トレーラー
評価:85/100
放送期間(アメリカ) | 2012年4月~6月 |
話数 | 全10話 |
国 | アメリカ |
ネットワーク | HBO |
- 短評
- あらすじ
- ヴァリリア鋼のごとき堅牢なブランド力
- 停滞してばかりでちっとも先に進まないストーリー
- 大予算のロケ撮影にも豪華な美術にも引けを取らぬ役者陣の存在感
- 不満あれこれ
- 最後に
- ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン
短評
相変わらず並みのドラマを遥かに凌駕するリッチさは健在なものの、前作から話の勢いがやや失速し、中だるみしてしまうという不満が生じてしまった。
あらすじ
ロバート・バラシオン王亡き後、ロバート王と王妃であるサーセイ・ラニスターの子供(という体なだけで、本当はジェイミー・ラニスターの子供)ジョフリー・バラシオンが鉄の玉座の主となる。
しかし、亡きロバート王の弟であるスタニス・バラシオンとレンリー・バラシオンは、ジョフリーはロバート王の息子ではなくサーセイ王妃が双子の弟ジェイミーとの間に作ったラニスターの子であり、ロバート王の弟である自分こそが正統な後継者であると主張し、ジョフリー王に反旗を翻す。
バラシオン家同士の鉄の玉座を巡る骨肉の争いを中心に描きつつ、鉄の玉座には興味が無く北部の独立とエダード・スタークの敵討ちのためラニスター家と戦うロブ・スターク率いるスターク軍。
ラニスター家の人質にならぬよう王都から北へ苦難の逃亡を図るアリア・スターク。
北にある壁の向こうで野人たちの王について調べるナイツウォッチたちの話が並行して語られる。
ヴァリリア鋼のごとき堅牢なブランド力
シーズン1から引き続き視聴し、改めてゲーム・オブ・スローンズという作品の何に圧倒されるかといったら他のドラマを寄せ付けない作品のブランド力です。
『ウォーキング・デッド』や『ブレイキング・バッド』のような各話の監督に自由に好みの演出をさせるという演出の振れ幅すら許容せず、全てのエピソードをやや堅めのトーンで統一する神経質さは、作品全体を引き締める効果とともに、編集で遊ぶといった小手先の真似には決して走らないという安心感をも与えてくれます。
目先の刺激に走らず、自分の個性を安易に作品に刻むことを許さず、考え抜かれた作品のスタイリングプランこそを核とし、そこに全てのスタッフが一丸となって力を傾けることで初めて濁 りのないハイファンタジー世界というのは息吹くのだと本作で教えられました。
シリーズ通してのビジョンの確かさ以外にも、時折変なものが画面に映ってしまわないかと見ているこちらが冷や冷やするほど、世界の広がりを景色だけで納得させてくれる見事なロングショットの絵が挟まれたり、9話で船酔いした兵士が吐瀉する際に吐瀉物を入れる樽が一杯で船が波で揺れると中身が床にこぼれるというえげつない描写がなされたりと、どこで本気を見せれば世界に奥行きが生じるのか理解し切ったセンスの確かさにも頭が下がります(吐瀉物が床にこぼれるという描写は、ゲームの『デモンズソウル』で腐れ谷の妥協なき汚さっぷりを見た時の衝撃を思い出す)。
停滞してばかりでちっとも先に進まないストーリー
シーズン1と同じで、海外ロケ撮影の美しさ、細部まで配慮が行き届いた美術、演技(会話劇)などは特に不満はないものの、今シーズンで気になったのは話の展開が明らかにノロノロとして退屈に感じる箇所が増えたことです。
シーズン1はロバート王の親友でもあるエダード・スタークが王の手に任命され、前任の王の手だったジョン・アリン公が殺害された事件の真相を追う内に、鉄の玉座を狙う者たちの策謀に巻き込まれていく・・・・・・という、非常にサスペンスが効いた内容な上に、北の人間であるエダードにとってアウェーそのものの王都で誰が味方で敵なのかすら分からないという四面楚歌な状態は、そのまま原作未読で何も分からない自分の視点とも重なり、非常に手に汗握り自然と話に引き込まれました。
ただ、今シーズンはある程度誰が善人で悪人か、どの様な勢力に属して、どんな野心を持っているのかが既知の状態のため、どうしてもシーズン1に比べると会話劇に物足りなさを感じます。
