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評価:70/100
ジャンル | アクションRPG |
発売日(日本国内) | 2005年3月10日(PS2版) |
開発(デベロッパー) | 日本ファルコム |
開発国 | 日本 |
ゲームの概要
この作品は、冒険家アドルを主役とするアクションRPG『イース』シリーズの6作目です。
6は大渦内に存在する未開の地カナンが冒険の舞台で、カナンの地に封印された先史文明エルディーンの遺産である“ナピシュテムの匣”の謎に挑みます。
ゲーム部分の最大の特徴は、三本のエメラス剣(魔法剣)を戦闘中に切り替えながら戦うというシステムです。
ただ、基本は古典的とも言えるほどオーソドックスなアクションRPGスタイルなため安心して遊べる反面、革新性はありません。
全体的に、スケールがありそうなのに盛り上がらないストーリーや、複数のエメラス剣(魔法剣)を切り替えながら戦うバトルもイマイチと、突き抜けた魅力は乏しく、良くも悪くも普通のアクションRPGといった完成度でした。
あらすじ
冒険家アドルは、船での航海中に巨大で荒々しいカナンの大渦に飲まれ、大渦内に存在するカナン諸島に漂着した。
アドルは未開の地カナンを冒険する過程であらゆる文明の祖である先史文明エルディーンと、かつてエルディーンに存在した翼を持つ神々である有翼人たちの存在を知る。
有翼人が造り上げ、カナンの地に封印したとされるナピシュテムの匣 の秘密とは・・・。
設定の面白さを生かし切れない薄味のシナリオ

今作は、大渦に囲まれ容易に侵入できない謎多き未開の地カナン諸島という舞台設定や、先住民であるレダ族が暮らす集落と、大渦に飲まれ漂流して流れ着いた外来の者たちが築いた街の間にやや険悪なムードが流れているなど、基本の設定部分は惹かれるものが多くあります。
にもかかわらず、用意した素材をうまく料理できておらず盛り上がりに欠けます。
レダ族側と漂流者側のそれぞれの主張の食い違いや、文化的なバックグラウンドの差異などを際立たせるように作られておらず、何となく見た目が違うものの同じような物の考え方をしている者同士にしか見えませんでした。
レダ族側が信仰するアルマに対して漂流者側が無理解といった、価値観が摩擦する描写を入れることで緊張感を持たせるなどの工夫もなく、ここは物足りませんでした。
このゲームは、村人などモブキャラが全員フルボイスという国産RPGにしては破格な豪華さで、もう少しこの全キャラフルボイスであるという豪華さを利用したイベントを入れてくれれば評価も上がっていたと思います。
それにプリレンダムービーを多用し大スペクタクルを演出しようとしていますが、かつて存在したエルディーンという古代文明は説明不足で、しかもナピシュテムの匣を狙うエルンストという敵が終盤唐突に登場するなど、いくら何でもシナリオが雑すぎて、うまくスケールを出せていません。
全体的にカタルシスに必要な丁寧な設定・描写の積み重ねが足りず、起こっている出来事は派手な割に受ける印象は軽いという問題が生じています。
致命的なエメラス剣

本作のアクションゲームとしての問題は、本来なら売りになるはずの三本のエメラス剣(魔法剣)を戦闘中に切り替えながら戦うというシステムがほとんど機能していないことです。
まず、三本の剣にさほど違いがないため、戦闘中に武器を切り替える必要性をあまり感じません。
斬撃モーションに多少の違いがあるのと、剣技というその剣固有の技(連続攻撃回数が多い・溜め攻撃ができる、など)が設定されている程度で、ハッキリ言ってどの武器を使ってもほぼ同じ程度の感触です。
それぞれの剣が風・炎・雷の魔法を使うため、属性のようなものが設定されているのかと思いきや、特に存在せず敵に応じてエメラス剣を使い分ける必要がそもそもありません。
これはエメラス剣を強化していくという武器の成長要素を採用しているため、プレイの仕方によっては三本の剣に威力の差がついてしまい、弱いエメラス剣を使っても効果的なダメージを与えられないという状況が起こらないようにする配慮だと思います。
そのせいで剣によってダメージが与えられない敵、極端に相性が存在する敵などがおらず、どの剣を使っても同じように倒せてしまい、プレイヤー側にどのように剣を使い分けるか考える余地(相手の弱点をつくという快感)がありません。
剣を強化するといっても、結局細かいパラメータや能力を弄れるワケでもなく、ただ単に均等にレベルアップさせていくだけです。
プレイヤー側に武器強化プランを自由に考える余地がない武器強化に面白味があるはずもなく、ただ強化に必要なエメル石が溜まったら強化して貰うという機械的な作業をくり返すのみで、システムとして深みはありません。
レベルデザインは◎ ジャンプ周りの操作性×
『イース』シリーズだけにレベルデザインは秀逸です。
例えば、弱い敵の中に強い敵が混じって一撃死させられるとか、平気で強い敵がいるエリアが隣接し、そこに迷い込んだら一撃死と、気を抜いているとあっさりゲームオーバーになる緊張感の作り方は堂に入っています。
個人的に集中してプレイしている場合は問題ないものの、気を抜き注意散漫になるとあっさりゲームオーバーになるというバランス設定が一番好みなので、この調整はしっくりきました。
フロム・ソフトウェアのゲームのようにマジメにやっていてもゲームオーバーさせられるまでいくと人を選ぶものの、イースのバランス設定の置き所は絶妙で、これを味わいたくてイースをやっていると言っても過言ではないほどです。
ただ、ジャンプを多用するアクション要素が強めなマップが多い割に、ジャンプボタンを押してもスムーズに入力を受け付けず落下するというケースが多発し、ここはストレスでした。
通常時には問題ないのに、なぜかギリジャン(端っこギリギリでジャンプ)する時だけうまくジャンプできなくなるため、嫌がらせみたいで不快です。
しかも、普通のジャンプすらうまくいかないのに、やや遠い位置にある宝箱を回収するのに必要なダッシュ斬りジャンプというテクニックが面倒で、延々宝箱を前にして落下し続けるという拷問のようなマップにコントローラを投げつけたくなる瞬間が多々ありました。
不満あれこれ

本作はややレベル依存なバランス調整がされており、最初は強かった敵がレベルを上げただけで簡単に雑魚化してしまうほど極端です。
成長の快楽とアクションゲームとしてのバランスのどちらをどれくらいの比重で配分するのがベストなのかという点は好みが別れるものの、今作はやや成長要素(RPG要素)に偏り過ぎでアクションはないがしろに感じます。
次に、どうしても看過できない不満はメニュー画面を開く際のロードの長さです。
ロードの長さはどんな傑作でも駄作に変えてしまうほど強力なマイナス要因ですが、本作もメニュー画面を開く際に一瞬待たされる苦痛が徐々に蓄積されメニュー画面を開くのが段々と億劫になってきます。
アクセサリーの変更や、アイテムの使用、スロットに装備するアイテムの変更など、メニュー画面を開く頻度が高いため、この部分はかなりのストレス源でした。
最後に
設定の面白さの割にほぼ盛り上がらないストーリーや、斬新さが皆無なゲーム部分と、よくある無難なアクションRPGといった出来です。
ただ、オーソドックスなアクションRPGとしてのポテンシャルは十分に備えており、プレイしていて退屈ということは絶対にありません。
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