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【PS3】『テイルズ・オブ・エクシリア』| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:75/100
作品情報
ジャンル 揺るぎなき信念のRPG
発売日(日本国内) 2011年9月8日
開発(デベロッパー) ナムコ・テイルズスタジオ
開発国 日本

ゲームの概要

 
この作品は、『テイルズオブ エクシリア』シリーズの1作目です。
 
システム周りは『ファイナルファンタジー10』や『ファイナルファンタジー12』の影響が濃く、プレイの快適さはバトル・成長システムともに良好でした。
 
しかし、シナリオは丁寧さを欠いており続編の2ともに魅力がまったくありません。
 
全体的に平板でメリハリがないややパンチ不足な作品で、シリーズの中では凡作の部類です。
 

テイルズ・オブ・ファイナルファンタジー10・12

 
本作は、FF10のバトル・成長システム、ゲームプレイのテンポ、FF12のショップに素材を納品し商品数を増やしていく要素や、ガンビット的なバトル中のオートアイテム設定機能など、作品内の至るところからFFシリーズの影響が見え隠れします。
 
若干露骨過ぎる点は気になりますが、さすがにFFシリーズでもトップクラスの完成度を誇る10・12をお手本&良いとこ取りして作られているためか、プレイ自体はそこそこ快適です。
 
FF10のキャラ交換システムを応用した、リアルタイムキャラ交換とリンクシステム(敵に応じて、特定タイプを得意とする仲間と連携して敵に対処するシステム)の組み合わせや、リリアルオーブという、FF10のスフィア盤(もしくはFF12のライセンスボード)を六角形にしたような成長システムなど、FF10・12成分が濃厚なシステム群は概ねゲームにとってはプラスに働いています。
 
バトルはシリーズ屈指の完成度の高さを誇った『グレイセス』のハイスピードバトルに比べる爽快さは大幅に後退しました。
 
しかし、リリアルオーブというレベルアップの快楽性を強化する成長システムの採用や、戦闘中にパーティメンバーが設定に応じて自動でアイテムを使用してくれる『FF12』のガンビットそっくりなオートアイテム設定機能など、今作で追加された要素がうまく後退分を補う働きをしており、それほど悪い印象はありません。
 
特にもはやRPGの皮を被ったアクションゲーム化傾向が強いテイルズオブシリーズにおいて、成長システムにテコ入れがあった点は素直に嬉しかったです。
 
肝心のバトルシステムはグレイセスの技や術などの攻撃コストをCC(チェインキャパ)数値で一元管理するというものから、技や術をTP(MPのようなもの)を消費して繰り出す従来のスタイルに戻されました。
 
ただ、いつものテイルズと異なる点がいくつかあります。それは、スキル効果で戦闘中にTPがガンガン回復していく点と、オートアイテム設定機能のおかげでTPが低下したら自動でアイテムを使用し回復してくれる点の二つです。
 
これらの補助効果で、TPが切れて技や術が使えず難儀するという状態に陥る頻度が大幅に減りました。
 
この攻撃(特にコンボを長く繋げる行為)さえしていればスキル効果が勝手に組み合わさってHPやらTPがガンガン回復するという、攻撃行動に回復を組み込んでしまうアプローチが功を奏し、TP制が復活したのにバトルテンポが悪くなるということもなく、バトルに不満を抱くことはほぼありませんでした。
 

パズルが喪失したスカスカのダンジョン

 
ダンジョン周りで気になったのは、サクサク進むゲームテンポを確保したかったのか、シリーズ定番のダンジョンのパズル要素がごっそり無くなったことです。
 
自分は最初パズルが無いことに気付かず、なぜいくらダンジョンを攻略しても手応えが一つも無いのか疑問でした。しかし、パズルが無くなったことによる影響だと気付くとこの手応えの無さに合点がいきました。
 
