トレーラー
評価:80/100
ジャンル | ダンジョンアクションRPG+SLG |
発売日(日本国内) | 2002年11月28日 |
開発(デベロッパー) | レベルファイブ |
開発国 | 日本 |
ゲームの概要
この作品は、アクションRPGとジオラマで街を再生するSLG要素をハイブリッドしたゲーム『ダーククラウド』の続編です。
前作と同じアクションRPGパートとSLGパートを交互に繰り返すハイブリッド型の作りは踏襲されており、双方とも一定の進化を遂げ面白さが飛躍的に向上しました。
前作から引き続き武器強化の楽しさが尋常ではなく、ジオラマRPGの皮を被った武器強化RPGと言っても過言ではないほどの中毒性です。
そして、本作最大の特徴は目が回るほどのやり込み要素の物量で、軽く100時間以上は遊べるボリュームがあります。
あらすじ
舞台は、グリフォン大帝と呼ばれる謎の存在により物事の起源を消失させられ、歴史が書き換えられてしまった世界。
特別な力を秘めたアトラミリアという石に選ばれた少年ユリスと、同じく石に選ばれ未来からやってきた少女モニカは、グリフォン大帝によってねじ曲げられた歴史を元に戻すため、世界と歴史の再生の旅に出る。
押し潰されそうなほどのやり込み要素
本作最大の特徴と言っても過言ではないのが、最近のオープンワールド型のゲームか、それ以上のボリュームのやり込み要素です。
それも、一時たりともプレイヤーに惰性でプレイさせる隙を与えないようやり込み要素が相互作用するように設計されており、凄まじい密度となっています。
経験値による武器の成長やアイテムを合成する武器強化。ライドポッド(乗り物)の強化。アイテムの発明や、発明と絡めたスクープ写真撮影。ジオラマ作りや、拠点であるパームブリンクスの住人を新天地へ移住させるための勧誘、その他各種ミニゲームと、時には本編に関係し、時には独立しています。
そのため前作の『ダーククラウド』のようなイベントを先に進めるためにジオラマパートを無理矢理やらされているといった強制感はかなり薄れました。
もはや本編よりもやり込み要素のほうが力が入っているのではないかと見紛うほどで、これほどまでに隙間をやり込みで埋め尽くされると、それはそれで圧倒されます。
その結果プレイ時間は膨大な量となり、クリアまで最短でも30時間オーバーほどで、やり込もうと思えば楽勝で100時間オーバーはいけます。
自分の場合はそれほど一本のゲームを込むタイプでもないのにプレイ時間が110時間を超えました。
相変わらず中毒性の強い武器強化
前作と同じでキャラにレベルはなく、敵を倒すと武器が成長していくという武器強化がメインの成長システムです。
前作では武器レベルが上昇する際にスロットに装備していたアタッチメントを吸収し、武器強化分にプラスしてアタッチメント分のステータスも上昇するというシステムでした。
それが、今作は手持ちの武器やアイテムをスペクトルという物質?に変換し、それを武器に直接合成するという仕組みに変化しました。これは前作ではレベルアップ時だけだったアタッチメント吸収の快感を何回も小分けにして味わえるように改良したもので、その中毒性は半端ではありません。
武器はレベルが上がると合成ポイントが加算され、その合成ポイントを消費しスペクトルを武器に合成し、武器を強化していきます(ポイントが5あれば、5回スペクトルを合成し強化できる)。
武器もレベル5まで強化するとスペクトル化できるようになり、前作のステータスブレイク同様に強化した古い武器の強化分を新しい武器に持ち越すことが可能です。
前作では武器は次から次に交換していく使い捨てタイプでしたが、今作はビルドアップといって武器のステータスを一定まで上げると新しい武器に進化させられる仕様になり、えげつないほど中毒性が上がりました。
ポケモンが進化するとステータスが一気に上昇し強くなったのが実感でき、しかも見た目の変化も楽しめるといったイメージですね
それに、ビルドアップするのに不足しているステータスは赤く点滅表示されるため、足りない能力が一目で分かり、よりどこを強化していけばいいか武器強化プランが可視化されるようになり、便利さも格段に上昇しました。
前作のアタッチメント吸収だけでも武器が強くなっていく実感が得られ充分楽しかったのに、今作は度を越したほどの中毒性で、もはやこれだけ弄っていればジオラマはどうでもいいような気分になるほどの面白さに進化しています。この武器強化の楽しさが味わえるだけでもこの作品に価値があると思えるほどです。
ダンジョンアクションRPGパート
バトル部分の問題は、今作から追加されたライドポッドという男主人公のユリスが乗り込むロボットが序盤から終盤までやたら強力な点です。
そのせいでライドポッドだけ使っていればダンジョンをクリアできてしまい、これのせいで楽なのが、
ライドポッドで戦う > 強化した武器で戦う
