エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー](加筆版)テイルズ・オブ・ゼスティリア(PS3版) 〈感想・評価〉

 

システム紹介

 
評価:70/100

メモ

 
・加筆版はグレイセス、エクシリア1・2を遡ってクリアしたことを踏まえた内容(旧版はグレイセスやエクシリア1・2を遡ってクリアする前に書いたもの)
 
 
 

短評

 
 ライトニングリターンズに影響を受けたのか、海外のゲームを志向する部分と、分かりやすく国産RPG的な部分が同居する、やや歪とも思える出来。これまでのテイルズシリーズの流れからやや逸脱したため問題が山積しているものの、海外ゲーム志向の影響により、過去のテイルズシリーズとは明らかに異なる趣となった点は好印象を受ける。
 
 
 

あらすじ

 
 かつて人間天族(精霊のような存在)が共に暮らす平穏な時代があったことなどとうの昔に忘却され、天族の声を聞き、姿を見られる者が稀少となって幾年月。強大な穢れを纏う災禍の顕主(さいかのけんしゅ)の出現により災厄の時代を迎えた世界。世界中は穢れに染まり、穢れた者達は憑魔(ひょうま)と化し、世界は荒廃の一途を辿り続ける。
 
 そんな下界を襲う災厄など知りもせず、穏やかな天族たちの暮らす里で育った、人間でありながら天族と心を通わせることができる少年スレイ。スレイは人間と天族の架け橋となり、世界をよりよい方向へと導く導師に憧れていた。そんなスレイだったが、とある事件をキッカケに大国ハイランドの政治事情に巻き込まれ、人々を救うため世界の救世主である導師となる決意をする……。
 
 
 

悪化に歯止めがかからないバトル

 
 バトルシステムは、技や術を使う際にTP(MPのようなもの)を消費するスタイルだったエクシリアから、またSC(スピリッツチェイン)ゲージという、グレイセスのCC(チェインキャパ)路線に似た、攻撃コストをゲージに一元化するバトルシステムに変更されました。ただ、この変化はバトルの魅力にまったく貢献できてはいません。
 
 本作のバトルの特徴は、エクシリア2の弱点属性連携という、敵の弱点属性を突くと連携で攻撃を叩き込む際に弱点属性ではない攻撃も全て弱点攻撃扱いとなるシステムをベースにしている点。プラス今作から、弱点連携をするとSCゲージ(スタミナゲージのような働きをする)の回復も早まるオマケまで付きます。さらにそれに加えて、神依(カムイ)化という、人間とパートナー天族の合体変身システムが搭載され、火・水・風・土という4属性を振り分けられたパートナー天族を、敵の弱点に応じてリアルタイムに交換しながら戦うという、エクシリアの一作目にあったリアルタイムキャラ交換システムに近い要素まで足され、より弱点を突くことの重要度が増しました。
 
 自分はベイグラントストーリーやポケモン、ペルソナのような弱点を突くことを中心としたバトルシステムが好きなので、方向性としてはエクシリア2のような無属性攻撃のゴリ押し変身システムよりかは好ましいのですが、やはり本作の神依(カムイ)化も結局攻撃・攻撃・攻撃と攻撃のためにしか機能しておらず、防御面の属性耐性にも注意を払わなければならないというようなメリハリがなく、やや単調に感じる場面が多かったです。
 
 後、パートナー天族はやられてもベンチに引っ込めると勝手に復活するというシステムを機能させるためと、TPが廃止されSCゲージに代わり、TPを回復させる必要がなくなったことなど、理由が複数重なったためでしょうが、エクシリア1・2にあった、味方キャラが勝手にアイテムを使って回復してくれるオートアイテム設定機能がなくなり、そのせいで回復周りのプレイヤーへの負担が大幅に増しました。これがエクシリア1・2の快適さを経験した後だとかなりきつく、ただでさえ弱点や耐性、特技・奥義・天響術(魔法のようなもの)の三すくみ制、パートナー天族の交換・合体変身などに忙殺される上に、回復まで気を回さなくてはならず、バトルが常にてんてこ舞いでしんどいです。
 
 バトルシステムはグレイセスに戻そうとして失敗してしまった感があり、SCゲージもCC(チェインキャパ)のような数値で表示されるより、今どれくらい残量があるのか把握し辛かったり、そもそもバトルの爽快感がグレイセスと比べたら天と地ほどの差があったりと、とても褒められた完成度ではありません。
 
