トレーラー
評価:85/100
ジャンル | アクションRPG |
発売日(日本国内) | 2012年8月23日(Xbox360版) |
開発(デベロッパー) | CD Projekt Red |
開発国 | ポーランド |
ゲームエンジン | REDengine |
ゲームの概要
このゲームはポーランドのファンタジー小説を原作とした『ウィッチャー』シリーズの二作目です。ストーリーは1から繋がっており出来れば前作をプレイしていたほうが話が理解しやすくなります。
1はPC用ゲームのためUIが煩雑だったのに比べ、2はUIやシステムの余計な出っ張り部分を研磨したかのような滑らかさで、遊びやすさと戦闘の楽しさが見違えるほど向上しました。
しかし、話が途中から始まり途中で終わるためどうしても中途半端さが否めません。
UI周りが前作から劇的に改善され正統進化した続編

前作はPC専用のゲームなためキーボード&マウスオンリーなのに対し、今作はゲームパッド対応となったことで『ドラゴンエイジ』や『ディアブロ3』の家庭用ゲーム機版のようにUIが直感的で遊びやすくなりました。
今作をクリアした後に比較のため一作目をプレイし直すとあまりの煩雑なメニュー画面の見辛さに「ウィッチャー(一作目)ってこんなにややこしいゲームだっけ?」と、頭の中にあるそこそこ面白かった前作の記憶との乖離に戸惑います。
この作品単体だけだとお世辞にも明快と言えるほど取っつきやすくはありませんが、前作との比較で見た場合シリーズのベースはそのままで格段にシンプルにまとめられておりこれを一度味わうともう前作の煩雑なメニューが画面は嫌になります。
ウィッチャーらしさはそのままでより遊びやすさが増した2

今作が一番大きく変わった部分はバトルです。
前作はタイミング良くボタンを押すことによって連続攻撃を繰り出すという準アクションゲームだったのに対し、2からはアクション性を強めたリアルタイムバトルになったため、より普通のアクションRPGに近づきました。
その他細かい変更点は、アイテムが種類ごとに最初から分類されており格段に見やすくなったこと。スキルツリーが武器の種類や各能力ごとに別個だったものが一元化されたたこと。などなど、どれも快適さを増すことに貢献しているため、前作の取っつき辛さが嘘のように劇的に改善されています。
逆に前作から変わらない点は、ウィッチャーらしさを感じさせる体力回復が容易に行えず戦闘よりも事前の準備や戦い方に重点を置く高難易度設定なこと。
章が変わると舞台となる街や場所が移り、雰囲気がガラッと変わるという『ディアブロ2』を彷彿とさせる点。
発生した事件を最後まで丁寧に調査して真相に辿り着いてもいいし、面倒なら適当に片付けてあやふやなまま先に進んでもいいという選択がプレイヤーに委ねられる点、などなどです。
ただそこには選択と結果のみが存在する

これは一作目のゲーム開始時に表示される文言(日本語化した場合)ですが、この言葉がウィッチャーという作品のスタンスであり、海外のRPGが志向する方向性そのものを示唆していると思います。
決してゲーム側が善と悪を定義せず、プレイヤー自身が選択した結果が正しいのか間違っているのか判断が付かないもどかしい心理状態を作ることがゲームの目的であり、ストーリーとはこのような心理状態を作り出すための装置の一つに過ぎないという割り切った姿勢が今作からも垣間見えます。
ゲームがプレーヤーを接待することを止め一見正しいことをしても褒めては貰えず、明らかに間違ったことをしても叱ってもくれず。結果に過剰な意味を持たせず、何をやっても綺麗に片付けさせず常に苦い余韻だけが付いて回るのみ。
ストーリーはゲームから与えられるのではなく、納得し辛い展開に直面したことによって生じる苦悩の中からプレーヤー自身が汲み取るものであり、それにはやはり正解も不正解もなく。これは海外のハードなダークファンタジー志向のRPGにはよくあるアプローチですが、今作もこのスタンスが徹底されており物語的なカタルシスとは距離を取っています。
個人的に国産RPGのようなクリフハンガーが強めのストーリーでぐいぐい引っ張ってくれるほうが好みで、あまり海外のRPGの志向する姿勢は好きではありません。おまけに似たようなアプローチの作品が多すぎてやや食傷気味ですらあります。
ただ、システムのつまらなさを誤魔化すこともできてしまう安易なサスペンス性や物語的カタルシスと距離を取り、プレイヤー側にゲームシステムからもたらされる確かな手応えを味わって欲しいという、自己に対する厳しい姿勢は理解でき、これはこれでゲームとしては非常に真摯な態度なのだと割り切ることにしています。
その点今作はゲームとして厚みがあり、多少物語が味気なくても最後まで継続プレイさせる力を持っているため、途中で飽きることは一切ありませんでした。

