トレーラー
評価:85/100
ジャンル | ハクスラ アクションRPG |
発売日(日本国内) | 2017年2月9日 |
開発(デベロッパー) | コーエーテクモゲームス (Team NINJA) |
開発国 | 日本 |
短評
『ダークソウル』シリーズに影響を受けたソウルライクゲームながら、本家と比較してもなんら劣らぬほどアクションゲームとして高いポテンシャルを秘めている。
ただ、ソウルライクゲームの良さを破壊するような改悪が多く、システム同士がケンカしている箇所があるなど、本来作品が持つ魅力をうまく発揮し切れておらず良作止まりな惜しさ。
物語の舞台であることを捨て、手堅くボリュームを取った質より量のミッション制

本作はフロム・ソフトウェアのダークソウルシリーズに影響を受けたソウルライクゲームです。
そのため、主人公であるウィリアム・アダムス(日本名は三浦 按針 )の生まれ故郷であるイギリスから始まるプロローグ部はさすがに別として、日本に舞台が移ってからは、当然ソウルシリーズのようなマップが繋がっていく構造なのだろうと思い込んでいました。
しかし、最初のボスを倒すと突然日本地図が映る場面に移行しきょとんとさせられる羽目に。
この系統のゲームは説明を極端に嫌う傾向が強く、ここまで露骨にゲーム丸出しの地図画面が表示され困惑させられたのは初めてです。
ですが、徐々にこれはボリュームを確保するために、一度クリアしたステージをサブミッションで使い回すための仕組みなのだと分かり合点がいきました。
サブミッションの多くはメインミッションで使ったマップを今度はスタート位置や敵配置を変えて再利用という、『バイオハザード リベレーションズ』シリーズのレイドモードのような作り。
この使い回すことを前提としたかのようなマップのメリットは、ボリュームを膨大な量確保できること。逆にデメリットはメインミッションの連続性が断ち切られたことで物語が極端に分断され、薄まり、殺されてしまうことです。
『ダークソウル』という美意識の塊の作品に真正面から勝負を挑むのを避け、あえてゲーム感丸出しの仕様にし、密度の濃さよりも膨大なボリューム確保に走るという姿勢は、『無双』シリーズのようなとにかく武将の数を増やしたがる、質より量体質の印象が強いコーエー・テクモっぽいなと思います。なるほど『ダークソウル』をコーエー・テクモが作るとこういうマップの構造になるんだなと妙に納得してしまいました。
なので、本家のように漂う空気にまで物語性が染み込んでいる濃密さを舞台に求めてしまうと、暗い作風はなんとなくの雰囲気止まりで、ステージ攻略中にはストーリーの推進力がほぼ存在せず、そこらの景色から背景を読み解く楽しみもなくやや肩透かしを食らいます。
残心はじめ、熱気が伝わってくる剣戟アクションの作り込み

本作で最も優れているのは『ブラッドボーン』、『ダークソウル3』にすら匹敵するほどのバトルの駆け引きの魅力です。
特に一番好印象だったのは残心という、敵を攻撃した直後にタイミングよくボタンを押すことで消費した分のスタミナゲージ(本作では気力ゲージ)が大幅に回復し、再びゲージが回復するのを待たず、そのまま次の攻撃動作(もしくはガード)に移れるというシステムでした。
似た感触のシステムで言うと、『ギアーズ・オブ・ウォー』のリロードの途中でタイミングよくボタンを押すと一瞬でリロードが終了するアクティブリロードに近いものがあります。
気力ゲージとにらめっこしながら的確に攻撃を加えたり防御したりという、ソウルシリーズの一撃一撃が致命傷となる緊張感はそのまま踏襲しつつ、攻撃後にゲージが回復するのをじっと待ち続ける時間をプレイヤーのボタン入力で省略させ、攻撃動作を連続できるようにしたことで、より戦闘が忙しくなりました。
この戦闘にリズムが生じる残心の魅力は革新的で癖になります。
防御面も気力ゲージに注意しつつ攻撃を的確にガードで凌ぐのも楽しいし、掴んでくる投げ技系の攻撃は回避するのもスリルがあるしと、敵がガードと回避をそれぞれ要求してくる攻撃を繰り出してくるため、両方バランス良く使わされ刺激的です。