となってしまい、せっかくの超絶面白い武器強化要素が陰ってしまっています。
ライドポッドが悪いというワケではありませんが、もう少し弱体化させて強化した武器に華を持たせるようなバランスのほうが、この良くできた武器強化システムの本領を発揮できたと思います。
武器のカスタムの仕方が分からないプレイヤーに対する救済措置的な意味合いもあるのでしょうが、それがバランスが崩れる要因になったのでは元も子もありません。
『ダーククラウド』に比べ、欠点であったカメラ操作が酷いとか、遠距離武器が強すぎるといった不満は解消されました。しかし、アクション部分だけを取って楽しいかと言われれば微妙で、武器強化などとセットになって初めて遊べるといった感じです。
他にも、ダンジョンパートには問題が多数あります。
今作は街・ダンジョン・ムービー部分問わず、あらゆる場面でテンポの悪さに悩まされ、特にダンジョン部分が深刻でした。
前作ではドランの羽根というダンジョンを高速移動できるアイテムがあり、そのおかげである程度スイスイとダンジョン内を移動できましたが、今作はそれにあたるアイテムがありません(後半ライドポッドの移動がやや高速になる程度)。
そのため、だだっ広いダンジョンを延々と歩かされる羽目になり、ストレスがむしろ増えました。
キャラクターにダッシュ機能のようなものを持たせるか、もしくはダンジョンをもっと狭く作るかしないと、何もしない直線の移動時間が長すぎてただ単に苦痛です。自分の場合は、プレイ中移動時間が長すぎてダンジョン内で眠気に悩まされることがしばしばありました。
大進歩したものの、まだまだ発展の余地があるジオラマパート
ジオラマパートは、前作にあった街の人のリクエストを聞き、パズル的にジオラマを設置していくという部分を拡張したような出来となり、前作に比べると自由度、達成感は大幅に強化されています。
しかし、楽しいは楽しいものの、どうしてもダンジョンRPGパートと比べるとオマケ的な領域を出ず、ジオラマパートだけで一本のゲームとして成立するほど作り込んでいないのは相変わらずです。
未来で消えてしまった建物を復活させるという目的のため、やはり指示されたような物を設置していくだけのイベント的な要素が濃いめです。
イベント的なシステムだとしたら今度はもっと推理要素を入れ、何が必要なのかプレイヤーに考えさせたほうがより達成感があったと思います。
前作同様、またしても強制イベント的な部分と、自由にジオラマを作れるという基本コンセプト部分がうまく噛み合っていません。
ダーククラウド同様、相変わらずお粗末なシナリオ
本作のストーリーは、現在と未来で歴史の繋がりが断たれると、どのような影響が未来に生じるのかという興味的なアプローチをしているものの、いかんせんタイムスリップものとしての最低限のルールを守っておらず非常に不満が残る出来でした。
例えば未来で消滅したはずの建物や人物の記憶が平気で未来の人間に残っているため、過去を改変されることの恐怖がまったく表現できていません。歴史を修正され、未来を変えられたのだとしたら、その未来が改変されたものであるという記憶すらも抹消されないと無意味です。
それと、本作は全ての事件が解決した後に主人公が書いている手紙による回想という形で物語が語られますが、これもいまいちしっくりきません。
ラストで世界を救った後、正常な時間の流れに戻ったら、モニカや母のこと、冒険のことも全て忘れてしまうため、冒険の記録を手紙に書き残し、それがこのゲームそのものだったという体にしたほうが自分的には好みでした。
そもそも、過去の回想という形なのに、それがまったくクリフハンガーとして機能もしていないため、ただ単に回想しているだけに過ぎず、回想という手法そのものが目的化しただけの無意味な語りでしかありません。
これならプレイヤーがそのエピソードで受ける印象と、真相をすでに知っているユリスの視点から語られる感想が微妙に食い違っているなどの工夫が必須でした。例えばグリフォン大帝がプレイヤーから見たら極悪な存在に見えているのに、回想でユリスが語るグリフォン大帝像がプレイヤーの印象と異なる、など。
そのようなちょっとした工夫を盛り込むだけでも大分印象が向上したはずなのに、現状はただなんとなくの雰囲気だけで特に優れているとも思えませんでした。
最後に
クリアまで(ほとんど寄り道しなければ)約30時間ほど。
武器強化要素やジオラマ作成など、あらゆる点が前作より進化しており、前作のコンセプトに惹かれるものがあれば確実に楽しめるボリューミーな作品に仕上がっています。
ただ、ダンジョンを高速移動できるドランの羽根や、アイテム預かり所など、前作には普通にあった便利な機能が消えてしまったことは地味にキツかったです。
前作
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