エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー]unknown / アンノウン(2006) 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:70/100

短評

 
 映像作品としては凡庸だが、ソリッドシチュエーションスリラーとしてのアイデアは非常に刺激的で興味をそそる。ややシチュエーションの奇抜さに頼り過ぎなきらいはあるものの、低予算サスペンス映画ながらそこらの娯楽大作映画に勝るほどの魅力がある。
 

あらすじ

 
 目が覚めるとそこは見知らぬ工場だった。なぜこんな場所にいるのか・・・・・・それどころか自分自身が何者なのか記憶がない。周囲には自分以外に4人の人間たちが気絶しており、その者たちも続々と意識を取り戻す。どうやら工場にあった化学薬品を吸引した影響らしく、やはり全員記憶がない。なぜか厳重に外部から隔離された工場内を調べると、新聞と一人の警備員の死体を見つける。新聞にはある企業の社長と財務担当者が誘拐されたという記事が書かれていた。その警備員の死体の制服には新聞に書かれた企業の本社ビルの名が・・・・・・そこで、ようやく気付く。この工場にいる5人のうち3人が誘拐犯の一味で、2人がこの工場に監禁されている誘拐事件の被害者であると。一体誰が誘拐犯で、誰が被害者なのか? 自分は誘拐犯側なのか誘拐された被害者側なのか? 疑心暗鬼の中、工場から脱出するべく誘拐犯と被害者が協力しあう奇妙な脱出劇が幕を開ける・・・・・・。
 

リーアム・ニーソン・・・・・・ではない5人が記憶喪失になるほうのアンノウン

 
 記憶がないため、自分が誘拐犯なのか被害者なのかすら判断できないというシチュエーション作りのアイデアはこの手のジャンルの中でもメチャメチャ刺激的で面白く、映画の最初から最後までずっとサスペンスが継続し続け退屈する瞬間はほぼありませんでした。ただ、それは映画全体のベースとなる設定の秀逸さにほぼ依存しているためであり、脚本の細かい部分の荒さには不満を感じました。
 
 まず、工場内のシーンと誘拐犯グループや身代金の行方を監視する警察側など、複数の視点が切り替わりながら進むという構造があまりうまく機能していない点。中心となるのは工場にいる記憶喪失の5人なのに、この工場の外に飛び出す視点の話がイマイチ工場内のサスペンス性を後押しする作りになっておらず、単に説明臭い視点が並行して進んでいるだけにしか見えません。視点を工場内と外で交互させるなら、外側の話は工場内の緊迫感を強化する描写だけに絞ったほうがよりサスペンスが引き締まったと思います。
 
 工場内の5人の描き方もミスリードの仕方が足りないため、この人は良い人なのかと思わせておいて裏切るとか、悪い人なのかと思ったらそうではないとか、人物への印象がめまぐるしく変化しないので、やや単調気味。悪い意味で全員フラットに良い人にも悪い人にも見え過ぎてしまうことの弊害で、誰かを怪しんだり疑ったり、それに対して映画側が揺さぶってきたりといった思考の駆け引きが弱く、それぞれの人物への思い入れはほぼ見る側に丸投げされるのみ。結局、真相が明らかになっても「この人が誘拐犯だったのか!?」と予想を裏切られるような驚きはさほどなく、なんか善人でも悪人でもあるっぽい人たちの中にやはり善人と悪人がいたという、素っ気無い余韻しかありませんでした。
 
 そして、自分的に一番イライラしたのが、5人が記憶を思い出すタイミングの雑さです。本来なら記憶を失う前の出来事に関連付けて記憶が蘇るという見せ方をしなければならないのに、とにかく各々好き勝手なタイミングで記憶を取り戻していくため、忘れた記憶を取り戻すという本作で最も大切な瞬間がカタルシスとして機能しません。わざわざこんなクリストファー・ノーラン監督のメメントのような、記憶を思い出す度に徐々に主人公の過去の行動の意味合いが変化していくというトリッキーな作りにしている割にそこが活きておらず、勿体ないです。
 
 ただ、なんだかんだで不満はそこそこ多いものの、やはりこの手のジャンルものらしく、初回時には気付けなかった伏線を二回目以降の視聴で発見する喜びは充分味わえます。伏線周りで一番感心させられたのは、誘拐された社長である夫のために身代金を運ぶ妻が初登場する際に、なぜか不自然に生足がアップになるという、最初は意図がまったく分からないセクシーさを強調する撮り方がされ、それが後々しっかり回収されること。こういう脚本的な辻褄合わせだけではなく、カメラアングルでちょっとした不自然さを忍ばせておき、忘れた頃に回収されるとより映画的な伏線回収の快感が増します。
 

最後に

 
 正直、自分好みの演出・撮影・編集テクニックで画面に不穏さや禍々まがまがしさを宿らせ、映像自体で威圧してくるタイプのサスペンス映画ではないものの、ソリッドシチュエーションスリラーとしては設定が斬新で、及第点を軽々と超える、大変楽しい一作でした。
 

 

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