エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[ドラマ・レビュー]ブラックリスト シーズン1 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:75/100

イントロダクション

 
 全22話。
 
 元アメリカ海軍のエリートでありながら謎の失踪後アメリカを裏切り、世界を股に掛ける犯罪のコンシェルジェとして名を馳せたレイモンド・レディントン(通称レッド)。そんな裏社会のあらゆる犯罪情報に精通するレッドがある日突然FBIに出頭。アメリカ政府ですらその存在を把握していない世界的大物犯罪者の名簿……ブラックリストを提供するのに、自分とFBIの窓口としてなぜか新米プロファイラーであるエリザベスを指名。
 
 これまでずっとCIAやFBIに命を狙われ続けながら難なく逃げ延びてきたレッドがなぜ自らFBIに出頭するという奇怪な行動を取ったのか? なぜ何の実績もないエリザベスを指名し肩入れしたがるのか? FBIの新米捜査官であるエリザベスが世界的大物犯罪者であるレッドと時には衝突し時には協力し合うという奇妙な関係を通じて、その謎が徐々に明らかになっていく(シーズン1内では核の部分は不明なまま終わる)。
 
 基本はレッドの提供するブラックリストの犯罪者(ブラックリストと一切関係ない犯罪者の回もある)を捕まえる一話完結型の短期ドラマを主軸としながらも、序盤で提示される謎をひたすら引っ張り続ける長期的な構成がそれを束ねる、というサスペンスが短期・長期の二重な作り。
 
 一話完結型の見やすさと長期的に引っ張り続ける中毒性という二兎を捕らえようと欲張った結果、一話完結型のドラマのほうが尺を奪われ非常に淡泊で薄味になってしまうという弊害が生じている。
 

脚本が薄めな攻殻機動隊S.A.C.(スタンド・アローン・コンプレックス)のような出来

 
 本作は設定や各話のそれぞれのアイデア自体は非常に魅力的ですが、一話完結スタイルの各話の描き込みが浅すぎて、一見関連が無さそうなそれぞれの事件が実は裏で繋がっているのが分かりカタルシスに至る・・・・・・というワケには到底いかず、ただ毎回薄味の話が延々と続き、それらが裏で繋がっていようと大して驚きもありません。
 
 問題は多数あり、まずそもそもブラックリストの犯罪者がレッドと同格級のとんでもないバケモノとしてさほど強調されず、一部の犯罪者を除きほぼ一話であっさり片付いてしまう点。このせいでブラックリストというものの重要性がイマイチ体感で伝わってこないため、うまくスケール感を表現できていません。本来ならブラックリストの犯罪者は世界規模の影響力を持っている怪物で、それらよりさらに一枚上手のレッドの犯罪者としての格は半端ではない・・・・・・となるべきなのに、敵の小者感に引っ張られてレッドの印象も若干陰るという弊害すら出ているほど。序盤は犯人の動機がレッドの謎の行動の動機とリンクしているのかな?と匂わせる面白い見せ方なのにいつの間にかその構造が無くなってしまうのも問題。
 
 次にやたらド派手なアクションをウリにしたいのか、頻繁にカーチェイスやら銃撃戦やらが起こりますが、頭脳派の犯人の回なら知略で追い詰めるなど、もう少し犯罪者の得意分野を考慮した見せ場シーンの作りにしないとちぐはぐに感じます。一人一人が天才のはずの犯罪者がFBIの無粋な圧倒的物量に潰されるとジオン軍みたいで不憫です。レッドもハッタリや脅しなどの話術を得意とする、見せ場として映えるのはインドアなタイプなので、そもそもこのドラマ自体がアクションと相性が悪く、アクションシーンは総じて余計にしか見えません。派手な見せ場は犯行のスケール感を出す用途など最低限にとどめ、それよりは巧妙に姿を隠す犯人の居所を暴いていく捜査プロセスの丁寧な描写にこそ力を割いて欲しかったです。
 
 最後に、根本的な問題はクリフハンガー的に引っ張る謎部分を一話完結スタイルの話の途中に無遠慮にねじ込んでくること。一話というただでさえ限られた枠の中で、謎を匂わしたり、視聴者を混乱させるだけの描写に尺が奪われてしまう上に、追っている事件とはまったく関係ないエピソードが挿入されるせいで一つの事件に集中し辛いという致命的な欠陥があります。
 
 全体的に大きな謎で引っ張ろうとするあまりに、各話のそれぞれの事件にしわ寄せがきて、結局一つ一つの事件はディテールの描き込みが足りずこぢんまりとして見えるため、一話完結型のドラマとしては非常に薄味です。
 

サスペンスドラマとしては完璧に近いいくつかの導入部

 
 本編はやや薄味なものの、驚かされたのがいくつかの話の冒頭部分のサスペンスの作りの驚異的なうまさです。
 
 秀逸なのは4話・7話・8話・12話。特に7話と8話は本編へ興味を誘導するサスペンスドラマの導入の作りとしては100点に近いため、ここだけ何度も巻き戻して繰り返し見入ってしまいました。
 
 7話の静から動への巧みな反転や、8話の親子の温かみが宿るラグビーボールのゆるやかで優しい放物線を描く落下から一転して暴力が垂直に降ってくる縦の落下運動の繋ぎ方は見事としか言いようがありません。優しさが暴力によって蹂躙される様は官能的ですらあります。
 

最後に

 
 レッド(ジェームズ・スペイダー)の吹き替えの大塚芳忠さんの演技が24のジャック・バウアーの小山力也さん級のハマり役で素晴らしいとか、やはりあらゆる犯罪に精通している犯罪コンシェルジェがFBIと手を組んで同業者を潰していくというストーリーは魅力的だったりと、優れた点は多々あります。
 
 ただ、細部の作り込みがイマイチな脚本・こだわりが足りていない演出・効率よくテキパキ処理しただけのような味気ない撮影と作品の根幹の土台部分がどれも盤石と言える程の強度がないため、どこかがダメというよりかは全体的にパワー不足で物足りませんでした。
 

 

リズとレッド

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