プレイ動画
評価:80/100
ジャンル | RPG TPS |
発売日(日本国内) | 2009年5月21日 |
開発(デベロッパー) | BioWare |
開発国 | カナダ |
ゲームエンジン | Unreal Engine 3 |
ゲームの概要
このゲームは、バイオウェアが制作した広大な宇宙を駆け巡るスペースオペラRPGです。選択肢によって物語が分岐する『ドラゴンエイジ』シリーズと同じコンセプトで作られており、『ドラゴンエイジ』がアクションRPGに近いゲーム性に対し、コチラはシューティングゲームとなっています。
移動が単調な惑星探索パートや、撃ち合いに迫力がない戦闘、ボリュームも少なすぎてあっという間にクリアしてしまうなど、問題が山積しておりゲームとしては欠点だらけです。
しかし、それらを補うほどギャラクシーマップを用いて未知の星系を調査する王道のスペースオペラらしい興奮と、RPGとしてのバランス調整が素晴らしい傑作でした。
あらすじ
火星で発見された古代の種族プロセアンが残したとされる古代文明のテクノロジーマスエフェクトにより、人類の科学技術は飛躍的に向上した。
マスエフェクトによる技術革新によって太陽系の外に飛び出した人類は、すでに高度な文明を持つ異星人たちにより形成されるシタデル評議会を中心とした銀河社会と遭遇し、新参者として迎えられる。
西暦2183年。人類の植民惑星エデンプライムでプロセアンの遺物であるビーコン(通信データモジュール)が発見された。その回収任務を命じられた連合軍所属のシェパード少佐はビーコンと接触した際に、プロセアンが機械種族リーパーによって絶滅させられるビジョンを垣間見る。
長年謎だった高度な文明を築いたプロセアンが忽然と5万年前に宇宙から姿を消した理由。
あえて発見させることで宇宙全体の文明レベルを一定水準まで引き上げるために遺されていたかのような不自然なテクノロジー、マスエフェクト。
これらの謎が解き明かされる時、宇宙に住まうあらゆる生命体が絶滅の危機に晒されている事実が浮かび上がる。
RPGシューターとしての堅実さ
本作は同じバイオウェアのRPGである『ドラゴンエイジ』と似た選択肢によって物語が分岐するゲーム性で、『ドラゴンエイジ』をプレイしているならすんなり馴染めます。ただ『ドラゴンエイジ』とはゲームエンジンが異なるためか、ゲームから受ける感触はあまり似ていません。
本作をTPSとして見ると操作性は正直言って快適からはほど遠いものです。エイムは『フォールアウト3』や『フォールアウト ニューベガス』をV.A.T.S.システム抜きで撃ちあう不便さを多少マシにした程度で、オートエイム無しだとかなり辛いものがあります。
ただ、弾薬制限はなく無限に撃てる上に、そこまで正確に照準を合わせなくても大雑把に当たり判定を取ってくれるのでレスポンスの悪さほどストレスは感じませんでした。
このシューター部分はゲーム開始直後はイマイチな操作性の煽りを受けマイナスの印象からスタートするものの、慣れると戦闘自体は高難易度な『ドラゴンエイジ』より数段テンポが良く爽快感もあるため評価が一気に上向きます。
感触としては『ウィッチャー2』の高難易度ながらサクサク終わる戦闘に近く、非常に好みなバランス調整でした。
撃ち合いは少しでも油断して遮蔽物から身を乗り出すとあっさり集中砲火を喰らい死亡するため、ザコ敵戦だろうとある程度立ち回りに慎重さが求められます。
しかし、敵が固くて難儀することは一切なく、的確にカバー状態から射撃し、戦闘中使用可能なスキルを用いて立ち回ればテンポよく敵を倒していけるため、戦闘が退屈だったり長引いてうんざりしたりする瞬間がクリアするまでまったくと言っていいほどありませんでした(一周目に選んだクラスがソルジャーで攻撃力が高かったことも要因だと思います)。
システムも操作性も慣れれば慣れるほど味わいが増し、クリア後にもう一度クラスを変えてやり直すと序盤のステージの魅力も再発見できるなど、調整がしっくり肌に合います。
パーティでレベルを共有する珍しい成長システム
RPGとしての成長要素は各スキル項目(各種武器の威力・特殊能力の効果・HP上限・耐久性・シールド強度・ロックされたオブジェクトの解除能力、など)にレベルアップした際に得られるポイントを、自由に振り分けるオーソドックスなタイプです。
ここもそつなくまとまっており突出した魅力はないもののレベルアップの快楽性はしっかりあります。
特に感心させられたのはパーティ全体でレベルが共有制なこと。
本作は、パーティ全体で共有されるレベルだけ上げれば、メインパーティだろうとベンチキャラだろうと全員均等にポイントが与えられるという特殊な成長システムとなっています。そのためお気に入りのキャラを重点的に強化するという楽しみこそないものの、どんなパーティを組もうとキャラごとにレベル差がまったく生じません。
主人公以外に仲間が6人いてそこそこ大所帯なのに、パーティ編成の都度純粋にそのキャラ固有のスキルバリエーションを重視して組めます。
このいちいちキャラごとに個別にレベルを設定せず、レベルアップ時にポイントを均等に振り分ける工夫をするだけで成長の快楽性を維持しつつ、キャラごとの能力管理が便利になるのは新鮮でした。
正直、このシステムで『ファイナルファンタジー6』や『アーク・ザ・ラッドⅡ』を作り直して欲しいくらい。魅力的なキャラがたくさんいるのに中盤以降はキャラごとのレベル差が開きすぎるせいで使いたくても使えないキャラだらけになってしまう昔の国産RPGほど輝きそうなアイデアでした。
スタートレック+HALO(ヘイロー)な世界観
本作のベースとなる作風はアメリカのテレビドラマである『スタートレック』風の様々な種族がお互いを尊重して共存共栄している理想のリベラルなアメリカ像を体現したようなスペースオペラ風味です。
しかし、メインのストーリーはほとんど『HALO(ヘイロー)』の焼き直しに近いようなもの(タイトルが古代文明由来である点も同じ)。
HALO
|
マスエフェクト | |
---|---|---|
人類の脅威
|
フラッド
|
リーパー
|
古代人
|
フォアランナー
|
プロセアン
|
敵ときどき味方
|
コヴナント
|
ゲス
|
古代文明の名残
|
HALO
|
マスエフェクト
|
このため『HALO』シリーズをプレイしているとストーリーに既視感があり、あまり新鮮味はありませんでした。
これぞスペースオペラというギャラクシーマップに感動!
