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西尾維新とシャフト、奇跡の化学反応 [アニメ]『化物語』 〈感想・レビュー〉

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PV

評価:85/100

作品情報
放送期間
web配信
2009年7月~9月
2009年11月~2010年6月
話数 全15話
アニメ制作会社 シャフト

短評

 
 セリフまみれで癖のある西尾維新原作小説の作風を、シャフトの多様な引き出しによって見事に活かし切った傑作。
 

シュールレアリスム系メンヘラヒロイン心理療法アニメ

 
 本作のストーリーはさして目新しさもない、常識では説明できない超常現象のような症状に悩まされるヒロイン達が、主人公との会話によって心を開き、ヒロインに取り憑いた妖怪や神の類である怪異(かいい)という存在の正体を突き止め、お祓いしていくという内容です。
 
 この怪異という存在が取り憑いた経緯、ないしは怪異の正体が、ヒロインの心と密接に絡むミステリーになっています。
 

ギャルゲーで例えると、『トゥハート』の琴音ルートや、『Kanon(カノン)』の舞ルートのような感じですね

 
 見始めた時は、あまりの会話の長さと一向に話が前に進まない停滞感に辟易しました。ただ、この会話そのものが悩みを抱えるヒロイン達の心を解きほぐすカウンセリングの一環なのだと気づくとさほど気にならなくなります(それでもいくらなんでも長すぎ)。
 
 ただ、謎解きの快感よりも、会話によるヒロインとの心の触れあいのほうに力が入っているせいで、怪異の正体が判明してもミステリーとしてのカタルシスはありませんでした。
 
 全体的に、もう少しミステリーとしての手順を最低限踏んで欲しかったという不満が残ります。会話の内容に意味がなさすぎて苦痛に感じる箇所が多々あり、この苦痛をラストの謎解きで一気に報いてくれたら満足度が数段上がりました。
 

剥き出しの記号が意味するものは?

 
 このアニメは作品そのものが創作物であることを隠そうとしません。
 
 カットが変わる度にカットの切れ目を示す静止画が挿入され、時には登場人物の感情すら文字で起こされ、挙げ句の果てにはキャラクターが自分の声は声優が声をあてているのだということまで暴露し出す始末。
 
 長い長い長尺の会話劇を誤魔化そうとする目くらましにも見えますが、同時に見た目は可愛いのに一癖も二癖もある複雑なヒロインの精神の反映にも見えます。
 
 この『化物語』という作品自体、一見美少女アニメ然としたキャラデザでそのような一面もあるとは言え、しかし端整な外見とは裏腹に中身は前衛的な記号が剥き出しで非常に攻性な作り。それゆえ、外殻は美少女アニメなのに中身はジャンルアニメのそれとは一線を画するという歪なバランスの作品となっており、それはそのまま見た目は可愛いのに、実際は何を考えているのか分からないというヒロイン達の心の有り様と重なります。
 
 最初は優しそうだったキャラが途中から態度を豹変させ本性を現すといった脚本的な二面性の表現はよく見かけますが、美少女アニメ的なデザインの第一印象を、記号剥き出しの演出で当初作品に抱いた印象ごとねじ曲げるという、演出を用いた二面性表現アプローチには驚かされました。
 

最後に

 
 本編のほとんどが会話シーンという会話アニメのため、タランティーノ監督映画でも会話シーンが極端に肌に合わない自分のような人間には苦痛が伴う瞬間も多々ありました。
 
 そもそも、自分は西尾維新作品のような、まともに調査・取材もせず言葉遊びと勢いだけで書かれたような小説が大嫌いです。
 
 ただ、そのようなマイナススタートでも、他に味わったことのないメンヘラヒロインを描くアニメがメンヘラ的アプローチという斬新で刺激的な映像体験が味わえる本作は大傑作だと思います。
 
 
 
 
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