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[レビュー]Better Call Saul / ベター・コール・ソウル シーズン1 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:75/100

イントロダクション

 
 全10話。アメリカドラマのブレイキング・バッドシリーズの登場人物である弁護士ソウル・グッドマンを中心としつつ、元警官でガスの優秀な部下だったマイク・エルマントラウトも登場する、スピンオフ前日譚ドラマタイトルのBetter Call Saul(ソウルに電話しよう!)”は、ブレイキング・バッド本編に出てくるソウルの弁護士事務所のキャッチフレーズの意。
 
 時系列としてはブレイキング・バッド本編が始まる6年前で前日譚ではあるものの、冒頭は本編の最終回後のシーンから始まるため、本編をファイナルシーズンまで見ていることがある程度前提な作り。
 
 一応、まだ駆け出しの弁護士であるソウル(今作では本名のジミー・マッギル)が依頼人のムチャクチャな要望を型破りでデタラメな手段で解決していくという形式のようなものは微かに存在するにはするものの、起こる展開は基本はなんでもアリな構成。
 

コメディリリーフキャラにだって濃い血が通っている

 
 ブレイキング・バッドシリーズをコンセプトがぶれることのない圧倒的なバランス感覚で見事最後まで描き抜いて見せた製作総指揮のヴィンス・ギリガンが継続して参加しているためか、脱力感のある乾いた演出タッチは健在で、そのため設定やキャラクターが共有という以前に、作品から受ける感触がブレイキング・バッドのそれに近く一安心でした。ブレイキング・バッド本編に比べると予算が大幅に減ったのか、低予算を努力と工夫とセンスでなんとか誤魔化している感がありありで、やや苦しい部分も見受けられるものの、丁寧に築き上げたブレイキング・バッドシリーズのブランドに傷をつけるだけの出来損ないのスピンオフだったら嫌だなという不安は早々に掻き消してくれました。
 
 今作のメインコンセプトであろう、ブレイキング・バッド本編で最もお調子者で、最も掘り下げ甲斐のあるキャラであるソウルの口の達者さに悲哀を漂わせ、人間味を足すという試みはいきなり一話の冒頭で成立してしまっており、逆にそこを引っ張らなくて大丈夫なのか?と心配に思ったほど。無口なソウルという衝撃的な冒頭の掴みから始まり、口の達者さは実は不安の裏返しでもあることを示す描写を何度も何度も挟み、本編で築かれたソウルという若干重みが無くふわふわしたキャライメージをあっという間に分解、再構築し、主役級の存在へと昇格させてしまう手腕は、本編におけるウォルターのキャラの立て方のそれと同じで感心させられました。
 
 終盤明らかになるソウルと兄であるチャックの関係性が、実はブレイキング・バッド本編における中盤以降のウォルターとスカイラーと同じ、一方が一方を修復不可能なほど拒絶しているのに相手はその自覚がないという状態に近いことが分かるという展開も、登場人物への印象を固定化せず、常に変化させ続ける本編のアプローチに通じるものがあります。
 
 ・・・・・・ただ、良い部分は多々あるのですが、それと同じくらい欠点も多いです。ブレイキング・バッド本編にあった不満点をそのまま受け継いでしまっていたり、今作から新しい問題が生じたりと、とても手放しで褒められる完成度ではありません。
 
 まず、スピンオフということの弊害でもある、本編から引き続き登場する、すでにキャラが立った状態であるソウルやマイク(後、トゥコ)と、今作から登場するキャラの存在感にあまりにも落差があり過ぎる点。あんなに濃くて魅力的なキャラに支えられていた本編だったのに、今作から登場するキャラはソウルの兄以外はほとんど記憶に残らない人ばかり。ハッキリ言って、今作のキャラはほぼ全員、本編でジェシーがよくつるんでいた悪友たちよりも存在感が薄いです。それなのに、今作から登場した人物のキャラ立てはほぼ無視してソウルやマイクばかりがステージのセンターを占有し続けるため、この落差が最後まで埋まることがありません。そのため、ソウルとマイクが映っていないシーンは画面に華が無く、終始退屈気味。あんなに濃いキャラの存在感で有無を言わさず見る者をねじ伏せられていた本編とは異なり、魅力をほぼ本編から引き続き登場するキャラと楽しかった本編の思い出に依存してしまっているため、一つの単体作品としてはイマイチ自立できておらず、良くも悪くもスピンオフの範疇でしかありません。
 
 次に、ブレイキング・バッド本編もそうでしたが、トラブルが起きる原因を人の話を聞かない相手や、常識の通じない変人に設定する点。これは本編ですらその都度イライラさせられましたが、とにかく話が通じないor人の話をまったく聞かない・理解できないバカや変人を出してトラブルを起こすという安易で低レベルなサスペンスの作り方をするので、不快で仕方がありませんでした。作り手としてはオフビートでコミカルなやり取りのつもりでしょうが、いい加減バカや変人に頼り切った話の盛り上げ方は止めて欲しいです。
 
 その他にも予算が減ったのか、やたら舞台が同じ場所ばかりで絵的に退屈だったり、本編よりも作品のテンポが緩慢で、まるでドラッグの効果でへろへろになっている際のジェシーのようなとろくささが全編気になったり、ブレイキング・バッド本編のように末期癌になり家族に残す金が必要だからメス(メタンフェタミン)を作るなど、切迫した状況が設定されていないため、終始ダラダラして話がまるで進んでいるように感じないなど、不満は尽きません。
 
 終わってみると、良い部分と悪い部分の印象は、さすがに良い部分が勝るものの、ガツンと来るような尾を引く余韻は一切残りませんでした。
 

最後に

 
 一本の作品としてはとても本家と比ぶべくもないですが、確実に見る前より見た後の方がソウル・グッドマンというキャラクターとブレイキング・バッドシリーズへの愛着が深まることだけは確かな一作。
 
 
駆け出し

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