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【PSP】厳かなる月の聖杯戦争、開幕 |『Fate/EXTRA(エクストラ)』| レビュー 感想 評価

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評価:65/100
作品情報
ジャンル ダンジョンRPG
発売日(日本国内) 2010年7月22日
開発(デベロッパー) TYPE-MOON イメージエポック
開発国 日本

ゲームの概要

 
この作品は、Fateシリーズの外伝です。
 
原作のビジュアルノベル『Fate/stay night』から聖杯戦争のルールや一部キャラクター、サーヴァントを抜き出し、本編と独立させた外伝となっています。そのためキャラクターもサーヴァントも見た目が被っている以外はFate本編と関連はありません。
 
ゲームとしては『ペルソナ』シリーズ(3以降)を彷彿とさせる学園パート(アドベンチャーパート)とダンジョンRPGパートが交互に繰り返されるスタイルです。
 
携帯機向けのためかダンジョンRPGとしてはダンジョンの構造やバトルの作りが甘く、原作ファン補正がないとやや厳しい内容でした。
 

あらすじ

 
月面にて発見された謎の古代遺物ムーンセル・オートマトン(七天の聖杯)
 
それは地球に生命が誕生してから今日までの全観測記録が保管され、その機能を掌握すれば未来さえ自由に書き換え可能とされる万能の願望機であった。
 
月の聖杯を巡り、ムーンセルが人類とコンタクトするために作り上げた霊子虚構世界SE. RA. PH.(セラフ)に集められた魔術師(霊子ハッカー)たちによる、月の聖杯戦争が幕を開ける。
 

舞台を冬木市から月のセラフへ、方式をバトルロイヤルから勝ち抜きトーナメントへと模様替えした天上の聖杯戦争

 
本作は、原作者である奈須きのこさんがシナリオを書いていることもあり、ほぼ全編奈須きのこ文体が堪能できる豪華な作品です。
 
ただ、携帯機向けのため全体的にあっさりしており、さすがに本編並のスケールや満足度はありません。
 
それでも各クラスのサーヴァントごとに英霊の正体が徐々に明らかになるミステリー要素は健在で、そのため多少ダンジョンRPGパートが単調でもストーリーの先を知りたいという欲求は絶えず、最後まで飽きることはありませんでした。
 

ダンジョンRPGとしては凡庸

 
ゲーム性は、学園パートとダンジョン探索パートに分かれ、期日までにダンジョン内で目標を達成すれば敵マスター(サーヴァント)とのボス戦に挑め、それがお馴染みの7クラス(セイバー・ランサー・アーチャー・バーサーカー・アサシン・ライダー・キャスター)分繰り返される、というものです。
 
ただ、学園パートは『ペルソナ』のような街を探索できるといった自由度は一切無く、ダンジョン探索のための軽い準備(アイテムの購入・スキルポイントの配分、など)と、相手サーヴァントがどんな英霊なのか調べるというほとんどイベントに近い調査作業に費やされるのみで別段面白味はありません。
 
ダンジョンRPGパートも、最初から最後までさほど代わり映えしない殺風景な空間を何度も歩かされるのみで単調です。
 
せめて自動生成ダンジョンにしてくれたら毎回構造が変化し刺激も生じたかもしれませんが、殺風景なクセにイベントと連動させるためかマップは固定です。
 
しかも、普通のダンジョンRPGならほぼ当たり前にある階層が存在せず、ダンジョンを潜る(昇る)こともできないため、ただ一層しかないダンジョンを機械的に歩き回るだけで、ダンジョンRPGとしては貧相という印象が拭えません。
 

運要素強めのジャンケンバトル

 
バトルはほぼジャンケンに近い三すくみを軸とした味方サーヴァントと敵との一対一のターン制バトルです。
 
相手がどんな手を繰り出してくるのか毎ターン手を読まなけらばならず、そこそこ運要素が強めです。ただ、任意に攻撃スキルを発動し相手の行動を潰せるので、完全な運頼みではなく確かな戦略性があります。
 
しかも、かなりゲームオーバーになりやすいバランス調整で、油断してHPの回復を怠ったり、三すくみの読みが外れたり、敵サーヴァントの強力なスキルや宝具をガードできなかったりしただけであっけなく死亡しセーブポイントからやり直しです。そのため、ダンジョンRPGらしい数十分のプレイが一瞬の判断ミスでパーになるという事態が頻発します。
 
ゲームオーバーを誘発させるためのバランス調整(必ずしも難易度が高いというワケではない)は、単調なダンジョンパートにある程度緊張感を持たせプレイを引き締める効果もありますが、正直、ダンジョンRPGとしては完成度が低く不満しかありません。
 

不満あれこれ

 
個人的にしっくりこなかったのはサーヴァントのデザインや英霊のチョイスが、仮想空間という舞台とあまりそぐわないことです。
 
甲冑を着込んだサーヴァントや、マントを羽織ったサーヴァント、三国志の武将の英霊など、別に地上の聖杯戦争で呼ばれてもいいようなデザインや設定のサーヴァントが多く、セラフという特異な舞台に特化したサーヴァントは数人くらいしか見当たりません。
 
劇中ちょろっとだけ、(月が舞台なので)アームストロング船長の英霊が召喚されているという会話がされますが、終わってみると「アームストロング船長の英霊(アポロ11号に騎乗していたのでクラスはライダー?)みたいな方向性で良かったのに!」と、文句を言いたくなりました。
 
もっとSF的な世界観や仮想空間という舞台に馴染むよう、サーヴァントのデザインやそれに見合った英霊にすればFate本編と別基軸の聖杯戦争であるというコンセプトがより際立ったと思います。
 

最後に

 
クリアまで約20時間強ほど。
 
一本のダンジョンRPGとしては凡作で、Fateのファンアイテムと考えないとキツイゲームでした。
 
 
 
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