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[映画・レビュー]ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ 〈感想・評価〉

 

トレーラー

 
評価:85/100
 

短評

 
 楽しい・分かりやすい・勉強になる(考えさせられる)、とバランス良く三拍子揃った非常に良質な伝記映画。尖った表現への挑戦などが無い分ややあっさり気味という不満はあるものの、それ以外は欠点らしい欠点もなく安心して見られ、一定の満足をほぼ確実に得られる極めて健全な作品。
 
 

レイ・クロックことパルパティーンにより、マクドナルドという名の銀河共和国が乗っ取られ帝国化するようなお話

 
 本作と似たような映画を挙げると、アビエイターソーシャル・ネットワーク(後は、スティーブ・ジョブズ関連の映画)で、やや似ている程度だとマネーボールマネーショート 華麗なる大逆転など(とにかく、アーロン・ソーキンが脚本を書いている映画と、それに類するもの)。
 
 

 

  他人に認められたいと願う野心家の主人公が、やや乱暴な手法で成功していくものの、成功と引き換えに人として大切なものを徐々に失っていき、最後は巨万の富を得るものの切ない余韻が残る、というやや苦い後味のフォーマットを持つ作品群の中の一作です。
 
 ジョン・リー・ハンコック監督作品は初めて見ましたが、どことなくハリウッド黄金時代映画すら彷彿とさせるほど無駄のない語り口と、絶対に映画的な間を外さないリズム感に惚れ惚れしました。
 
 印象的なのが映画全体が何よりも教訓が詰まった魅力ある物語をテキパキ語ることを優先し、これ見よがしな演出テクニックのひけらかしがない点(その分やや映像的に退屈に感じる部分も無くはない)。まるで難解な漢字に片っ端からふりがなが振られ、分かり辛い部分には注釈と挿絵が付けられた本のように、序盤から物語理解に必要な情報を過不足なく提示し、誰も物語に置いてきぼりを食わないよう丁寧な配慮がなされています。
 
 優れた映画によくありがちな、映画内のモチーフと、映画から受ける手触りが似るという現象が、そのまま本作にも当てはまり、この映画自体がお客さんを喜ばせることだけを考える劇中のマクドナルド兄弟のハンバーガー店へのこだわりそのもののように、見る者を楽しませることを優先して作られているため、シンプルで非常に内容を咀嚼しやすいです。
 
 ただ見やすいだけで何も残らないかと言うとそんなこともなく、結果的にマクドナルドを乗っ取ることとなる、現実にはどこをどう見ても悪人でしかない主人公を必ずしも絶対悪としては描かないスタンスも好感が持てました(実際、映画を見ていると何か新しいことをやろうとする主人公の足を引っ張り続けるマクドナルド兄弟のほうにイライラする場面が多かった)。小さい幸せだけで満足し、もっと高い目標があるのに躊躇して重い腰を上げない職人気質で慎重なマクドナルド兄弟と、どんなに汚くても己の野望に素直で、ひたすら前進し続けるビジネスマン気質で大胆な主人公を対比させることで、どちらの姿勢にも一定の理解を示すような賢明なスタンスで描かれ、観終わった後も色々と考えさせられます。
 
 特に、主人公のレイ・クロックは、他人に認められたいという強い動機を原動力としているという描写がちょくちょくされるため、仮面ライダーオーズのテーマとも似たような、人の欲望(野心)というのはそれ自体は清潔なものでなくとも、何か大きなこと(夢と言い換えてもいい)を成し遂げる際には燃料として必要にもなるというメッセージにも見え、職人的な閉じた自己満足に警鐘を鳴らしているようにも感じました。
 
 自分はどちらかと言うと、可能性があるのに挑戦しないマクドナルド兄弟より、世界を変え得るかもしれない斬新で優れたシステムをローカルで終わらせるなんて勿体ない、これで世界を変えてやらないと気が済まないという主人公のほうに感情移入してしまったので、最後はマクドナルド兄弟に申し訳ない気分になりました。
 
 ですが、現実はさておき、レイ・クロックはハウス・オブ・カードのフランク・アンダーウッドであり、ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのダニエル・プレインビューであり、ナイトクローラーのルイス・ブルームでもある(後、スティーブ・ジョブズ感もある)ので、こと映画内の存在感や魅力でただの優等生でしかないマクドナルド兄弟に勝ち目はないなぁと妙に納得もしてしまいます。
 
 

最後に

 
 本作一発で非常に優れた手腕を持つジョン・リー・ハンコック監督のファンになってしまいました。
 
 映像表現がやや物足りないという以外は、これと言って文句の付け所のない、伝記映画として一級の完成度の素晴らしい作品。
 
 

 

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