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[レビュー]ヴァルキリープロファイル2 シルメリア  〈感想・評価〉

OPムービー

 
評価:75/100

短評

 
 一作目の美点はあらかた消え失せ、美術が凝っているのと、前作譲りのバトルやダンジョン探索の楽しさがウリの無難なRPGと化した。ヴァルキリープロファイルの続編としてはただの失敗作だが、いちRPGとしては普通に面白いというやや困った作品。
 

ヴァルキリープロファイルの志は継承されず

 
 コンセプト・美術・音楽・システムが渾然一体となり、トライエース作品の中でも群を抜く、初代PSゲームの中でも間違いなくベスト10に入る、奇跡的なまでの完成度を誇る突出した大傑作だった前作に比べると、まばゆいばかりの威光は消え失せ、凡庸に堕っしてしまいガッカリでした。表現の遥か高みを目指し、その気骨がゲーム全体から漏れ出していた前作に対して、今作はそもそも最初から偉大な前作越えを諦めてしまっているのか気迫がまったく感じられません。
 
 神話そのもののように壮麗な神界ヴァルハラと、漫画のベルセルクの様な死の気配が濃厚で、もはや終わりゆくだけの荒廃した人間界ミッドガルド・・・・・・これら北欧神話をベースにしつつそれに囚われるだけでなく、SFテイストを忍ばせ、デカダンな趣向も凝らした世界を背景美術と音楽、精巧なドット絵アニメーションで表現し切ろうという強固な意志のもと、完璧なまでに調和が取れ相乗効果を発揮していた前作に比べ、今作は美術や音楽など、各要素自体は良くできているのに、それぞれが孤立してしまっており、うまく調和が取れていません。
 
 ラグナロクが間近に迫った、救いようのない終末世界という、作品トーンの方向性が分かりやすかった前作に比べ、過去のわりと平穏な時代を舞台に選んでしまった結果、ただのありがちなダークファンタジーもどきのような作風になってしまいました。前作は神話モチーフらしく叙事詩的な一個人のドラマを超越したスケールがずっしりと背後に佇み、凄みを効かせていたのに、今作は主人公の成長譚の延長でしかなく、いくら北欧神話の固有名詞が出てきても、まったく威厳がありません。神話であることを前提とし、それを優先して作られていた前作に比べ、キャラクターものであることを優先させた結果、キャラクターに神話が負けてしまい、北欧神話がただの世界観設定に没してしまった感があります。神話よりもキャラクターのほうを前面に押し出すのは下品です。
 
 スターオーシャンシリーズやインフィニットアンディスカバリーなど他作品でも見られる、トライエースの悪癖中の悪癖である中身がスカスカなくせにダラダラ長いムービーも辟易させられるだけでした。ラスボス手前の空間的に奥行きのある構造を利用して画面奥でドラマが展開されるのを観賞させるというような気の利いた演出をもっと全編に徹底して欲しかったです。くだらないどうでもいいムービーをダラダラ垂れ流して甘美なヴァルキリープロファイルの世界を汚すのではなく、このような品のいい演出こそを中心に据えて作られていたら、本作に対する印象は大幅に向上していたと思います。
 
 街の景観も、前作が狂ったようなパースペクティブで異様なビジュアルを作り、良い意味で奇想な作風と呼応していたのに対して、今作も一応移動に伴って背景を動かして見せたりと凝ってはいるものの、別段それが雰囲気作りに貢献しているかというと技術だけが自己主張して浮いて見えるだけ。やはり各要素が孤立しているだけで前作のような妖美なハーモニーを奏でてはくれません。
 
 

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前作とのシステム比較

 
 前作とほぼ同じ部分は、街もダンジョンも横スクロールの作りな点と、ダンジョンがややメトロイドヴァニア風な構造な点、シンボルエンカウントな点、〇、△、□、×のボタンをタイミングよく入力しコンボを繋げるバトル部分、など。
 
 

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 大きく変わった部分は、チャプターピリオド制というラグナロクまでの制限時間が無くなりオーソドックスなRPGスタイルとなり、時間経過を気にせず自由にダンジョンや街を行き来できるようになった点。チャプター間にプレイヤーの働きによって神界から貰えるMP(マテリアライズポイント)という有限なリソースをやりくりしてアイテムや装備を確保しなければならないという前作の特徴的だった要素がなくなり、単純に敵を倒すと無限に手に入るお金で物を売買できるようになった点。バトルが単純なターン制からテイルズオブシリーズや、同社のスターオーシャンのようにエンカウントするとバトルフィールド内を移動できるという要素が追加された点(テイルズやスターオーシャンのようなフィールド内をリアルタイムで敵味方が動くのではなく、コチラが動くと敵も動くという風来のシレンの様なシステム)。スキルがレベルアップ時に獲得できるポイントを振り分けるタイプではなくなり、装備やアクセサリーに設定されているルーンの色や形を組み合わせて入手するようになった点、などなど。
 
 

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 その他、主人公がヴァルキリーからほぼ普通の人間(人間の肉体に人の魂とヴァルキリーであるシルメリアの魂が同居している)になったため、細かい部分を除き、ヴァルキリーに付随する要素(空を飛べる・死んだ人間の魂をエインフェリアにし鍛え、ヴァルハラに転送する・オーディンにアーティファクトを献上する、など)は全て無くなり、全体的に単に普通のRPGっぽくなりました。
 

