プレイ動画
評価:60/100
ジャンル
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フライトアクションRPG
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発売日(日本国内)
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2015年3月26日
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開発(デベロッパー)
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アートディンク
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開発国
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日本
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- 短評
- 「え? リーファとシノンがSAOサバイバー?」
- 移動手段としては優秀、バトルは及第点以下のフライトアクション
- 薄いが効果は確実なRPG要素とハクスラ成分
- ラブコメやるならマジメにやれ!!
- 不満あれこれ
- 最後に
短評
原作とは異なるゲームオリジナル展開のストーリーだが、完成度は低くこれといって見るべき部分がない。
最大の売りであるフィールド上を自由に飛び回れるフライトアクション部分は優れているものの、ダンジョン攻略時は常に徒歩移動なためその魅力を十分引き出せておらず、欠点が目立つ。
それ以外も、あらゆる部分がガタガタでアクションRPGの及第点には届かず。
「え? リーファとシノンがSAOサバイバー?」
このゲームは、VR(仮想現実)MMOゲームを題材としたSFライトノベル、『ソードアートオンライン』を原作としたアクションRPGです。
プレイするオンラインゲームが次々に移り変わっていくという特徴を持つSAOシリーズの中で、本作の舞台はSAOに次いで登場するVR-MMORPG、ALO(アルヴへイム・オンライン)となります。
プレイする前は、アニメ版で言うと一期と二期の間くらいの時系列なのかな?程度の認識でした。
するとシノンやユウキ(アニメ版では二期から登場)が出てきたので「と、言う事はGGO(ガンゲイル・オンライン)のデスガン戦以降の話か」と思いきや、リーファとシノンはSAOでキリトと一緒だったという会話がされ???状態に。ゲームの初っ端から原作とは異なる設定に混乱させられました。
どうやらゲーム版のSAOシリーズは原作とはIF展開路線を採用しているらしく、ALOから登場したキャラも、GGOから登場したキャラもほとんどがSAO時代からキリトと一緒だったという設定に統合されており、アニメ版を見た後だと逆に関係性がこんがらがって分かり辛いです(GGO自体がこの世界にはまだ存在しないらしい)。
本作独自のオリジナルストーリーは、適当に作った設定をただ雑に転がすだけで実質存在しないようなものです。
それよりも気になったのはユウキや、ユウキが属するギルドであるスリーピングナイツの秘密が雑にネタバレしまくっていること。
いくらなんでも原作ではミステリーとして扱われているスリーピングナイツの謎を無遠慮に明かしていいのか疑問に感じました。
ユウキやスリーピングナイツの正体をゲーム内で明かすこと自体は構わないですが、もう少し丁寧にミステリーの手順くらいは踏んで欲しかったです。
移動手段としては優秀、バトルは及第点以下のフライトアクション
古典的なMMORPGベースのSAOとは異なり、ALOのプレイヤーは空を飛べる妖精という設定を生かした、フィールド上を自由に飛び回れるフライトアクションと、空中戦を主体とするアクションRPGというコンセプトは非常に魅力的です。
しかし、実際にプレイすると想像していた自由度とは大きくかけ離れており肩透しを喰らいました。
フィールドはそこそこ広さはあるものの、4つあるエリアはどれもこれも景色が岩だらけの味気ないもので、とてもではないですがここを自由に飛び回れても景色に見惚れるなどということはありません。
マップの設計も探索を意識した凝った作りになっておらず、ただマップに表示される目的地に機械的に移動するための通り道程度の印象しか残りません。
開発を担当しているアートディンクは『ネオアトラス』や『カルネージハート』などの傑作シミュレーションゲーム以外にも、『ガンダム バトル』シリーズなど、軽快な操作性のアクションゲームを作っている実績があるだけにフライトアクション自体の操作の快楽性はそこそこ優秀で、フィールド上を飛び回る分には充分に楽しいです。
ただ、問題は一定の高さ以上には上昇できない高度制限があり、なんとこれが解除されるのがプレイ開始から10時間以上も経ってから。そのため、遥か上空に浮かんでいる浮島を目の前にしながら延々とお預け状態を喰らうので、真に自由に空が飛べる開放感を味わえるまでかなりの忍耐を要求されます。
さらに、自由に飛び回れるのはフィールドだけで、拠点となる街や、肝心のメインとなるダンジョン探索時は徒歩オンリーなので、ゲームの大半は本作の味である空中遊泳が堪能できないという酷い仕様です。
