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全ては審問会のために 「Dragon Age: Inquisition(ドラゴンエイジ : インクイジション)」 〈レビュー・感想〉

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システム紹介

評価:80/100
作品情報
ジャンル アクションRPG
発売日(日本国内) 2014年11月27日
開発(デベロッパー) BioWare Edmonton
開発国 カナダ
ゲームエンジン Frostbite 3

メモ

 
・ドラゴンエイジ一作目(Xbox360版)クリア済み、2は未プレイ
 

短評

 
 戦闘があまりに退屈すぎることや、フィールド探索が眠気に襲われるほど単調と、不満や欠点がかなり多くアクションRPGとしては凡作。
 
 しかし、これまでバイオウェアが『マスエフェクト』や『ドラゴンエイジ』で模索してきた会話と選択肢を主体とするゲームの在り方が審問会という形として結実しているので感慨深い。
 

バイオウェアが目指していたRPGの形

 
 本作は『ドラゴンエイジ』シリーズの3作目で、ストーリーは全て繋がっており、過去作のキャラクターも多数登場しますが、これから始めても特に話の理解に支障が出ることはありません。
 
 今作をプレイしているとバイオウェア作品で自分がこれまで触れたものはほぼ同じパターンがあることに気付きました。
 
 それは、世界を支配(もしくは人類を絶滅)しようとする古の悪が復活し、それを平時はあまり良好な関係でない各種族や組織、国家がお互いへの誤解やわだかまりを解消しながら一時的に協力し合い、世界のために団結して戦うという、『指輪物語ロード・オブ・ザ・リング』フォーマット(サウロン軍vs人間・エルフ・ドワーフの連合軍)に近いということ。
 
 今作もこれまでのバイオウェア作品と同様、ストーリーそのものの起伏で引っ張るというより、この各種族や組織・国家の調停役をしていく政治的な駆け引きこそを核とする路線を踏襲しています。
 
 ただ、これまでと決定的に異なるのが、物語的にもシステム的にも中心となるインクイジション(審問会)という、主人公が代表(審問官)となる組織の存在感です。
 
 主人公は、『ドラゴンエイジ』一作目のグレイ・ウォーデン(『スターウォーズ』におけるジェダイのような集団)や、『マスエフェクト』でシェパードが所属する連合軍やスペクター、サーベラスのように組織の構成員の一人ではなく組織の代表です。
 
 そのため、ゲーム内の言動が全て自分が代表を務める組織の評判や進退に直結するため、これまでバイオウェアが突き詰めてきた会話内での選択が物語に大きな影響を与えるという要素に大きな責任感が伴うようになり、より選択肢を選ぶ際の緊張度が高まりました。
 
 正直、これまでのバイオウェア作品で途中で選択肢を選ばされても、元々バイオウェアの作風がドライということもあり、システムコンセプトとしては理解できても、いまいち選択内容が自分と関係があるようには感じず面白いと思うことはほぼ皆無でした。
 
 しかし、本作は自分自身が組織の代表であり、自分の振る舞いによって審問会の行く末が決まるというプレッシャーが生じるため、考えなしに選択肢を選ぶことに尻込みしてしまいます。
 
 この選択肢によって生じる結果を自分の問題ではなく、自分が代表を務める組織全体の問題とすることで、半ば強制的に責任感を生じさせるという手法は「選択肢に重みを加えるのにこういう手もあるのか!」と驚かされました。
 
 ゲーム全体が審問会という組織を中心に設計されている他、そもそも審問会でプレイヤーをサポートしてくれる中心メンバーが魅力的に描かれこの者たちになんとか報いたいという動機付けを強調するなど、これまでのバイオウェア作品の中でも群を抜いて自分の組織に対して自然と愛着を持てるような作りでこれが選択肢選びにも大変プラスの効果をもたらしていると思います。
 
 
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レリアナやモリガンといった過去作のキャラも多数登場する

 

 結果、イデオロギーの異なる仲間同士を無暗やたらにいがみ合わせたがる『マスエフェクト』とは異なり、ゲームクリア後は審問会の信頼できる仲間たちと素直に健闘を称え合え心地よい余韻に浸れるバイオウェア作品の中でも屈指の品の良い作品に仕上がっています。
 

そんなコンセプトの美しさを陰らせる不満&欠点だらけなバトルとエリア探索要素

 
 本作最大の問題点と言って過言ではないのが、度を越すほどのバトルシステムの手抜きさ加減です。
 
 一作目の『ファイナルファンタジー12』のガンビットのエッセンスをうまく取り入れた刺激的な戦闘は完全に消え失せ、ただ固い敵を延々と攻撃し続ける戦略性が激薄の作業と化した戦闘は退屈でしかありません。
 
 

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 このバトルの看過できないつまらなさは成長要素(アビリティツリー)や武器・防具・ポーションのクラフトなど、ゲーム内のありとあらゆる要素に悪影響を及ぼしており、RPGにおいてバトルがどれほどゲームの面白さを左右する重要な要素なのか改めて考えさせられるほどです。
 