 バトルシステム以外は、スキルシートという武器・防具にくっつくスキルを法則に則って並べるとボーナスが得られるというセッティングシステムや、ライトニングリターンズの影響っぽい同名装備を合成していく要素、装備・称号の熟練度があったり、相変わらず空気以外の何物でもない成長システムなど、どれもこれも中途半端でバトルシステムの面白さに寄与できていません。
 
 
 

国産RPG特有の香味を薄め、渋みを獲得するアプローチ

 
 本作で最も好印象だったのは、テイルズシリーズとしての根幹部分を除いて、全体的に海外のゲームに漂う高級感のある香り(もしくは空気感)を意識し、それに寄せようとした試行錯誤の跡が窺える点です。
 
 まず、テイルズシリーズ独特の非常に凝った固有名詞が大量に飛び交う世界観設定が陰を潜め、わりとシンプルで落ち着いた基調に。災厄の時代にハイランドとローランスという二大大国が睨み合って全面戦争に発展しそうな緊迫感がある中、人間を戦争に導こうとする元凶を倒すという、テイルズシリーズとしてはややけれん味に欠けるような地味で暗い話です。
 
 自分はサスペンス大好き人間なので、本来は国産RPGのけれん味やスケール感のある派手な世界観設定やストーリーをクリフハンガー的な話の推進力として用いる手法が好みですが、本作はゲームのアプローチ的に地味な手法を選択しているため、それに合わせて物語のトーンも抑制(海外のRPGに比べたらまだ派手ですが)する方向に舵を切っており、その戦略は理解できました。地味になった分、テイルズシリーズ的な派手さ・(良い意味でも悪い意味でも)軽さが鳴りを潜め、テイルズシリーズにしては堂々とした佇まいとなり、これが中々好ましかったです。
 
 堂々さの要因は幾つかありますが、まずエクシリア1・2より大幅に進化したフィールドマップの広大さからもたらされるビジュアル的な迫力。もちろんオープンワールド型のRPGなどの広さとは比ぶべくもありませんが、フィールド・ダンジョンともに非常に面積が広く、今までプレイしたエンカウント(通常・シンボル)型のRPGの中でも特にマップが広いと感じたドラゴンクエスト8やラストレムナントよりは広く、スターオーシャン4と同等クラス程度。初見時は「テイルズシリーズもマップの広さで威圧してくるほど貫禄がついたか!」と嬉しくなりました。エクシリアのフィールドマップはほとんどコピペしたような味気ないものでしたが、今作では、しっかり地域ごとに自然な風景や高低さが設定されており、旅や冒険気分が大幅に強化されました。
 
 シンボルエンカウントなのにマップをやたら広くするという方向性は、正直あまりゲームの面白さ的にプラスになっているとも思えませんし、ドラゴンクエスト8のようにうまくマップが広いことを利用しあちこち散策させるような楽しませ方が出来ているワケでもなく、ただ単に広いだけのこけおどしと言えなくもないですが、テイルズシリーズでここまで堂々とした広さを見せつけられると、それだけで圧倒されてしまいます。今作と比較するために昔にクリアしたままほったらかしていたラストレムナントやスターオーシャン4のソフトを引っ張り出してプレイしてみるとそのあまりの国産RPG臭さに驚かされます。グラフィック的には高性能なゲームエンジンを有するトライエースのスターオーシャン4のほうがテクスチャ周りが緻密でまだ綺麗な印象ですが、ゲームからもたらされる味が国産RPG特有のこってりとしたもので、ゼスティリアの爽やかさを体感した後だとその垢抜け無さが重く感じました。
 
 本作をプレイした時、最初はなぜ国産RPGにしてはマップや街の移動時に品があると感じるのかイマイチ感覚を理屈に落とし込めずに困惑させられましたが、他のやや古めのゲームと比較させることで理由が分かりました。操作性周りやカメラ移動の国産RPG特有のぎくしゃくした不自然さを消し、プレイヤーが動かしてストレスのない感度に調整しつつ、ヌルヌルと動く滑らかな移動モーションを実現したことでこの自然な操作感に仕上がったのだと思います。
 
 その他にも音関連が素晴らしく、メニュー画面の耳に心地よいSEだったり、フィールドマップで流れる広い世界に圧倒された少年の胸の高鳴りを表現したかのような勇壮なオーケストラだったり、街や村の、時には陽気で時には穏やかなストリングス系BGMだったりと、元々音楽が良かったテイルズシリーズの本領が遺憾なく随所で発揮されており、魅力を底上げしてくれています。
 