やはり、一流のアクションゲームは攻撃だけでなく、敵の動きを観察させ、どの攻撃をガードし、どの攻撃は回避するのか思考させる防御面の工夫にも隙がなくボス戦は概ね楽しめました。
突如ゲームがバイオハザード6化する恐怖体験
本作はソウルライクゲームとしては一部改悪としか思えないような変更が加えられており、このせいで余計なストレスが半端ではありませんでした。
まず、ソウルシリーズで言う篝火 の代わりのチェックポイントである社 で回復アイテム(仙薬)が補充されない、ただの消費アイテム制な点。
しかも、仙薬は『ブラッドボーン』の輸血液のようにショップで購入することも出来ず、敵がドロップするか、ハクスラ要素があるので余った武器・防具を社に奉納しアムリタ(経験値、ダークソウルで言うとソウル)に変換した際に少量入手できるといった限られた手段でしか入手できず。
そのため、序盤は仙薬不足でザコ敵戦相手ですら手こずり、ボス戦ともなると戦う度に消費するので、PS2時代の『モンスターハンター』でボス戦ごとにハチミツを探しに狩り場に足繁く通ったが如く、周囲のザコ敵から何度も作業プレイで倒しては入手しなければならず、ただただストレスしか溜まりません。
それに、やや強めのボスなどがいるサブミッションでは大量に消費し、しかも途中でミッションを辞めても消費した分は返還されないので、もう仙薬を消費するのが怖くて怖くて仕方がありませんでした。
この回復アイテムを補充制(ないしは購入制)にしなかった問題はずっと尾を引きゲーム全体に悪影響を及ぼす羽目に。
中盤以降は陰陽スキルという回復魔法のようなものを覚え、これは逆に社で補充される回数制なため、結果仙薬の消費量が激減し、割と大量に余り出します。しかし、序盤仙薬不足で苦しんだ記憶が残り無意識的に仙薬を温存して戦おうとする変な癖が付いてしまい、最後まで苦労させられました。
ラストステージなんて、ボスと延々連戦させられるため、その都度大量の仙薬を消費し、自分の場合は在庫すら尽きてしまい、もうアイテム所持上限数の半分くらいしかない状態で無理やり押し通してクリアしたので気が気ではありませんでした。このラストステージのストレス量は弾が切れまくるためシューティングゲームなのに銃がまともに撃てないという『バイオハザード6』(以下BH6)級で、早くこの苦しみから解放されたいと願うのみでした。
回復アイテム以外も、わざわざアムリタとお金を別々にして、経験値もお金もソウルに一元化して管理しスッキリしていたソウルシリーズの良さを殺している点も引っかかります。
さらに、ハクスラ要素を入れてしまったせいで敵がドロップする大量のアイテムを拾うという行為が作業化してしまい、せっかく探索でアイテムを探すこと自体は楽しいのに、アイテムを拾うことそのものが味気なく感じてしまいます(入手できるアイテムがそもそも探索の報酬としては物足りない点も問題)。
アイテム回収がやや味気ないという不満にも通じるのが、ゲームプレイ全般がやたらパサパサと乾燥したような感触な点です。移動時などドタバタと忙しなく走るようで、もう少し暗めの作風に合わせて一歩一歩重々しく落ち着いた歩調で歩けないのかと不満でした。
最後に
クリアまで約45時間ほど。ボリューム的には相当だったダークソウル3すら凌駕し、プラスDLCもそこに加わるので、恐ろしいほどのミッション量とシステム周りの物量があり、ボリューム不足を感じることは皆無だと思います。ただあまり変わり映えしないステージ内容のせいで途中でゲームが息切れし出すので、中盤以降はやや作業プレイ化しがちです。
全体的に細かい不満は多いものの、残心を用いるバトルの駆け引きは素晴らしく、登場人物が心情吐露する際に流れる影絵風のアニメーションムービーも品が良く、マップの景観もしょぼさを感じさせない水準に仕上げており、ビジュアル面も抜かりない、大変力が篭った力作であることが伝わってきて、充分過ぎるほど楽しめました。
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