エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー]ナイトクローラー 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:90/100

短評

 
 カラフルな光によって化粧され、魔性の色気を放つロサンゼルスの街並みが極上の映画的扇情せんじょうを掻き立てる大傑作。
 
 
 

ヤコペッティの英霊がナイトクローラークラスのサーヴァントとして第五次虚偽報道戦争が勃発している現代に召喚されたら……

 
 ロサンゼルスという映画的プロポーション抜群のモデルをライトアップで妖しく飾り、蠱惑こわく的な魅力を振りまく街の夜景に一瞬で映像の虜にさせられました。この息を呑むほどに美しい街並みは、刺激という悪魔に魅入られ、事件現場を視聴者好みに演出し、飾り立てることに憑りつかれていく主人公に対し、見ているコチラ側に「だってこんなにライトアップされた景観は刺激的だろ? 刺激こそが重要なんだよ」とまるで共犯関係を迫ってくるかのよう
 
 脚本家上がりの監督なのにも関わらず、セリフにあまり頼らず、映像ベースの非常にテキパキした語り口で、撮影の隙のなさや編集のテンポの良さと相まって、ほぼダレることはないハイテンポなペースを維持し、サスペンスとしても超一級。ただ、サスペンスを目指したというよりも、表現したいことを突き詰めていった結果極端にサスペンス的緊張感を作品が帯びてしまっただけの様にも見えるため、あまりサスペンスというジャンルありきで括るのも作品に対して失礼な気がします。
 
 本作で最も作品の完成度に貢献しているであろうバケモノ染みた撮影監督は誰だろうと調べたら、なんと自分の生涯ベスト級作品であるゼア・ウィル・ビー・ブラッドの撮影監督でもあるロバート・エルスウィットだと分かり、大いに納得。
 
 ロサンゼルスという事件の予感をかおらせるサスペンスにはうってつけの舞台に恵まれ、これほど腕の立つ撮影監督に恵まれ、人と怪物の境界に住まう主人公を演じるジェイク・ギレンホールという冷静な狂気を体現する素晴らしい役者に恵まれと、こんなに幸運に恵まれ続けな映画が傑作でないはずもなく、しれっと映画史に残る一作に仕上がっている有り様。
 
 映画はしばしば倫理観が欠如した主人公が天職や僥倖ぎょうこうと出会う瞬間を祝福します。ロード・オブ・ウォーのニコラス・ケイジが武器商人という職と出会ったように、ウルフ・オブ・ウォールストリートのレオナルド・ディカプリオが投資詐欺に出会ったように、ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのダニエル・デイ=ルイスが石油を発掘してしまったように、本作のジェイク・ギレンホールは、道端の交通事故現場で、人の不幸を収入と刺激へと換えるパパラッチという天職に出会ってしまいます。映画の中の不幸が、映画の外の人間にとっての喜びとイコールとなる瞬間、見る者はこの怪物の誕生の加担者となり、永遠の罪人として作品の囚われビトとなる・・・・・・こんな大傑作なら迷惑極まりないパパラッチ誕生の罪も喜んで被ってあげたくなります。
 

最後に

 
 見る映画はほとんど監督かジャンルで選ぶタイプですが、本作を見るともはや監督よりも撮影監督で選んだほうが好みの映像美に出会える確率が高いのではないかと考えさせられました。
 
 映画へのスタンスすら揺るがされるほどの超弩級の大傑作。
 

 

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