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[レビュー]ゲーム・オブ・スローンズ シーズン3 第三章:戦乱の嵐 前編 〈感想・評価〉

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トレーラー

 
評価:100/100

イントロダクション

 
 全10話。
 
 あらすじ
 
 ブラックウォーターの戦いは、ラニスター家に次ぐ豊富な資金力を持つタイレル家の助けを借り、鉄の玉座を狙うスタニス・バラシオン軍を退けることで決着した。そして、ラニスター家とタイレル家の同盟の証としてラニスターの血を引くジョフリー・バラシオンと、タイレル家のマージェリー・タイレル婚約する。
 
 それと並行し、マージェリーの祖母であるオレナはヴァリス公の助言を聞き、北部への影響力を確保するため、サンサ・スタークとマージェリーの兄であるロラス・タイレルを極秘に結婚させようと画策。だが、ラニスター家当主であり、新しく王の手に任命されたタイウィン・ラニスターはその動きを目聡く察知し、意外な妨害工作に出る……。
 
 王都でのラニスター家とタイレル家の水面下の静かな謀略戦を中心としつつ、ロブ・スタークがフレイ公の娘との婚約を破棄したせいで、フレイ公の助力を失い弱体化し続けるスターク軍の情勢。鉄の玉座奪還を目指し、強大な軍隊を組織すべく、奴隷売買が盛んなアスタポアへ向かい、強力と有名な穢れなき軍団アンサリードを手に入れようと交渉するデナーリス・ターガリエン。野人たちの中にスパイとして潜入し、元ナイツウォッチでありながら野人たちの王となったマンス・レイダーの動向を探ろうとするも、野人の女イグリットと恋に落ちてしまい、任務と恋の間で苦悩するジョン・スノウ。相変わらず家族と再会するためスターク軍との合流を目指すアリア・スターク。キャトリンの命で人質交換のため密かに王都へ向かうブライエニーとジェイミー・ラニスターらの話が並行して描かれる。
 

海外ドラマNo.1の衝撃展開!!

 
 シーズン2を見ている時は「面白いは面白いけどシーズン1の内容の濃さには勝てないな……あれはアイデアを出し惜しみなく投入するシーズン1特有の密度で、もう今後はシーズン1級の面白味は期待できないんだろうか」と漠然と思っていましたが、今シーズンはカタルシスと衝撃具合でシーズン1を軽く上回り、驚嘆させられました。
 
 シーズン1どころか、自分がこれまで見たあらゆる海外ドラマの中でも飛び抜けて衝撃的な展開が起こり、目の前で繰り広げられる光景が何なのか理解できず、思考が完全にフリーズして、茫然とただただ呆気に取られるばかりでした。話自体はその後も続くため、早く先が見たいと焦るものの、実際見ても麻痺したままの情報処理機能が一切ついてこないため何も情報が頭に入ってこないという奇妙な状態におちいりました。
 
 この衝撃の展開は、単に突拍子もなく起こるのではなく、シーズン1と同じで、実は後々見返してみるとそこここに伏線めいた不穏な予兆描写が散りばめられていたことに気づかされます(伏線というよりも、感情の揺れ動きをコントロールされていたことに気付く)。この部分にインパクトを出すために実は念入りに見る側の感情(注視するポイント)を誘導するような舞台セッティングが水面下で整えられており、その構成の巧みさに相変わらず驚かされます。
 
 プラス、この衝撃展開が起こるかなり前に、これもシーズン1のラストと似たような大カタルシスシーンがあり、このカタルシスを覚える回が多分シーズン3で最も盛り上がる部分で、さすがにこれ以上のことは起こらないだろうとつい油断してしまうという構成も衝撃の力添えとなり、隙がまったくありません。
 
 ここまで念入りにシナリオ構成が作り込まれ、気分を盛り上げて油断させ切ってから虚を衝くという、あらゆるサスペンステクニックを総動員し、見る側の視点をトレースし切って、完璧なタイミングで最大級の一撃を叩き付ける衝撃展開は初めて体験しました。
 