本作のスペースオペラ要素の中で最も感動したのは宇宙をコンパクトに表現するギャラクシーマップのアイデアです。
階層のトップが銀河(ギャラクシー)全体のマップで、そこから複数存在する星団(クラスター)を選択し、さらに星団に移動すると今度はそこから複数ある惑星系が選択でき、さらにさらに惑星系に移動すると恒星の周りを公転する各惑星が存在し、さらにさらにさらに各惑星には固有の公転周期・自転周期・重力(木星型惑星以外)・大気の組成などの情報が表示されるなど、初めて触れた時はしばらく興奮が冷めませんでした。
ワガママを言えば星団などを選択するのではなく、銀河をズームしていくと星団などの階層に自動で移るとか、各惑星に細かく衛星数も設定して欲しいとか、惑星系のマップでは各惑星が固有の設定の公転周期や自転周期でくるくるアニメーションで回っている、などの要素を満たしてくれていたらなお嬉しかったです。
『スターオーシャン』や『ゼノサーガ』など、国産のスペースオペラRPGをやっていて物足りなかった恒星間を移動しているという実感や、周りの天体情報を緻密に描くことで今居る場所へ説得力を持たせることをシステムレベルで表現できており「そうだよ、スペースオペラRPGでこれが味わいたかったんだよ!」と膝を打ちました。
加速してワープするムービーを入れたら終わりという手抜きの作りではなく、しっかりと銀河内のどの星系のどの惑星にいるのかというマクロな情報をプレイヤーに認識させようとする本作の姿勢はスペースオペラRPGのアプローチとしては100%正しいと思います。
作風もスペースオペラ的なやや堅苦しいかしこまった感じの会話のやり取りなど、そのままバイオウェアのやや堅めな作風と合致するので、バイオウェアは世界でも有数のスペースオペラというジャンルと波長が合い親和性の高いメーカーなのではないかと思うほどでした。
ボリュームが少ないにもほどがある
本作最大の問題は終始処理落ちし続け、フレームレートがまったく安定しないことです。
解像度が1080pで重いのか、ありとあらゆる場面で処理落ちし続け、移動中はまだいいにしても、戦闘中だとエイムに支障をきたすので終始ゲームプレイの足を引っ張り続けます(ただ、その分1080pで高解像度のため画面は非常にくっきり鮮明)。
後は、驚くほどメインストーリーのボリュームが少ないことです。物語がこれから折り返しに入るのかと思ったらあっさり次回に続くに近い形で終わり、拍子抜けさせられました。
それにセーブデータを持ち越して二周目も可能ですが、ここにも問題が。
本作は最初に6つあるクラスの一つを選んでスタートするという形式なのに、二周目にセーブデータを持ち越す際はこのクラスの変更ができません。
『ディアブロ』シリーズで言うとバーバリアンのクラスを選びクリアしてもネクロマンサーなどバーバリアン以外のクラスを選ぶ際はレベル1から再びやり直さないといけないのと同じです。
できれば2週目はレベルやアイテムを持ち越して違うクラスを選択してプレイしたいのに、クラス固定のため違うクラスを使いたい場合はまた別のキャラクターを作り直さなくてはならず、いまいち痒い所に手が届いてくれません。
それと、生身のシューター部分は非常に楽しくて中毒性があるものの、『HALO』っぽいことがしたいらしい、装甲車両を用いた広大なマップの惑星探索パート(主に移動)は単調でした。
車両での移動や戦闘があまりにも退屈過ぎて睡魔に襲われることがしばしばあります。
未知の惑星を車両で探索させたいという意図は充分理解できるものの、ゲームプレイのテンポを著しく削いでいるのでもう少し単調な車両での移動距離を短めにするなど工夫が欲しかったところ。
最後にゲーム内チュートリアルがかなり不親切なこと。
自分はパッケージ版ではなくダウンロード版を購入したので手元に説明書がない状態でプレイしていたため、序盤はほとんど手探りでシステムを覚えるしか手がなく不明な点だらけでした。
あまりに説明不足過ぎるためXboxLiveから説明書のPDFをダウンロードしてようやく理解できた箇所もありました。
このゲームはダウンロード版でプレイすることを前提としたゲーム内チュートリアルがないため、その点は注意しないと高確率でシステム理解に支障がでます。
最後に
クリアまで約10時間ほど。あまり寄り道せずに進むとリニア型のシューターのキャンペーンモード程度のボリュームしかなく、その短さに唖然とさせられます。
全体的に操作性の悪さや惑星探索の単調さ、どこもかしこも処理落ちだらけと欠点はそこそこ多いものの、そんな微々たるものより楽しさが大幅に勝ります。
こんな素晴らしいスペースオペラRPGシューターなら後何十作でもやりたいと思うほど好感が持てました。
マスエフェクトシリーズ
リンク