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[アニメ]「ソードアート・オンラインII(2期)」〈感想・レビュー〉

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トレーラー

評価:75/100

作品情報
放送期間
2014年7月~12月
話数
全24話
アニメ制作会社
A-1 Pictures

短評

 
 1期のハーレム要素がキツイ内容から一転し、非常に落ち着いた作風に変貌したため見やすさが大幅に向上した。
 
 SAOやアルヴヘイムというファンタジー色が強いオンラインゲームからGGO(ガンゲイル・オンライン)という荒野と硝煙の匂いを漂わせる舞台へと移っても、オンラインゲーム内の説得力を維持する手腕は見事。
 

あらすじ

 
  ゲーム内通貨をリアルマネーに変換できる、日本で唯一プロのプレーヤーが存在するVR(バーチャルリアリティ)MMOゲームであるGGO(ガンゲイル・オンライン)
 
 そんなコアなゲーマーが集うGGO内でデスガンを名乗る謎のプレーヤーが銃弾を放ったのとほぼ同時刻、撃たれた側のプレーヤーが現実で死亡するという不可解な事件が発生する。
 
 キリトは、総務省仮想課の菊岡誠二郎からの依頼を受け、デスガンがゲーム内で人を撃つだけで本当に現実の人間を死に至らしめることが可能なのか調査するためGGOに潜入する。
 

ハーレム要素の反省と克服

 
 本作を見る前の一番の懸念材料だった、前シリーズの度を越した不快なハーレム要素は鳴りを潜めており、とりあえずそこは一安心でした。
 
 主人公のキリトが前シリーズのヒロインだったアスナと恋人関係になっているため、二人のいちゃラブが増えてはいるものの、不快さまではいかない程度には抑制されており、作り手の反省が窺えます。
 
 それどころか、前半部のヒロインであるシノンに至っては、最終的に主人公に好感を持つという下手をすれば前シリーズのハーレム展開の二の舞にもなりかねない危ない立ち位置ながら、主人公のキリトと同じ様な悩みを共有させ、それをお互いが吐露し合い徐々に溝が埋まっていくプロセスを描くため、これまでの女性キャラの中でも最も地に足着いた普通のキャラに見えます。
 
 二人が共有する悩みがいくら何でも現実離れし過ぎでまったく感情移入できないとか、相変わらず意味もなくエロいカットを挟む等の手癖の悪さなど問題も多々あるものの、本作は全体的にアンチハーレムを意識しており、前シリーズとは比べものにならないほど見やすかったです。
 
 ゲーム内設定の映像への置き換えが丁寧なことや、サスペンス強めの見やすいストーリー、それらを支える作画のハイクオリティぶりは前作譲りなため、良い点はそのまま、悪い点は改善と、作品としてのバランスは前作より遥かに向上しました。
 

間延びしているのに掘り下げ不足という残念な構成のバランス

 
 設定自体は惹かれる要素が多数あり、サスペンスも程よく効いているため、TVアニメとしては大変見やすいです。
 
 ですが、今作は構成部分に非常に多くの問題を抱えています。
 
 本来ならそれほど長く引っ張る展開でないものをひたすら長い会話で引き延ばしたり、今度は絶対に掘り下げないといけない説明や描写を省いたりと、話の語り口のちぐはぐさが目立ちます。
 
 結果的に、印象としては速く先に進んで欲しいところはひたすら停滞しテンポが悪く、しっかり描写して欲しいところは満足に納得させてくれず説明不足という、痒いところに手が届かない惜しいバランスになっています。
 
 特に、すでにコチラ側が知っている情報を複数回事情に疎いキャラに説明するという説明の重複箇所が多く、もっと説明は一箇所にまとめてパパッと済ませて欲しかったです。
 
 さらに、前半と後半でまったく別の話が始まるという、前半積み上げてきたものが途中で一度リセットされるというあまりにもずさんな構成でげんなりしました。
 
 いくらなんでも前半と後半が原作では違うエピソードを無理矢理繋げているとはいえ、アニメ用に後半部の伏線になるような要素を前半にさり気なく散りばめておく工夫程度は出来たはずです(命に関わる問題という点だけ共通していますが)。
 
 それに、前半はクリフハンガーで引っ張っていくタイプの見やすい作りで特に説明はいらないものの、中盤以降は軽いミステリーのような作り方で、原作を読んでいないと一体この話がどこに向かうのか進行方向が掴めず、前半に比べると初見は非常に退屈でした。
 
 オチが分かると遡ってこれまで退屈だった箇所の評価が上がる作りなものの、いくらなんでもオチの衝撃的な内容にやや頼り過ぎです。
 
 オチまで辿り着く前に何かオチの印象を強化する様な精神的な土台作りをするわけでもなく、ただどこに向かっているのか目的地が分からない話に延々付きあわされ我慢を強いられるという作りは苦痛でした。
 
 ただ、ラストに待ち受けている重くシリアスな展開は前シリーズに感じた命を扱っているわりに作風が軽かった印象を払拭し、ソードアート・オンラインというシリーズの捉え方を良い意味で変化させてくれました。
 

見た目は派手だが中身が空回り気味なアクション作画

 
 全体的に作画レベルは安定しており、特に不満はありません。しかし、作画的に力が入る箇所がところどころ物語的な盛り上がりと一致しておらず、違和感を覚えました。
 
 本筋の話と関係ない戦闘シーンで突然キャラが動きまくるなど、もはや作り手のとりあえず一定間隔で見栄えのいいアクションシーンを挟んでおけばいいという、やっつけ感すら漂ってくるような雑さが気になります。
 
 前シリーズと違い、デスガン関連の戦闘以外はゲーム内で死ぬと現実でも死んでしまうという緊張感が存在しないため、どうしてもただオンラインゲーム上で対人戦やモンスターと戦うシーンを凄い作画で見せられても、作画の力の入り様ほどには前のめりの姿勢で力んでしまうこともありません。
 
 全体的にドラマシーンよりもアクションシーンに作画が偏重しすぎなきらいがあり、そのせいで大して深まらないドラマの中でアクションシーンだけ異常に動きまくるというアンバランスさが生じてしまっています。
 
 せっかく魅力的なアクションシーンを描いてもそれが効率よく緊張や興奮、楽しさに変換されず、大部分の作画エネルギーがロスしてしまっており、勿体ないなと感じました。
 
 ただ、ユウキ関連のアクション(特にOPアニメーション)は、オチが分かるとあれだけ誰よりも軽やかに動けていたことに深く重い意味が帯びるため、アクション作画が良くできていればいるほど逆に切なさが増すという、アクション作画レベルの高さを利用した演出にもなっており、ここは非常に感心させられました。
 

最後に

 
 細かい不満が無数にあり、とても手放しでは褒められない内容です。
 
 それでも、前シリーズ同様、自然に飛び交う耳に心地よいゲーム用語や、ゲーム内設定をアニメ(映像)にトレースする際のアプローチの細やかさなど、ゲーム好きには魅力的な要素がふんだんに盛り込まれており楽しめました。
 
 そして、なによりも作り手側がきちんと脱ハーレム意識で作っているため、嬉しいというよりも、ようやくまともな作りになってほっとしたというのが素直な感想です。
 

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