徒歩でのダンジョン探索時はPS3どころかPS2の平均のアクションゲームにすら劣る程度の魅力しかなく、やっつけで作られたような構造のダンジョンをひたすら歩かされ、空を飛べもしない単調なバトルを強要され、かなりキツイものがありました。
フライトアクション自体、単純な移動時はスピードが出せて楽しいのに、戦闘になると地上戦をそのまま空中で浮いた状態のまま行うだけのようなあか抜けないもので、空中戦を売りにするなら絶対に必要な敵味方が超高速でぶつかり合う、ドッグファイトのような激しさがありません。
空中戦と地上戦のバトルを差別化せず一緒くたにしてしまい、しかも、なぜか空中戦ではなく地上戦のほうを優先して作ったせいで、空中戦が非常に味気なく、バトルを楽しいと感じることはほぼありません。
薄いが効果は確実なRPG要素とハクスラ成分
本作は意外にもRPG(成長)要素が細かく設定されていたり、ドロップする度に同名装備でもしっかり個々の武器に性能差が生じる仕様の王道ハクスラ要素を備えていたりと、どれも作り込みは浅いもののプレイのモチベーション維持への最低限の配慮はあります。
レベル代わりの種族熟練度を筆頭に、武器で攻撃するだけで装備している武器に応じた武器熟練度が上昇したり、技スキルや魔法を使用する度に技スキル熟練度や魔法熟練度が上昇したりするため、ちょっとした戦闘ごとに色々な数値が上昇し続け、成長の刺激が途絶えません。
ただ、RPG部分やハクスラ部分に共通する問題はプレイヤーへの通知が、UI上に表示される一行だけのログであっさり済まされてしまうこと。
熟練度が上昇してもログには熟練度が〇〇に上がりましたの一行。敵が武器をドロップしてもログに〇〇を入手と一行表示されるのみです。
RPGならレベルアップした際に、ハクスラならアイテムを入手する際に、プレイヤーへの通知に何らかの工夫を凝らしそうなものですがそれが無く、非常にあっさりし過ぎています(『ドラゴンクエスト』で言ったら、レベルアップ時に特徴的なSEが一切鳴らず、ウィンドウにレベルが上がりましたと一行表示されるだけのような味気なさ)。
レベルアップや装備の入手といったプレイヤーにとって喜ばしいはずの情報通知をあっさり一行で済ませてしまうので気分が高揚しません。
それとどうしても、前述したようにバトル時のアクションゲームとしての出来はPS3どころかPS2の平均以下なので、やはりRPG(成長)要素やハクスラだけでカバーしきれるはずもなく、単調なアクション部分を何とか誤魔化すくらいが関の山です。
ワガママを言えば、せっかく細かい数値を用意するなら『ディアブロ2』や『タイタンクエスト』、『グリムドーン』のように武器・防具の装備条件に一定のステータス値を要求するなど、ハクスラ周りにちょっとした工夫が欲しかったところ。
そのほうが強力な武器の装備条件を満たすためプレイヤーがどの熟練度を上昇させるべきか目標を立て意識的にレベル上げに挑め、その結果RPG(成長)要素とハクスラ要素をうまく連携させ相乗効果が生まれたと思います。
ラブコメやるならマジメにやれ!!
アクションRPG以外の部分では、原作のハーレム展開を踏襲するかのような、ヒロイン達との軽いデートイベントが発生したり、特定のキャラと二人だけでクエストを行ったりという、サブイベントが用意されています。
ただ、この部分の作り込みが浅すぎてまったくサービスになっていません。
キャラクターの内面を掘り下げ、いつもと異なるシチュエーションを演出するなどの工夫は皆無で、ただラブコメのテンプレでしかない手抜きの状況にキャラを当てはめ、薄っぺらい記号的なリアクションを取らせるだけで、見ていてイライラさせられます。
キャラの魅力が増すどころか、ただただうすら寒いやり取りを繰り返し見せられるだけで逆効果にしかなっておらず、キャラクターがかわいそうです。
作り手のラブコメ愛が微塵も感じない、ラブコメ軽視姿勢が不快でした。
ラブコメを舐めるな!!
不満あれこれ
本作は長所よりは短所が目立ち、プレイ中は常に不満だらけです。
酒場で受注できるクエストの報酬がショボすぎて存在が無意味。
攻撃の追尾性が弱いため敵の攻撃が常に空振りばかりでストレスまみれ。
アイテムを使う際に名前やアイコンで効果が分かり辛く、説明文も表示されないせいで使いたいアイテムがどれかさっぱり見分けがつかない。
ボスが固くてひたすらMPを回復しながらスキルを叩き込み続ける作業を長時間強いられうんざり、と散々です。
本作は、攻撃が空振りしてばかりとか、アイテムの効果が分かり辛くて使う際にいちいち迷うとか、アクションゲームとして繰り返し繰り返し何度も行う、本来そこにストレスが発生しては絶対いけない箇所がストレスまみれという深刻な問題を抱えており、お世辞にも完成度が高いとは思えませんでした。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
フィールド上を自由に飛び回れるフライトアクション部分は気に入りましたが、それ以外のあらゆる部分は不満だらけです。
空を飛べないダンジョンを廃止し、空中戦アクションを大幅に強化し、成長要素やハクスラとアクションが連携できたらまだ化けるかもしれない、伸びしろは充分にある惜しい作品といったところです。
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