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【PSP】呪われている割に影の薄い天神小学校 |『コープスパーティー -ブラッドカバー リピーティッドフィアー-』| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:60/100
作品情報
ジャンル ホラーアドベンチャー
発売日(日本国内) 2010年8月12日
開発(デベロッパー) 5pb.Games
開発国 日本

ゲームの概要

 
この作品は、RPGツクール用に作られた同人ゲームをPSP用にリメイクしたホラーアドベンチャーゲームです。
 
元の同人ゲームがRPGツクールで作られている都合上、昔の2DドットRPGのような移動スタイルで廃校となった小学校を探索する変わったゲームとなっています。
 
映画『呪怨』や漫画『漂流教室』といった過去の傑作ホラー作品のエッセンスが垣間見え、ホラーとしてセンスの良さを感じる部分は多々あります。
 
しかし、システム面はスーファミ止まりで、お世辞にも完成度は高くありません。
 
決して悪い作品ではないですが、学校内を探索するアドベンチャーパートが足を引っ張り、一本の作品としてはパッとしませんでした。
 

あらすじ

 
凄惨な児童殺害事件が起こり廃校となった天神小学校。その跡地に建てられた如月学園の高等部2年の生徒達は、転校するクラスメイトの送別会も兼ね、文化祭終わりの校舎で怪談話に興じていた。
 
オカルト好きの委員長の提案でバラバラになっても皆また一緒になれるという“幸せのサチコさん”のおまじないを試したその瞬間、辺りは廃校になり取り壊されたはずの天神小学校の教室へと変貌していた。
 

怪談と見せかけ、血みどろスプラッターホラー

 

本作は、小学校が舞台とか子供の幽霊が登場するなど、設定だけ聞くと一見静的な演出を得意とするJホラーのように見えますが、中身はグロテスクなゴア表現メインでイメージと大きくかけ離れています。
 
空間的に歪んだ小学校という舞台設定や、人間が狂気に犯され発狂していくという展開は漫画の『漂流教室』的で、チャプターごとに時系列が微妙に捻れているというのは『呪怨』シリーズを連想させます。
 
全体的に、過去の傑作ホラー作品群から影響を受けているであろう部分は概ねエッセンスをうまく取り出せており、センスが良いなと感じさせる部分は多々ありました。
 
特にチャプターごとに時系列を微妙に前後させることで前のチャプターと次のチャプターで違和感を発生させる『呪怨』が得意とする巧みなストーリーテリングは本家にも引けを取りません。
 
この部分が良くできていることもあり、もっと時系列を前後させ、時間の流れを歪ませるシチュエーションをメインにしてくれたら良かったのにと思うほどです。
 
それに、音響が非常に重要となるホラー作品らしく、一部のセリフがバイノーラル録音であることはプラスでした。腐乱死体に近づくと汚らしいハエの羽音が聞こえたり、グロさを際立たせる良い意味で不快なSE(効果音)が多かったりと、全体的に音作りのセンスは良く雰囲気作りに一役買っています(ただ、一部のBGMに怖さを削ぐような変なものも混じっていました)。
 
しかし、どうしてもホラーというジャンル的に何か新しい試みがされているのかというと微妙なところです。被害者の子供の幽霊やらグロテスクな暴力やらというありきたりさで、過去のホラー作品のいいとこどりが目立ち本作独自の突き抜けた魅力はありません。
 

影が薄すぎる天神小学校・・・・・・

 

ホラーゲームとして一番問題だと思うのは、天神小学校という惨劇の舞台がキャラクターとしていまいち浮き上がってこないことです。
 
ディテールの掘り下げ不足や、ミステリーとしてのカタルシスの弱さのせいで、最初から最後まであまり学校への印象が変化せずやや淡白でした。
 
元が同じ同人ホラーゲームということで『ひぐらしのなく頃に』の雛見沢村ひなみざわむらなどと比べると一目瞭然で、向こうはプレイヤーの雛見沢村ひなみざわむら認識を二転三転させることで舞台そのものに対する印象を固定化させず常に変化の連続で緊張感が持続しますが、こちらは最初に抱いた呪われた小学校という印象からほとんどブレずそのまま終わるため記憶に深く刻まれません。
 
基本となる設定部分は何の問題もないので、もう少しプレイヤーの天神小学校への印象を二転三転させる工夫を施さないと、どうしても場所に対して特別な思い入れが生じません。
 

プレイヤーもスーファミ時代に逆戻り

 

システム周りはRPGツクールで作った元の同人版をそのままベースにしてしまっているため非常に時代錯誤的な古さで、プレイ中一体いつの時代のゲームをやっているのか混乱して軽く目眩を覚えるほどでした。
 
グラフィックがレトロなのはまだ味もありますが、会話がダラダラ長くゲームとしてのテンポが最悪で、かつスキップ機能がないためバッドエンドの度に長ったらしい死に様を延々見続けなければならず辟易させられます。
 
グラフィックのしょぼさだけでなく、ゲーム性としてもスーファミで出来る程度の範囲のことしか出来ないため、システム的には一つも満足できませんでした。
 
そもそも、タイトルからもっと複数のキャラクターをスイッチさせながら謎を解いていくという本格的な謎解きアドベンチャーを予想していました。しかし、中身を開けてみると先に進むキッカケはほとんどがプレイヤーの推理ではなく意味がよく分からないご都合主義展開(なぜか先程調べて何もなかったところにアイテムが不自然に落ちている、勝手に扉がイベント的に開く、など)で、本当に期待外れです。
 
謎解きをあまりさせて貰えず、ひたすらイベントだけで物語が進行するのでゲームをプレイしているという充実感が味わえず、アドベンチャーゲームとしての手応えは希薄です。
 

プレイヤーを無視するゲーム


全編通して気になるのは、操作キャラクターとプレイヤーの認識を一致させないことです。
 
キャラクターがプレイヤーの存在をほぼ無視し、勝手に喋り、勝手に怖がり、勝手に喧嘩し、勝手に話が進むため、プレイヤーがこの世界に入り込む隙間がほぼ皆無で物語にまったくのめり込めませんでした。
 
その結果、自分が天神小学校を生き延びたというよりも、ただ生き延びた人々を遠目で観察した程度の余韻しか残らず達成感はほぼありません。
 

最後に

 
ホラー演出のセンスは十分ですが、ストーリーは突き抜けず、システム的にも魅力が皆無と、ホラーアドベンチャーゲームとしては満足度は低めです。
 
 
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