 さらに、『マスエフェクト』一作目の惑星探索の移動のかったるさだけ踏襲したような、ただ広いだけで密度がスカスカなエリアをのろのろとした移動速度で歩かされる探索部分も魅力に乏しいです。
 
 ただ、こちらは美観が堪能できるような場所だとそこそこ散策し甲斐があるのと、ファストトラベル機能が充実しているため一定の快適性は確保されバトルほどの深刻さは感じません(ゲームエンジンはフロストバイト3なのでグラフィックは充分キレイ)。
 
 

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 刺激不足のスカスカなフィールドを徒歩でも乗馬しても快適からはほど遠い速度で歩かされ、途中で退屈極まりない戦闘を強いられると、このゲームはプレイヤーを眠りに誘うことが目的なのかと思うほど強烈な睡魔に襲われる瞬間が多々あります。
 
 楽しいと感じる瞬間は強力な武器が手に入った直後くらいです。それも、退屈な戦闘をなるべく早く終わらせられるからという理由。
 
 バトル周りとエリアの探索部分はとにかくゲームプレイのテンポが悪すぎて、グラフィックがキレイな点以外は大して褒める要素がありません。
 

審問会を軸にしたシステム構成

 
 バトル&エリア探索部分は不満ばかりですが、審問会に関わるシステム部分は好印象でした。
 
 まず、本作の非常に特徴的な要素はメインクエストを進めたり、探索できる新しいエリアをオープンしたりするのに勢力ポイントというものが必要になることです。
 
 これは、エリア探索時にファストトラベル地点にもなるキャンプを設営したり、フィールド内のあちこちにある悪魔が湧き出してくる裂け目を塞いだり、エリアごとのクエストをこなしたりすると得られるため、ゲームを先に進めるためにはエリア探索が必須となります(中盤以降は、面倒なら店でも勢力ポイントを購入できるようになります)。
 
 

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エリアのあちこちにある裂け目を塞いで回る

 

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 メインクエスト自体の数が非常に少ないため、多分用途としてはボリュームの水増しが目的だと思います。ただ、自分はオープンワールドゲームのボリュームのあるメインクエストをやると疲労がどっと溜まってしばらく次のメインクエストに挑むのが億劫に感じるため、この連続してメインクエストをプレイすることがそもそもシステム的に不可能という作りは特にマイナスとは思いませんでした。
 
 むしろ、勢力ポイントを溜めるためにエリアをちびちび探索させられる時間がいい感じに疲労回復も込みのクールダウンタイムとなる仕様が好ましかったほどです。
 
 それに加え、メインクエストを連続させず、間にちょっとしたエリア探索を強制的に挟むことで、脳が勢力ポイントを溜めたご褒美にメインクエストに挑めるかのような錯覚も起こすのも新鮮でした(勢力ポイントを素材にメインクエストをクラフトしているような感覚)。
 
 一応、審問会という組織の勢力が拡大したことで次の作戦行動が実行可能となるという設定的な意味づけもしようと思えば出来るため、勢力ポイントという漠然としたものではなく、もっと組織規模の拡大を具体的にイメージしやすい呼称にしてくれれば文句ありませんでした。
 
 勢力ポイント以外にも、サブクエストなど様々な行動で審問会の影響力(審問会という組織の経験値のようなもの)が上がり、影響力が一定数になると審問会パークというアイテム所持数の上限が上がったり、エリア探索時に重要な場所にマーキングしてくれたりといったボーナス効果が付加されるという要素も好ましかったです。
 
 このようにゲーム全体が審問会という組織の為になる行いをすると恩恵を得られる構造となっているため統一感があります。
 
 正直、まだまだ審問会に関係する発展要素は満足と言えるほど充実してはいないので、もっともっとあらゆる細かい項目を用意し、プレイヤーの全行動・全選択が審問会という組織の評判や影響力に関連するくらいまで作り込んで欲しいところです。
 
 本作における審問会は、『デウスエクス』シリーズにおけるオーグメンテーションシステムのように、世界観設定や物語、成長システムや会話選択肢など、本来は独立して関係しないようなゲーム内の様々な要素を噛み合わせ、可動させる歯車のような機能を果たしています。
 

 
 そのため、審問会に関わる部分はゲームの満足度にダイレクトに響くので、この組織の発展や勢力拡大がプレイヤーにとってこの上ない快楽となるくらい、こんな中途半端なものでなく、もっと徹底的にシステムに落とし込んでくれれば文句ありませんでした。
 

最後に

 
 クリアまで約30時間ほど。
 
 正直、単純な面白さで言ったら『スカイリム』や『フォールアウト4』などベセスダRPGのほうがバトル要素も探索要素もダメダメな本作に比べたら100倍上だと思います。
 
 ただ、長い模索期間を経て、審問会を軸にゲーム内の様々な要素を噛み合わせるという美しいコンセプトにより、バイオウェアの会話選択肢を主体とするRPGに対する高い志が本作で結実したのを目の当たりにすると感慨深いものがあり、今作に繋がる試行錯誤がされてきたあらゆるバイオウェアの過去作も遡って再評価したくなるほどでした。
 

ドラゴンエイジシリーズ