選択と結果を楽しむシステム

シナリオ面と同様にシステムも「○○してもいいし、しなくてもいい」という姿勢が徹底されています。
どのシステムも押しつけがましさがなく、クラフトが面倒なら店でほぼ同じ物が購入でき、何がなんでもテクニカルな戦い方を要求してくるのではなく事前に霊薬を飲み武器にオイルを塗ると戦闘がかなりラクになるという程度で戦闘前の準備を面倒と感じるならそれをすっ飛ばして強引に攻めても勝てる緩さは許容してくれます。
苦労すればするほどそれに見合う程度には戦闘がラクになりますが、だからといってそれを押しつけてくるということもないというバランス調整が心地よく感じました。
敵との戦闘も毎回驚くほどあっさり終わるためテンポが非常に良く、むしろもっと戦いたいのにあっさり終わり過ぎて不満を覚えるほどです。
ひたすら敵を固くしてダラダラと戦闘を長引かせる様な愚かなことはせず、ザコもボスも腹八分なバトルボリュームを維持し続けるので常に敵に餓えた状態で最後まで戦闘が作業化することはありません。
自分は霊薬を飲んでステータスを強化して戦うというウィッチャーシリーズの面白さを一番引き出せるのではないかと考え、スキルツリーの成長はほぼ錬金術ルートに絞ってプレイしましたが、これが大正解でした。
霊薬や武器に塗るオイルの効果が大幅に強化されるため、ほとんどザコ敵は霊薬を飲みオイルさえ塗れば苦労せず数発の攻撃で倒せますが、霊薬やオイルの効果がないと途端に戦闘が厳しくなるため、勝ち負けの原因がハッキリし、システムによってもたらされる効果が肌感覚で理解できました。
一応アクションRPGですが、どちらかというとRPG寄りのバランス調整がされており、プレイヤーがどの方向に力を注いだかが結果としてダイレクトに反映されるため『ベイグラントストーリー』すら彷彿とさせるほど一撃一撃の攻撃に快感が伴います。
なぜこの一撃はダメージが大きいのか、なぜこの一撃はダメージが少ないのかが明解に説明できるため、大ダメージを与えられるのは自分の工夫によるものだと素直に喜べました。
攻撃力が高い武器を装備すればその威力をステータスの数値だけでなく、戦闘中に実感でき、霊薬を飲みオイルを塗ればその強化分しっかりダメージ量が上がり戦闘がラクになるという、バトルをウリにするRPGなら基本中の基本部分である一撃一撃の攻撃充実度が非常に高く、ただ敵を攻撃するだけで楽しいという理想的なバランスでした。
攻撃一辺倒のゴリ押しでは難しいため、魔術や投擲アイテム、罠を混ぜながら隙を作り、そこに霊薬やオイルで強化した重い一撃を喰らわせる。やっていることはシンプルなのに得られる快感は絶大で、この遙かに進化を遂げたバトルシステムの魅力のおかげで今作は前作とは比較にならないほどバトルが楽しめました。
不満あれこれ
まず、前作と同じでオープンワールドではないもののかなりマップが広めなのにナビゲーションシステムが不親切なことです。一部クエストでどこに行けばいいのか案内してくれないものがあり、マップ中をひたすら足を使って探し回らなくてはならずキツイ瞬間が何度かありました。ここは前作からあまり改善されていません。
後、今作一番の問題は話が途中から始まり途中で終わるという構造のため、クリアした後の余韻が極端に味気ないことです。
ゲームの作り自体がカタルシスを避けるタイプなため、もちろん盛り上がりなどほとんどないままフェードアウトするように終わり、クリアするまでは熱中していたのに、クリアした途端作品への興味が急激に冷めてしまいます。
一応主人公にかけられた王殺しの汚名をそそぐという当初の目的自体は解決されますが、映画の三部作のうち二作目のような余韻を果たしてクリアするまで30時間かかるゲームでやっていいのかという疑問のほうは晴れません。
もしこれをやるならもう少し本作単体で何か大きな事件が解決したような満足感を覚える作りにしてくれないと、これまで長い旅をしてきて最後は何も解決せず次回へつづくで締められた後の虚しさと徒労感だけが募る余韻ではとてももう一回やり直そうなどと思えません。
三部作である『ゼノサーガ』のエピソードⅠ・Ⅱなどはきちんとそのエピソードだけでもスッキリするよう終盤にド派手な展開が用意されているのに、今作はそこら辺の配慮が欠けていると思います。
海外のゲームはどれもラストの盛り上がりを重視せず、気付いたらラストステージだったり、酷い場合はさっき倒した中ボスっぽいのがラスボスだったと後で気付くというケースもザラにあり、今作もそれらとほぼ同様でした。
最後に
クリアまで約30時間ほど。
バトルは非常に自分好みな出来でクリアするまでは大変熱中していましたが、クリア後は若干時間を損したような気分に陥る困った作品でした。
ただ、続編の3がすでに発売されているので今やる分には大して問題にはなりません。
ウィッチャーシリーズ
タイトル
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