信用する相手を間違えたら即寝首をかかれかねないという緊張を常に強いられた前シーズンの面白味が後退し、かつどうしてもスターク家とバラシオン家と王都の間で膠着状態が延々と続くという遅々とした進行速度で、終盤でド派手なことが起こるまでは途中何度か眠くなる箇所もありました。
それに、シーズン1に比べファンタジー周りの設定にノイズが増えた点も気になりました。
前シーズンはうまく既存のハイファンタジーと差別化するようにあえて魔術などの非現実的な設定は伏せていたのに対し、それがかなり大っぴらとなり、逆に前シーズンが伏せていたことの反動でやたら浮いて見えます。
突然映画の『ヘルレイザー』に出てきそうなスキンヘッドの黒魔道士が出てきたときはさすがに笑ってしまいました(そう言えばウォーキング・デッドのシーズン7にもヘルレイザーっぽいゾンビがいたことをついでに思い出す)。
特に呪術のようなものを使い、かなり遠方のターゲットを暗殺するという描写は、王位争奪戦をしている世界においては若干反則気味なため「こんなこと出来るんだったら呪術とか魔術を使える人間をたくさん抱えている陣営が勝つでしょ?」と、設定そのものに対する疑問を抱いてしまいます。
原作小説にある設定を改変するのは無理でも、もう少し映像で見せる際は見せ方を抑制するなど工夫が欲しかったです(映画の『オーメン』や『ファイナル・デスティネーション』のように事故死にも見えるようにする、とか)。
大予算のロケ撮影にも豪華な美術にも引けを取らぬ役者陣の存在感
シナリオ面には色々と不満があるものの、自分的に『ハリー・ポッター』のドラコ・マルフォイを軽く凌ぐほど、ただただ人をイラつかせるジョフリー・バラシオンのキャラ設定が大好きで、この人物が出てくる度に次は一体どんな不快なことをしでかすんだろうとワクワクさせられました。
ジョフリー・バラシオンのカリスマ的な存在感はノロノロと進むだけの話の不満をうまくカバーしてくれて最高です。ジョフリーが娼婦にあるプレイを強要することで王としてどころか一人の人間としても狂っているということを端的に表現する脚本も見事でした。
他にも、今シーズンから登場したブライエニー役のグェンドリン・クリスティー(『スターウォーズ フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』でキャプテン・ファズマを演じる)の屈強な女騎士ぶりが完璧過ぎて感動的ですらありました。
さらに、実質今シーズンの主役と言っても過言ではないティリオン・ラニスター役のピーター・ディンクレイジの存在感がさらに増し、もしこの作品にピーター・ディンクレイジがいなかったら一体どうなってたんだろうと勝手に不安になるなど、役者のキャスティングの神がかりっぷりは今シーズンも健在です。
どの陣営の役者も魅力があり過ぎて、話の中心であるはずのスタンダードな美形揃いのスターク家が一番絵的に平凡という、おかしなバランスになっています。
不満あれこれ
唯一と言っていいほどの映像面での不満は、最終話のラストシーンのあまりにもわざとらしくCG臭い(もしくはそう見える)ダサいカメラワークです。
ラストのラストがこんなセンスのないありきたりなカメラワークだとげんなりして余韻が最悪なので、もう少しまともな見せ方をして欲しかったです。
最後に
今シーズンは正直次のシーズン以降の跳躍へ向けた助走のようでイマイチだったものの、相変わらず役者の存在感がずば抜けており、演出も美術も高い水準で安定しているため、前シーズンに劣らず大変見応えがある素晴らしい完成度でした。
ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン
GOTシリーズ
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話数
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シーズン1 | 10 |
シーズン3 | 10 |
シーズン4 | 10 |
シーズン5 | 10 |
シーズン6 | 10 |
シーズン7 | 7 |
シーズン8(最終シーズン) | 6 |
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