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[レビュー]ゲーム・オブ・スローンズ シーズン2 第二章:王国の激突 〈感想・評価〉

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トレーラー

 
評価:85/100
 

イントロダクション

 
 全10話。
 
 あらすじ
 
 ロバート・バラシオン王亡き後、鉄の玉座に座ったロバート王と王妃であるサーセイ・ラニスターの子供(という体なだけで、本当はジェイミー・ラニスターの子供)ジョフリー・バラシオン。しかし、亡きロバート王の弟であるレンリー・バラシオンスタニス・バラシオンは、ジョフリーはロバート王の息子ではなくサーセイ王妃が双子の弟ジェイミーとの間に作ったラニスターの子であり、ロバート王の弟である自分こそが正統な後継者であると主張し、ジョフリー王に反旗を翻す・・・・・・。
 
 バラシオン家同士の鉄の玉座を巡る骨肉の争いを中心に描きつつ、鉄の玉座には興味が無く北部の独立とエダード・スタークの敵討ちのためラニスター家と戦うロブ・スターク率いるスターク軍。ラニスター家の人質にならぬよう王都から北へ苦難の逃亡を図るアリア・スターク。狭い海ナローシーの向こうのナッソスエッソス大陸で鉄の玉座を奪還すべく旅を続ける、ドラゴンの母となったデナーリス・ターガリエン。北にある壁の向こうで野人たちの王について調べるナイツウォッチたちの話が並行して語られる。
 
 相変わらず並みのドラマを遥かに凌駕するリッチさは健在なものの、前作から話の勢いがやや失速し、中々先に進んでくれないという不満が生じてしまった。
 

ヴァリリア鋼のごとき堅牢なブランド力

 
 改めて、ゲーム・オブ・スローンズという作品の何に圧倒されるかといったら他のドラマを寄せ付けない作品のブランド力です。ウォーキング・デッドブレイキング・バッドのような各話の監督に自由に好みの演出をさせるという演出の振れ幅すら許容せず、全てのエピソードをやや堅めのトーンで統一する神経質さは、作品全体を引き締める効果とともに、編集で遊ぶといった小手先の真似には決して走らないという安心感をも与えてくれます。
 
 目先の刺激に走らず、自分の個性を安易に作品に刻むことを許さず、考え抜かれた作品のスタイリングプランこそを核とし、そこに全てのスタッフが一丸となって力を傾けることで初めてにごりのないハイファンタジー世界というのは真に息吹くのだと本作で教えられました。
 
 シリーズ通してのビジョンの確かさ以外にも、時折変なものが画面に映ってしまわないかと見ているこちらが冷や冷やするほどの世界の広がりを景色だけで納得させてくれる見事なロングショットの絵が挟まれたり、9話で船酔いした兵士が吐瀉する際に吐瀉物を入れる樽が一杯で船が波で揺れると中身が床にこぼれるという、えげつない描写がなされたりと、どこで本気を見せれば世界に奥行きが生じるのか理解し切ったセンスの確かさにも頭が下がります(吐瀉物が床にこぼれるという描写は、ゲームのデモンズソウルで腐れ谷の妥協なき汚さっぷりを見た時の衝撃を思い出した)。
 

停滞してばかりでちっとも先に進まないストーリー

 
  海外ロケ撮影の美しさ、細部まで配慮が行き届いた美術、 演技(会話劇)などはシーズン1と同じで特に不満もないのですが、気になったのは話の展開が明らかにノロノロとしてやや退屈に感じる箇所が増えた点。
 
 シーズン1はロバート王の親友でもあるエダード・スタークが王の手に任命され、前任の王の手だったジョン・アリン公が殺害された事件の真相を追う内に、鉄の玉座を狙う者たちの策謀に巻き込まれていく・・・・・・という、非常にサスペンスが効いている上に、北の人間であるエダードにとってアウェーそのものの王都で誰が味方で敵なのかすら分からないという四面楚歌な状態は、そのまま原作未読で何も分からない自分の視点とも重なり、非常に手に汗握り、自然と引き込まれました。
 
