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[レビュー]アサシンクリード オリジンズ(steam版) 神々しい古代エジプトを駆ける始まりの暗殺者 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:90/100
 
作品情報
ジャンル
オープンワールド
 ステルス アクションRPG
発売日(日本国内)
2017年10月27日
開発(デベロッパー)
Ubisoft Montreal
開発国
カナダ(UBIの本社はフランス)
ゲームエンジン
AnvilNext 2.0

短評

 
 これまでのステルスアクションから思い切ってステルスアクションRPGへと路線変更した結果、ほとんど別ジャンルのような作品と化した。
 
 アクションRPG部分が貧弱だったり、アサシン教団の誕生を描くシナリオも一本調子だったりと不満も多いものの、紀元前1世紀のプトレマイオス朝末期のエジプトの作り込みはシリーズでも突出した作り込みで圧巻。アサシンクリードシリーズの中で、単純な完成度だけで言えば間違いなくトップクラスの大傑作。
 
 

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ウィッチャー3への宣戦布告、それはアクションRPGというレッドオーシャンへの船出

 
 本作を端的に言えばウィッチャー3化したアサシンクリードです。ドラマ性を持たせ露骨なおつかい感を軽減するようなサブクエストの作り方だったり、シリーズの特徴をそのまま色濃く残しながらも全体を徹底的に遊びやすく改良して間口を広げようとする創意工夫など、あらゆる部分がウィッチャー3を意識した作りになっています。
 
 

 

 
 ウィッチャー3からの影響部分で、自分が一番感心させられたのは、ゲームに触れる際の手触りや肌感覚こそを忠実に再現しようという着眼点の確かさです。ウィッチャー3をプレイして何に感動させられたかというと、粗野で無骨な箇所を排除し、洗練され尽くしたたおやかさを作品が纏っていたこと。
 
 本作も、まさにこの部分こそを志向し、ゲームの手触りがこれまでのアサシンクリードシリーズでも突出して磨き抜かれた上質なものに仕上がっており、ゴツゴツとした無粋さとは無縁です。
 
 さらに、ただ単にウィッチャー3に影響を受けただけに止まらず、これまでのUBIの作品群から完成度の高いシステムだけを厳選してフルに動員し、対ウィッチャー3へのUBI作品のシステム総力戦の様相も呈しています。
 
 まず、シリーズお馴染みの敵を強調表示させたり、マーキングしたりする鷹の眼モードを、ゴーストリコンなどのドローンによる空中からの敵情視察にそのまま置き換えている点。鷹の眼が無くなり、主人公バエクの相棒であるセヌという空中を飛翔する本物の鷹の視点で敵をマーキングする仕様に変更されました(アサシンが持つ鷹の眼という能力名がそのまま空中の鷹の目から見た視点に置き換わるというギャグにもなっている!)。
 
 

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 その他にも、ボーダーランズディアブロ3などの影響が強い、装備がレベル制限制のハクスラRPGシューターだったディビジョン(ウィッチャー3も影響が濃いのでそっくり)から、まんまレベル制限制装備とハクスラRPG部分を抜き出し、シューター部分を弓矢に置き換えている点。
 
 なんと本作の弓矢は銃器代わりにもなっており、スナイパーライフルの様な長射程の弓矢や、ショットガンのような矢の束をまとめて射る特殊な弓、アサルトライフルやサブマシンガンのフルオート射撃のような連続で矢を射る速度重視の弓矢など、ほとんどギャグ擦れ擦れで笑ってしまうような仕様です。
 
 後は、オマケ程度ですが、4・ローグにはあったファークライの野生動物の狩りとクラフトを連動させる要素が復活したり、4やローグの船同士で戦う海戦要素(と言うか、バランス的には3に近い)が息抜きのミニゲーム的にほんのちょこっとだけ入っていたり。
 
 

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 このように、ウィッチャー3というゲーム史に残る巨大なピラミッドに挑むため、UBIの保有する全戦力をなりふり構わず投入してきたかのような出来で、いかにUBIがウィッチャー3の凄まじい完成度に衝撃を受けたのか、本作の内容から類推できてしまいます。
 
 ただ、あまりにもウィッチャー3に影響を受けすぎ、ステルスからアクションRPGにジャンルを寄せたせいで、別の問題も生じてしまいました。それはアクションRPGとしてのバトル周りの貧弱さです。
 

「ステルスゲームにしてはバトルもそこそこ面白いよね」から「アクションRPGにしてはバトル周りが貧弱だよね」に変化

 
 本作のかなり広範囲に渡る問題はバトルシステム周りの凡庸さです。これまでのようなステルスが主体で、バトルは敵に発見された際にやらされるペナルティ的な側面が強かったものと異なり、ステルスからバトルへかなり比重が移り、さらにバトルを中心としてやり込み要素(ハクスラ的な装備収集やクラフト)が設定されるというシステム構成のため、前作シンジケートのなんちゃってRPG要素と違い、バトル周りの貧弱さがそのままゲームとしての中毒性の弱さにダイレクトに反映されてしまっています。
 
