エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[アニメ・レビュー]僕だけがいない街 〈感想・評価〉

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予告編 PV


評価:80/100

 

作品情報
放送期間
2016年1月~3月
話数
全12話
アニメ制作会社
A-1 Pictures

 

 

あらすじ

 
  うだつの上がらない漫画家である藤沼悟(ふじぬまさとる)は、ある特殊な能力に悩まされていた。それはリバイバル(再上映)という周囲で事件が起こる予兆を察知すると事件発生前に強制的にタイムリープされてしまう面倒な能力で、これにより巻き込まれたくない他人の事件に首を突っ込んでしまう人生を送っていた。
 
 ある日、と買い物をしている折、またリバイバルが発生。母にも周囲の警戒を依頼すると、なぜかいつもと違い悟の知らぬ間に事件は回避される……が、今度はその直後、母が何者かに殺され、悟が犯人に仕立て上げられてしまう。母は一体何を目撃し、なぜ殺されてしまったのか? その謎は悟が子供時代に発生したある児童連続殺害事件と繋がっていた。
 
 惨劇を回避するため、リバイバル(再上映)によって悟は全ての事件の起源である昭和63年(1988年)にタイムリープする……。
 

脱ノスタルジーに徹している好感が持てる昭和表現

 
 昭和にタイムリープする話と聞いて最初に連想したのは昭和ノスタルジー描写の数々を見せられ、大人帝国っぷりにうんざりしている光景でしたが、この作品はそんな下品なことはせず、それどころか必要最低限の時代説明すら省き、逆に昭和感すら薄いという問題を引き起こすほどアンチノスタルジーが徹底しています。
 
 ノスタルジーという、あらゆる美味しさを殺し尽くす危険性も孕む劇薬香辛料を捨て、丁寧な調理法だけで昭和を描いてみせる作り手のスタンスに感服させられました。
 
 現代の季節を夏に、惨劇が起こる過去を冬に設定することで、自然と色の彩度を落とし、冬らしい落ち着いた色合いに。このカラーデザインのおかげで過去であるということを脚本レベルではなく、画面の色味だけで判断することすらできる丁寧な時代演出になっています。
 
 過去に戻ると画面のアスペクト比がシネスコサイズになりますが、このカラーデザインだけで現代と過去を自然と判断出来るため、少し過去を示す演出が過剰かとも思えますが、テーマ的に映画というモチーフが重要なためシネスコサイズであることもマイナスには働いていません。
 

物語という主役に華を持たせる堅実な映像演出

 
 さらに、過去になると途端にコンテによる視点の位置が下がります。現在は背の大きい主人公から見た世界で、視点が高めですが、過去になると今度は子供の目から見た世界を視点の高さで再現するため、非常に子供視点ということへの没入度が上がる工夫がされています。
 
 実写で言うとカメラの位置をローアングル気味に下げることで常に世界を仰ぎ見ているような感覚。子供の視点から世界を見ると、巨大な建物や背の大きい大人に見下ろされ圧迫されるような息苦しさを覚え、それがそのまま大人に抑圧されているヒロインの心情とも重なり、好ましい演出効果を生んでいます。
 
 その他にも、アニメ的な映像のけれん味をほぼ捨て、実写的な堅実な絵作りにこだわることで非常にドラマが見やすく、原作の話の面白さをアニメーションという表現手法が邪魔せず、むしろ引き立てアシストするようなアプローチに徹していたりと、作り手の創意工夫ぶりに頭が下がるばかりです。
 

最後に

 
 サスペンスアニメだけに事件の真相が明らかになると途端に物語的な興味が霧散してしまう類のものではありますが、それでもクリフハンガーで引っ張るアメリカドラマ的な興奮が味わえます。
 
 予算規模が桁違いなのに良質なアメリカドラマ並みの映像パフォーマンスを発揮できていること自体が奇跡のよう。サスペンスアニメとしては大傑作。
 

 

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