エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[ドラマ・レビュー]アメリカン・ゴッズ シーズン1 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:100/100

イントロダクション

 
 全8話。
 
 あらすじ
 
 移民者たちが信仰とともにアメリカへ持ち込んだ古き神話の神々たちは時代を経るごとに人々から忘れられ、過去の存在へと追いやられていた。そんな古き神の一人ウェンズデイはかつての信仰を取り戻すため、テレビやインターネット、ソーシャルメディアを駆使しアメリカ国民の関心を独占する新時代の神々たち(テクノロジーの神やメディアの神、グローバリゼーションの神、など)に戦争を挑むべく、古き神々たちに集結を呼び掛けていく・・・・・・。
 
 いささか乱暴に言うと昭和の仮面ライダーvs平成の仮面ライダー(後、少しだけルパン三世 グリーンvsレッドっぽい要素もある)をとんでもなくややこしく描いたような内容。
 
 世界最先端の映像イリュージョンを味わえるという点が魅力であり、話の推進力はほとんどないため、あまり見やすい作品ではない。
 

神々が座するに相応しい妥協なき映像美

 
 ちょっとしたカメラアングルの工夫や照明の当て方、手作りの特撮技術で画面に不自然さを生じさせる古典的なテクニックと、ハイテクを駆使した最先端のVFXやCGワーク。信仰の荒々しさや狂気性、麻薬性を体現するかのような毒々しいほどのOPや過剰なほどの性描写・暴力描写と、人の姿をした神という成立させるのが困難な設定を神々しい深みのある佇まいで演じ切って見せる役者陣・・・・・・古典的・革新的、荒々しさ・神々しさとそれぞれ異なるベクトルの技巧やトーンが喧嘩せずに仲良く作品内で同居している様は、本編の古き神々と新しい神々との戦争という対立構図をさらに飛び越えて、古きも新しきも全てを受け入れてしまう神の懐の深さを表現しているようで度肝を抜かれました。
 
 設定やセリフではなく、画面の違和感や不穏さだけで、そこにいるのが人ならざる超常の存在であるということを納得させてしまうという手法は、本作の(1話~3話までの)監督であるデヴィッド・スレイド監督が同じく監督を務めていた大傑作であるドラマ版ハンニバルでやっていた手法をさらに発展させたものだと思います。
 

 
 
 アメリカンゴッズを体験した後にドラマ版ハンニバルを見直すと、「これはアメリカンゴッズならぬ、アメリカンサイコパスだったんだ!」と気付け、興奮しました。普通の人間のフリをして一般社会に溶け込んでいる殺人鬼のサイコパスっぷりを映像表現だけで説得力を持たせて描いて見せるという手法に本作に通じる志を感じます。
 
 ハンニバルと同じ、何度も何度も特定の言葉やイメージを回をまたいでセリフや映像で反復させるという手法が本作でもそのまま使われており、それは単純に伏線として機能するものもあれば、何か巨大な存在の手の平の上で踊らされ、運命を自分以外の何者かに握られているのではないかというパラノイアックな不安を誘う効用があったりと、あまりにも高度過ぎて一回通して見ただけだと情報を把握し切れない複雑なストーリーテリングを試みている点も同じ。
 
 日常性というものをごっそり剥ぎ取られたかのような、良い意味で不自然極まりない映像群は魔性の魅力があり、「この白昼夢のような映像がいつか途切れて現実味のある安くてしょぼい絵が映り込みませんように・・・・・・」という願望めいた感情は緊張へと変換され、意識を画面へと釘付けにさせる効果があります。
 
 斬新で豊かなイメージや演出の魔法が掛かっている贅沢な画面の連続によってもたらされる「この夢見心地な瞬間がいつまでも終わらないでほしい」という祈りによって生じる能動的な緊張感は、段取りくさいゴミみたいな長回し撮影の「いつカットが変わるんだろう?」という、ただグダグダとカットが途切れないというだけで生じる受動的で安い緊張感など軽々と凌駕します(出来ればシーズン2以降もチンケな長回しはやらないでくれるとありがたい)。
 
 手間さえかければある程度誰でもできる長回し撮影と違って、現実に引き戻されるようなチープなショットが画面に映ってしまうまで持続し続ける、映像作家のバランス感覚だけを頼りにした映像センスの綱渡り的な緊張感の出し方はある程度才能や実力がなければ出来ず、それが最初から最後までほぼ途切れず持続し続ける本作は至福です。
 

最後に

 
 間違いなく現行世界トップクラスの、底が知れない恐ろしいほどの才能を持つデヴィッド・スレイド監督始め、その他映像作家たちの手腕が発揮され尽くした珠玉の映像体験をこれでもかと堪能できる大変贅沢で幸福な大傑作。
 
 ドラマ版ハンニバルの耽美な映像に酔いしれた人なら100%楽しめます。
 

余談

 
 自分が初めて見たデヴィッド・スレイド監督作品は30デイズナイトで、なぜこの映画に興味を持ったかというとゲームのメタルギアシリーズの小島監督が、まだコナミ在籍時に録っていたヒデラジというポッドキャストで絶賛していたから(アメリカンゴッズというドラマを見ようと思ったキッカケも小島監督がツイッターで絶賛していたため)。
 
 その後、ゲームのデス・ストランディングにマッツ・ミケルセンが起用された時は特になんとも思わなかったのに、ドラマ版ハンニバルとアメリカンゴッズを見ると、デヴィッド・スレイド監督という両作品の共通点が浮かび上がってくるため、もしかしたら小島監督は30デイズナイトでデヴィッド・スレイド監督の才能を知り、ドラマ版ハンニバルで心底惚れ込み、その流れでハンニバルに出演していたマッツ・ミケルセンを自作に起用したのかなぁなどといった妄想が止まらなくなります。

 

 

墓場

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