ストレスが大幅に軽減されたダンジョン

 
 本作から新たに追加された封印石という、ダンジョン内に設置することで広範囲に効果を及ぼし、相手の能力を下げたり、所持することで自軍の能力をプラスしたりする要素は、やや粗削りで改良の余地はあるものの、自分的にはかなり好みでした。例えば炎属性の攻撃を多用する敵が多いダンジョンで炎属性の威力を低下させる封印石をダンジョンに設置すると、敵の炎属性攻撃を弱体化できたり、回復アイテムの回復量が上がる封印石を所持することでボスの強力な攻撃を強化された回復アイテム効果で耐え抜いたりと、どの封印石を持ち運ぼうか、どの封印石を設置して敵を弱体化したらいいかなど、考えるのが楽しいです。
 
 前作から改善された部分も多々あり、ダンジョン内でマップを開く際のちょっとした待ち時間が無くなり便利だったり、マップ画面は未踏破エリアがぱっと見で分かるようになり使い勝手が大幅に向上したり、アイテムを拾うのにいちいちしゃがまなくてよくなったり、特に意味もなく素通りするだけのエリアによる水増しでうんざりするほど複雑で広くなりがちだったダンジョンがスッキリした構造となり迷いづらくなったりと、ダンジョン部分はユーザーフレンドリー志向でストレスが大幅に減りました(ただ、移動速度が遅くなったため、もどかしさも生じた)。
 
 前作のダンジョンに入るとピリオドが経過してしまう作りのため、ダンジョンを自由に出入りできない不便さがなくなり、かつ程よい刺激として機能する難しすぎないパズルや封印石の印象も良く、下手をしたらダンジョン探索は前作より楽しいかもしれません。これで移動速度が前作と同程度だったなら文句はありませんでした。
 

アクション性を取り入れた結果、シンプルさを台無しにしたバトルシステム

 
 バトル周りのありとあらゆるシステムは前作よりも複雑化しており、プレイ中ずっと「なぜ進化もしていない、ただ複雑になったシステムを延々前作より苦労して覚えなければならないんだろう・・・・・・」と悶々とし続ける羽目に。敵は常に単体なので前衛・後衛の概念がなくなり、強力な魔法を使ってくる後衛の敵を射程の長い弓や魔法で先に片付けなければならない、とか、憑依系の敵は先に倒すと他の敵に憑依され手強くなってしまうため後回しにしなければならない、とか、ダメージを受けると自爆する敵は決め技などで一気に倒しきらないといけない、など倒し方に工夫を求められることもなくなりました(その代わりに攻撃箇所によって部位破壊するという要素が足された)。
 
 新しく追加されたパーティを青チーム・赤チームに分割させて行動させられるというシステムを際立たせるためか、やたら敵が長射程の範囲攻撃ばかり多用してくるため鬱陶しかったり、バトルフィールド内の移動も味方キャラが敵やオブジェクトに引っかかったり、味方が勝手に敵の攻撃射程に入ってしまいムダにダメージを喰らったりとイライラさせられることが多く、とても手放しで褒められたものではありません。
 
 全体的にヴァルキリープロファイルにおけるバトルシステムの核である〇、△、□、×のボタンをタイミングよく押し攻撃を連携させるという爽快感のある要素とはほぼ関係ない部分ばかりに力を注いでしまっており、焦点が絞れていません
 
 ただ、不満な点は多々あるものの、バトルフィールド内を移動できるようになったことで前作のやや単調なターン制バトルに比べアクション的な刺激が生まれたのは確かですし、攻撃回数が武器依存だった前作とは異なり、AP(アクションポイント)制となり、パーティ全体で共有するAPが残っている限り武器に設定された既定攻撃回数を超えて攻撃も可能(二回目以降の攻撃は消費APが倍になる)で、AP残量が残っている限り大量の攻撃を敵に浴びせられ続けるという快感は前作よりも上だったりと、一概にダメというほど酷くもありません。
 
 今作も前作と同じく高難易度で、ベイグラントストーリーなどと同様、序盤にスキルや封印石など基本システムをきっちり理解せず、なんとなくプレイしているだけだと中盤以降に難易度が跳ね上がるタイプのゲームバランスですが、その分システムを理解すればするほど楽しさも増していくので並のRPGに比べたら中毒性は高いです。
 
 前作に比べバトル周りが進歩したとはまったく思いませんが、今作をやった後に一作目をやり直すと確かにアクション性のないただのターン制バトルだと単調は単調なので評価が非常に難しいところ。前作の時点でバトルシステムの完成度は非常に高かったので、ここまでムダに弄らなくても、出来ればシンプルさや戦略性を損なわず、マンネリになりやすいターン制バトルにちょっとした刺激を入れるくらいの小規模の改良にとどめておいてくれたほうが自分的にはありがたかったです。
 

最後に

 
 クリアまで約35時間ほど。
 
 キャラクターの魅力に頼りすぎだったり、品の無い大量のムービーによる汚染が深刻だったり、コンセプトがクリティカルヒットしていなかったりと、奇跡の一作だった前作とは比ぶべくもなく、細部に拘泥こうでいしすぎて核心を突き損ねた残念な続編。ですが、トライエースのRPGだけにクリアするまでまったく飽きさせない出来には仕上がっているので、やや評価の置き所に困る作品。
 
 一応前日譚(風なだけ)ということもあり、当たり前ですが前作のあるエピソードがより掘り下げられ、一作目がまた新鮮に映るという最低限の効果があるのは救いでした。
 
 
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