『グレイセス』のような膨大な量のパズルで足止めされ続けるパズル漬け仕様なのも面倒でしたが、ここまで綺麗さっぱりなくしてしまうと、ゲーム性がバトルに依存しすぎて単調となるため程よい刺激として多少は残しておいたほうが無難だったと思います。
 
一応ダンジョンのパズルの喪失によって空いた穴を埋めるためか、ショップに素材を納品してショップ自体を開発していくショップビルドシステムと連動させた素材採取要素をフィールドやダンジョンに設定して補おうとはしていますが、作りが雑過ぎて何の印象にも残りません。
 

無機質な世界

 
本作は、カメラが固定だった『グレイセス』から自由に動かせる仕様に変更されましたが、これによってまた新たな問題も生じました。
 
プレイヤーにカメラをグルグル回させたいのか、フィールドがやたら開けた遮蔽物のない形状となり、カメラを頻繁に回さないとフィールド全体を確認することができません。
 
多分その広さのせいでフィールドの細部まで作り込まれず、見た目がほぼコピペしたような外見となり、どこを旅しても既視感のある光景が広がるだけで、地域ごとに差別化ができていません。
 
さらにイベント中以外は、いつでもどこでもワープ機能で世界中のセーブポイントにワープできるという非常に便利なシステムを搭載したせいで、逆に世界中の街やダンジョンの距離感がほとんど分からなくなり、世界が狭まったように感じます。
 
快適さを増すのはもっと段階的にするべきで、いきなり便利だと便利が当たり前でしかなく、ありがたみが生じません。
 
特に世界を旅するようなゲームなら尚更で、快適すぎる旅なんて旅ではなくてただの長時間の移動でしかなく、旅そのものの喜びまで奪われ散々でした。
 

グレイセスが懐かしく思うほどのお粗末シナリオ

 
本作に対する不満点はシステムよりかはシナリオに集中します。
 
『グレイセス』も問題だらけでしたが、細かい不満をあれこれあげつらって申し訳ない気分になりました。
 
全体的に『グレイセス』に存在していた病状が輪を掛けて悪化してしまい、手が付けらなくなってしまった感があります。
 
工夫も何もない剥き出しの設定が突然放り込まれる雑過ぎて無残極まりないシナリオ構成。
 
旅情などまったく感じない、世界の広がりなど微塵も演出する気もないゲームであることに開き直ったような無機質な世界の描き方。
 
『ファイナルファンタジー13』シリーズを想起させられるプレイヤー完全置いてきぼりで登場人物同士が勝手に意味不明で感傷的なやり取りを延々グダグダ繰り返す苦痛なだけの会話シーンなど、シナリオ周りは散々です。
 
キャラクターの掘り下げもイマイチで、重い過去を背負ったローエンやアルヴィンといった魅力的なキャラもいるものの、シナリオがおざなりであまり活きません。
 
特にアルヴィンはずっと仲間に嘘をつき、何度も仲間を裏切り続け、信用ならない奴だと警戒させてから終盤なぜそんな行動を取るのかの真相が語られるという『ファンタジア』におけるダオスのような役割を持っているのに、シナリオが雑なのでその苦悩が弱く感じます。
 
使命のためならどんな犠牲も払うという信念で動いているという点においては、ヒロインのミラの対になるようなキャラなのに、その苦悩がミラに比べるとうまく仲間内で共有されないまま最終決戦に挑むような運びとなるので、若干かわいそうでした。
 

最後に

 
クリアまで約30時間強ほど。
 
プレイ自体は新システムのおかげで快適です。
 
しかし、ただ快適なだけでテイルズシリーズの一作としても、一本のゲームとしても、湿気ってパサパサで歯応えがないせんべいのような、味気ない余韻しかありませんでした。
 

テイルズオブシリーズ

タイトル
ハード
テイルズ オブ グレイセスf(エフ) PS3
テイルズ オブ エクシリア2 PS3
テイルズ オブ ゼスティリア PS3
テイルズ オブ ベルセリア PS4
 

 
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