 これまでのバトル部分も、チャンバラは爽快感があり魅力的でしたが、やはりそれはステルスゲーム内のサブ的なものとしてであり、バトルだけ抜き出し他作品に通用するほどではありませんでした。
 
 ダンジョンRPGがダンジョンを一歩一歩探索するのに緊張感を持たせるためデスペナルティを重めに設定するように、ステルスは敵に発見されずに進むという点に快楽性を持たせるため、どうしてもジャンル的な要請上敵に発見された際にそこそこのペナルティを設定せざるをえません。そのペナルティ部分のストレスを緩和するための小気味よいバトルであり、バトルそのもので持たせるためのものではありませんでした。
 
 ですが、今作は一応まだステルスが中心としても、明確にアクションRPG路線に舵を切ったため、ステルスゲーム内のペナルティ部分のストレス緩和や、マンネリを回避するための刺激としてのバトルから、アクションRPGとしてそれ単体でプレイヤーを魅了するバトルに評価基準が変わり、より求められる水準が高くなったのにそれをクリアできていません。
 
 

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 常に注意を払わなければならないスタミナゲージやそれに相当するもの(ウィッチャー3で言うと中毒度のようなもの)もなく、戦略性にも乏しく、攻撃も回避もガードもし放題のゆるゆるで締まりのないバトルシステムになってしまっており、この魅力に乏しいバトルに照準を合わせてやり込み要素を組み込むのは少々無理があると思います。
 
 どうしてもステルスが失敗した時や不意に戦闘に巻き込まれた時に応戦するのと、イベント時に受け身で行うものという従来の固定された印象が更新されることもなく、バトルそのものが楽しいと感じる瞬間も、装備を充実させたいという欲求を覚えることも、レベル上げがしたいと思うこともほとんどありませんでした。
 
 本作のバトルが全然ダメとか、RPGやハクスラ的な部分が不要ということは一切ないですが、わざわざ核であるステルス周りをないがしろにしてまでバトルにウェイトを置き、アクションRPGや中毒性強化方向に進んだ割にうまく機能していないのが勿体ないです。
 
 ここら辺は、ステルス要素を後退させてでも盛り込んだ海戦要素が大変素晴らしく、超一級のアクション体験を味わえた4やローグに比べると大幅に見劣りしてしまいます。
 
 中毒性要素がうまく機能しないのは、毎度毎度ゲームのインセンティブ(報酬)設定や調整が二流でド下手くそな、かなりのアクション体質企業であるUBIらしいと言えばらしいですが、それでも4やローグは海戦の魅力に引っ張られて、船の改造が楽しかったので、しっかり柱として機能するアクションとやり込み部分を連動さえすればそこそこ機能はするはずです。
 
 これまではわりと波が穏やかな歴史ものオープンワールドステルスアクションや、オープンワールド海戦アクションという小さめな海を主戦場にしていたのに、オープンワールドアクションRPGというジャンルとしては真っ赤っ赤な、歴戦の猛者もさが入り乱れる激戦区中の激戦区の海域にバトルシステム周りが貧弱なまま片足を突っ込んでしまったため、今まで目立たなかった箇所が明確な弱点となって浮き上がってしまった感があります。
 
 まるで持ち味であるアドベンチャーやホラーの魅力を軽視し、シューターに走り出しておかしくなっていったバイオハザードシリーズのように「ホラーアクションアドベンチャーゲームにしてはシューティング部分が良くできているよね」から「シューターとしてはダメだよね」と、ライバルが強力な人気ジャンルへ移って以降、作品の出来がジャンルに求められる水準にまるで追い付かなくなり、シリーズへの印象が変質していく再現を見るかのようで、今作の付け焼刃程度のアクションRPG路線に対してやや不吉さも感じてしまいます。
 
 メタルギアソリッドⅤ:ザ・ファントムペインはステルスのまま、別段RPG要素などに頼らず、ピースウォーカーのフルトン回収やマザーベースをより強化したシステムを実装し、やり込み要素をうまく補強していました。なので明らかにUBIが苦手とする領分にわざわざ進まずとも、別に工夫次第でステルスのまま中毒性を持たせることも充分可能だと思います。
 

「え? アサシン教団ってその場のノリで結成されたの?」

 
 一応ストーリーはドラマチックに盛り上げようと努力していますが、シンジケート同様にとにかく民衆を苦しめる見た目からして悪い奴らがいてそれを暗殺していくというだけの単調で一本調子な内容で、終始退屈でした。最近のアサシンクリードシリーズはどれもこれもストーリーがあっさりし過ぎており、クリアしたら即内容を忘れてしまい、印象に残ってくれません。
 
 3のコナーのような、実の父がテンプル騎士団でアサシンとして義務を全うすればいつか父を殺さなくてはならなくなるという苦悩を背負っていたり、自分もアメリカ先住民なのに、先住民を弾圧する入植者達をテンプル騎士団を倒すため支援しなくてはならず複雑な感情を抱いたり、先住民の仲間から行動を理解されず苦しんだりと、非常に困難な立場に置かれながらも死に物狂いでテンプル騎士団と戦っていた魅力的なアサシンはどこに消えてしまったのかと悩むほど単純です。
 
