はただの火あぶり大好きなカルト宗教くらいにしか思っていなかった怪しい信仰が、ほぼ説明的にならず、見る側が勝手に劇中の話を繋げて想像を膨らませ、狂王エイリス・ターガリエンのエピソードや、壁の向こう側の脅威であるホワイトウォーカーの話ともじわじわと結びつき、群像劇全体に不気味な波紋を投じる役目を果たしており、刺激的です。
 
 ずっとシリーズの序盤から光の王について同じような話をしているだけなのに、シリーズを見続けることで見る側に徐々に作品への知識が蓄えられ、この信仰の意味が自然と時間差で読み取れるようになるという構成は、大河的なスケールを生かした贅沢な魅力があります。
 

不満あれこれ

 
 今シーズンで演出的に最もガッカリさせられたのは、一話がサーセイ・ラニスターの子供時代の回想シーンから始まる点。過去にもブランの回想シーンがあったものの、それは本人が演じていたので、あまり違和感がなかったのに、今回は子役がサーセイの子供時代を演じるため、ゲーム・オブ・スローンズとは思えないほど安っぽいシーンになっており、不満でした。
 
 ただでさえ回想シーンというだけで安っぽくなりがちなのにも関わらず、ハイファンタジーという、そもそもが空想の世界の物語を紡いでいる最中に、登場人物の過去の記憶の再現映像として本人とは別人が登場すると、フィクション要素が無駄に重なって余計混乱するので、回想は出来るだけ避けて欲しかったです。
 

最後に

 
 シーズン4の密度・衝撃ぶりに比べると、若干次のシーズンへ向けて着々と準備を整えている感が強く、割とあっさりした印象です。
 
 それでも、自らを否定させられるというアリアとサーセイの視点がしっかり呼応していたり、家臣の耳が痛い忠告でもしっかり聞き入れるデナーリスと話を聞こうとしないスタニスが対比されていたりと、繰り返し見て気付く話もあり、相変わらず脚本は高水準で安定しています。
 
 話の勢いも前のシーズンから止まらず、衝撃展開もしっかり起こるので、ややダレることはあっても物語に興味を失うことは一切ありません。

ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン

 

新たな闘いの幕開け

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