 さらにゲームとは直接関係ありませんが、ufoテーブルのOPアニメーションやアニメーションムービー(の一部)の完成度の高さが作品に彩りを添える結果となっており、それは、フロムソフトウェアのゲームにおける白組のプリレンダムービーの豪華さを連想させられました。これは、ただ単にムービーが単体で綺麗だから良いという単純なものではなく、密度の濃い映像でゲーム作品にリアリティや奥行きという重量を持たせ、かつその重みに耐えられる強度が作品側に備わっている場合にのみ生じる心地よいハーモニーで、ムービーがゲームを、ゲームがムービーの価値をお互いに高め合う幸福な関係性が築けています。
 
 
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、フィールドマップが広くなったのは良いのですが、フィールドマップ上に街の外壁は見えるものの、ダンジョンとなる建物などが映らず、なぜかダンジョンはエリア移動した先にあるため、これではフィールドマップを移動中に遠景でダンジョンとなる場所がうっすら見え、そこに徐々に近づいていくというような高揚感がまったく生まれず、フィールドを広くした効果が激減してしまっています。
 
 それと、フィールド・ダンジョンのマップが広くなり迫力が増したと上記しましたが、それには悪影響もあり、フィールドマップが広いのはまだいいとして、問題はとんでもない広さのダンジョンです。新しいダンジョンに入り全体マップを開く度、あまりの広さに目眩すら覚えるほどで、正直嬉しいというよりもだだっ広いダンジョンを延々歩かされ苦痛でした。これは、マップの広さに対して移動速度が遅めなのも原因の一つ。前作のエクシリア2ではR2ボタンでいつでもダッシュ移動できたのに、なぜか今作ではサポートタレントという能力でバトル後や街中で噂話を耳にした時のみ移動速度が上昇するという、意図がまったく分からない改悪がされており、理解に苦しみます。この移動速度が遅いという問題はただエクシリア2と同じようにダッシュ機能をそのまま入れれば解決したかもしれないのに、なぜ今作よりマップがずっと狭いエクシリア2にはあったものを、コチラには採用しなかったのか本当に謎です。
 
 エクシリア関連で言うと、ゲームプレイのサクサク進む快適さが大幅に後退したのも痛いです。エクシリアはテンポを重視するためにダンジョンのほぼ全てのパズル要素を撤廃するなど、もたつきを排除しようと躍起になっていたため、今作のフィールドやダンジョンがやたら広く移動に時間がかかったり、パズルだらけで常に足止めされ続ける、ほぼエクシリアの姿勢を真逆に振れさせたようなとろくささはきついものがあります。
 
 後、フィールド・ダンジョンともに起こる問題で、本作は敵シンボルと接触しバトルが発生すると、敵シンボルと接触した場所を中心にバトルフィールドが形成されるという疑似シームレス的な処理がされます。そのため、狭い場所で敵シンボルと接触すると、バトルフィールドが異常に狭く、そのせいでカメラ処理がデタラメとなり敵や自分の操作キャラが視認できなくなったりと、バトルに弊害が生じます。この問題は、マップが狭い→狭いため敵シンボルをかわせずに接触し戦闘に→バトルフィールドが狭いためカメラが見え辛い、という負のスパイラルを起こしており、少なくないストレスの元に。
 
 最後に、シナリオ面は全体的に地味で暗いのは我慢できるとしても、説明不足すぎて登場人物の言動がイマイチ理解できない点が大きな不満です。大まかな流れはとりあえず追えますが、全体の70%くらいしか情報が提示されず、残り30%ほどは劇中のキャラクターは知っているらしいのに、それをプレイヤーには教えてくれず、情報が隠されたまま。終始もやもやしっぱなしの状態で話が進むため、途中から話に対しての興味が削がれ、どうでもよくなってきます。今作はテイルズシリーズの中でも群を抜いて説明不足が付きまとい、登場人物の行動の納得のいかなさが目に余ります。プレイヤーが抱く疑問をうまく潰してくれず、的外れなシナリオ運びに終始し、最後にこれまでに敷かれた伏線のようなものが回収されるのかと思ったら放置されたまま終わられ、余韻も何もあったものではありません。
 
 
 

最後に

 
 クリアまで約40時間強。
 
 バトルシステムはとてつもなく出来の悪いグレイセスもどきで、シナリオも相変わらず一つもパッとしない中途半端さ。
 
 ただ、完成度の高さを目指したというよりも、新しい方向性を模索しているといった感が強く、失敗している箇所も相当数に上り、そのせいでテイルズシリーズとしての根幹部分にひびが入り、やや壊れ気味でもありますが、過去のテイルズシリーズでは味わったことのない落ち着きや品の良さが備わり、どうしても嫌いにはなれません。
 
 

テイルズオブシリーズ

 

 

旧版


 

 

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