 アサシン教団誕生が特に紆余曲折あるワケでもなく「世界中に結社のメンバーがたくさんいるから影ながら戦っていこう」という別にわざわざ説明されなくても最初から分かり切った結論に達するだけで心底ガッカリでした。
 
 今作はメタルギアソリッドシリーズでいうと3のようなザ・ボスからビッグ・ボスへミームが継承され、それが後にソリッド・スネーク、さらにオタコンや雷電へと受け継がれる、「ここから全ての歴史が始まったんだ!?」というシリーズの歴史のダイナミズムや連続性を強化する働きをしなければならなかったのに、ただ誕生した経緯が説明されるだけで、その役割を果たせていません。
 
 バエクやアヤから後のアサシン達に遺伝子ではなく信条こそが世代を越えて継承され、自由意志を守るために戦う者こそバエクとアヤの子どもたちなのだという感慨も大して生じません。
 
 遺伝子ではなく自分自身の信条のため立ち上がり戦う姿勢こそが次の世代へ継承されるという、メタルギアソリッド3が自分自身に忠を尽くせという、ほとんど似たようなメッセージを完璧に伝えきっていたのに比べると、杜撰ずさんです。せっかくアニムスが改良され、アサシンの直接の子孫でなくてもアニムスが使えるようになり、その結果アブスターゴの社員にすらアサシン達の想いは届くというところまで描いたのに、もう一押しが足りません。
 
 巧妙に人類から考える力、立ち上がる意志を奪い、世界中の人間を時の支配者や権力者、大企業にとって都合のいい家畜とするため暗躍するテンプル騎士団に対し、己を鍛え、己の頭で考え、己の信条に従い立ち上がる自由意志の守護者であり象徴がアサシンで、その意志・信条こそが世代を越えて地続きで現代まで受け継がれているから感動的なのに、そこの描き方が弱すぎます。アサシンクリードという素晴らしい大傑作シリーズの起源オリジンとして、これでは物足りないです。
 

・・・・・・などの不満を全て払拭してしまう、神々が宿ったかのような古代エジプトの大パノラマ

 
 今作は、これまでのシリーズとは趣が異なり、かなりアニムス成分が薄めで、2以降は当たり前だった歴史的な建造物などの解説が無かったり、メモリーのシンクロ条件も廃止されていたりと、あまりこの世界が仮想空間であるということを意識させない様な作りになっています。
 
 それもそのはずで、舞台となる紀元前1世紀のプトレマイオス朝末期のエジプトの光景は、あれほど凄いと思ったユニティの18世紀後半のパリや、シンジケートの19世紀ロンドンを軽く凌駕する、とてつもない大パノラマで、あまりにも360度どの方向を向いても一片の隙もないため、おごそかさすら感じてしまうほど。確かにこの圧巻の景色に余計なアニムス成分を挟んで没入感を台無しにする無粋極まりないことはできないだろうなと納得。
 
 一体どうやったらこんなパノラマを人工的に作れるんだろうと終始疑問に思うほど、ロングショットで眺める景色には威厳があり、大地の放つ無言の神々しさにそっと体がくるまれるような霊的とも呼べる錯覚を覚える瞬間が何度もありました。
 
 ヘレニズム時代らしくギリシャ建築も見事で、エジプトの神秘を感じながら、砂漠やピラミッドなどを走り回って冒険するもよし、荘厳なギリシャ建築をパルクールで昇って、ギリシャ文化の香りを堪能してもよしと、至れり尽くせりな内容です。
 
 シリーズダントツ最高の完成度を誇る古代エジプトという舞台を、非常に快適な操作性とパルクールでもって駆け巡るというあまりにも贅沢な体験は、初めて4の海賊行為を経験した時の感動にすら匹敵するほどで、忘れがたい思い出になりました。
 

 

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最後に

 
 クリアまで約30時間強ほど。
 
 凡庸すぎるアクションRPG部分や、平凡で単調なシナリオなど不満も多いですが、またしてもシリーズのベストを軽々と楽勝に、周回差をつけて更新してしまう超弩級の神がかった古代エジプトの景観の作り込みや、ウィッチャー3がそうであったようにゴツゴツと角ばった箇所を研磨し尽くしてスベスベに磨き上げた作品の手触りはシリーズでもぶっちぎりな滑らかさで動かしているだけで快感だったりと、全体の総合力の高さで言えばシリーズ随一の完成度を誇る大傑作。
 

余談

 
 アサシンクリードシリーズはいつも主人公を演じる声優さんが良い演技をしていますが、今作の主人公バエクを演じる声優の福山潤さんも素晴らしく、こんなに長いシリーズなのによく毎回ここまで安定しているなぁと素直に感心させられます。

アサシンクリードシリーズ

実写映画版

 
アサシン クリード オリジンズ【CEROレーティング「Z」】 - PS4

アサシン クリード オリジンズ【CEROレーティング「Z」】 - PS4

 
アサシン クリード オリジンズ【CEROレーティング「Z」】 - XboxOne

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アサシン クリード オリジンズ(日本語版)|オンラインコード版

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