ウェスタロス大陸にじわじわと拡散するかのようなパラノイア的恐怖

 
 今シーズンから、これまではある特定の視点にだけ限定して登場していたカルト宗教のようなものが、途中から他の視点でも顔を覗かせ始めるため、まるでウェスタロス中に不気味な信仰が流行り病のようにじわじわ蔓延していくかのような錯覚を覚えゾッとさせられました(映画のミストのような感じ)。
 
 群像劇という、それぞれの視点が交わるようで交わらない、交わらないようで交わるという距離感の中で、何度も特定の視点でのみ登場し、他では気配の無かった気味の悪い単語が唐突に視点を飛び越えて登場すると、得体の知れない宗教が感染してしまったような、若干ホラー的な薄気味悪さを覚えます。それぞれの視点に距離がある群像劇ドラマと、最初は限定的なものなんだと思い込んでいた対象が徐々に蔓延していくパラノイア的恐怖を描くホラーは相性がいいのかなぁと考えさせられました。
 
 シーズン1はハイファンタジーであることを逆手にとり、あえて存在する魔術要素を伏せることで逆にラストで強くその部分が噴出し際立つというテクニックが使われていました。そして、今度は群像劇という語り口を利用し、これまで限定的な視点にのみ潜伏させていたホラー的な緊張感が他の視点でも静かに鎌首をもたげ、気配が無かった分余計不気味に感じられるという、情報の伏せ方の妙が際立ちます。
 
 ヘタな人間がやったら陳腐にしか見えないであろう原作小説の設定を、どのような映像や、脚本・シリーズ構成で見せたら最大の効果を発揮するのかという考え抜かれた映像化戦略があまりにも巧みで感服させられました。
 

浮きまくりの珍妙な三話

 
 今シーズンで最初に面食らうのは三話の演出の珍妙さです。明らかにこれまでのどの回とも異なる、監督の作家性が透けて見えるようなギャグ要素が強烈な作りで「なんなんだこのふざけた回は?」と初見時は混乱させられました。
 
 残酷なシーンからのEDで陽気な曲が流れるというギャップの作り方は、ゲーム・オブ・スローンズというより、ウォーキングデッド(もしくはZネーション)やブレイキング・バッドのふざけた回のノリに近く、自分的には許容範囲ギリギリで「こういう事を堅めの作風のゲーム・オブ・スローンズであまりやらないでくれないかなぁ……」と複雑な気分でした。
 
 舟葬しゅうそうの最中に舟に火矢が中々当たらないというギャグはさすがに面白かったものの、いくらなんでもグロテスクなショッキングシーンの後にギャグをねじ込むというありきたりな手法は勘弁して欲しかったです。
 
 一体どこのどいつが監督しているのかと思ったら、なんとショーランナー(製作総指揮)であるデイヴィッド・ベニオフ自身の監督回で「他人が監督する時は堅めに作らせるくせに、自分で監督する時はふざけるのかよ!」と若干呆れました。
 

不満あれこれ

 
 どうしようもないことながら、軍の規模がでかくなったり、ハイファンタジーらしい非現実的なロケーションが舞台になる量が多くなるにつれ画面のCG比率が上がっていくため、徐々に人工的な絵が増えていき、若干違和感を覚える点。
 
 多少地味でもいいので、スペクタクルな絵面を求めず、もう少しCGに頼らないで撮って欲しい……と、いった程度の不満。
 

最後に

 
 少々の不満など掻き消すほど、妥協なき映像・美術面は相変わらず素晴らしく、会話を主体とした群像劇の脚本も冴え、次から次に意外な顔を覗かせ続けるキャラクターはどの陣営もほぼ満遍なく魅力的で、クリフハンガーも下品にならない程度に程よく効き、胸がすくような大カタルシスがあり、我が目を疑うほどの衝撃展開に頭をぶん殴られる……と、おおよそTVドラマに求められる全ての要素を完璧に備えたゲーム・オブ・スローンズというシリーズは、正真正銘のバケモノであるということが今シーズンで分かりました。
 
 
 このドラマ面白すぎる!!
 
 

ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン

 

新たな時代

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