 ただ、今シーズンはある程度誰が善人で悪人か、どの様な勢力に属して、どんな野心を持っているのかが既知の状態のため、どうしてもシーズン1に比べると会話劇が物足りないです。信用する相手を間違えたら即寝首をかかれかねないという緊張感を常に強いられた前シーズンの面白味が後退し、かつどうしてもスターク家とバラシオン家と王都の間で膠着状態が延々と続くという展開なためトロトロした進行速度で、終盤でド派手なことが起こるまでは途中何度か眠くなる箇所もありました。
 
 プラス、シーズン1に比べファンタジー周りの設定にノイズが増えた点も気になりました。前シーズンはうまく既存のハイファンタジーと差別化するようにあえて魔術などの非現実的な設定は伏せていたのに対し、それがかなり大っぴらとなり、逆に前シーズンが伏せていたことの反動でやたら浮いて見えます(突然映画のヘルレイザーに出てきそうなスキンヘッドの黒魔導師が出てきたときはさすがに笑った。そう言えばウォーキング・デッドのシーズン7にもヘルレイザーっぽいゾンビがいたことをついでに思い出す)。
 
 特に呪術のようなものでかなり遠方のターゲットを暗殺するという描写は、王位争奪戦をしている世界においては若干反則気味なため「こんなこと出来るんだったら呪術とか魔術を使える人間をたくさん抱えている陣営が勝つでしょ?」と、設定そのものに対する疑問を抱いてしまうので、原作小説にある設定を改変するのは無理でも、もう少し映像で見せる際は見せ方を抑制するなど工夫が欲しかったです(映画のオーメンファイナルデスティネーションのように事故死にも見えるようにする、とか)。
 

大予算のロケ撮影にも豪華な美術にも引けを取らぬ役者陣の存在感

 
 シナリオ面には色々と不満があるものの、自分的にハリー・ポッターのドラコ・マルフォイを軽く凌ぐほど、ただただ人をイラつかせるジョフリー・バラシオンのキャラ設定が大好きで、この人物が出てくる度に次は一体どんな不快なことをしでかすんだろうとワクワクさせられたので、そこはシナリオの不満をうまくカバーしてくれて最高でした(ジョフリーが娼婦にあるプレイを強要することで王としてどころか一人の人間としても狂っているということを端的に表現する脚本は見事)。
 
 他にも、今シーズンから登場したブライエニー役のグェンドリン・クリスティー(スターウォーズ フォースの覚醒最後のジェダイでキャプテン・ファズマを演じる)の屈強な女騎士ぶりが完璧過ぎて感動的ですらあったり、実質今シーズンの主役と言っても過言ではないティリオン・ラニスター役のピーター・ディンクレイジの存在感がさらに増して、もしこの作品にピーター・ディンクレイジがいなかったら一体どうなってたんだろうと勝手に不安になったりと、役者のキャスティングの神がかりっぷりは今シーズンも健在。
 
 どの陣営の役者も魅力があり過ぎて、話の中心であるはずのスタンダードな美形揃いのスターク家が一番絵的に平凡という、おかしなバランスになっています。
 

不満あれこれ

 
 唯一と言っていいほどの映像面での不満は、最終話のラストシーンのあまりにもゲーム・オブ・スローンズらしくないわざとらしくCG臭い(もしくはそう見える)ダサいカメラの動き。ラストのラストがこんなセンスのないありきたりなカメラワークだとげんなりして余韻が最悪なので、もう少しまともな見せ方をして欲しかったです。
 

最後に

 
 ストーリーは正直次のシーズン以降の跳躍へ向けた助走のような感触でイマイチでしたが、相変わらず役者の存在感がずば抜けており、演出も美術も高い水準で安定しているため、 前シーズンに劣らず大変見応えがある素晴らしい完成度でした。
 

ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン

 

北方の記憶

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