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[アニメ・レビュー]遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS 〈感想・評価〉

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トレーラー

 
評価:75/100

短評

 
 ストーリーの起伏もデュエルの理屈もかなぐり捨て、ただただビジュアルの迫力追求だけに振り切った映像特化型の作品。「遊戯王の劇場版ってこういう感じでしょ?」という当初の予想を完全に裏切る力作。
 

悲哀の咆哮を上げる孤独なブルー・アイズ・ホワイト・ドラゴン

 
 冒頭、海馬コーポレーション所有の軌道エレベーターから地球を睨み付けるように見下ろす海馬というショットは、地球(世界)の王として君臨しているのに心がまるで満たされないという海馬の心中を非常に分かりやすく大仰なビジュアルで表現することに成功しており、この時点で今作が並々ならぬ気合で作られていることが伝わってきました。
 
 冒頭のシーンの連なりはわりとテンポよくサクサク進むので、話運びがうまいなぁと感心していたら、本編が始まるとこの冒頭の語り口のテンポ感が嘘の様に消え失せ、終始延々グダグダ間延びし放題の弛緩した展開で、あまりの退屈さで眠気すら感じました。尺が2時間10分で余裕があるためか一向に話が先に進まず、これなら30~40分は削れるだろうと思うほどのスカスカな内容。しかも、原作のキャラクター描写に割くのならまだファンサービスとして分かりもしますが、思い入れのまったくないオリジナルのキャラたちに割かれるため、終始「いいから早く先に進んでくれないかな・・・・・・」と不満が尽きませんでした。
 
 デュエル描写もとにかく勢いと映像重視で、一体今何が行われているのか説明する気が皆無で、ほとんど内容が理解できません。特に気になったのは、ターンエンドを宣言していないのに勝手に相手がドローしたり、攻撃をし始めるので今どっちのターンなのかすら見失う点。これは自分のターンなら攻撃が相手に通じるかどうかの攻めの緊張感、相手のターンなら猛攻を凌がなければならないという守りの緊張感と、それぞれターンごとに方向性のやや異なる緊張感を生じさせなくてはならないのに、それがほとんどごっちゃに描かれるため、途中からデュエル状況の推移すらどうでもよくなってしまいます。
 
 作画はほぼ全編凄まじいものの、ストーリーはグダグダで、デュエルもイマイチ熱中できないので表面的な部分の印象は散々でしたが、裏・・・・・・というか今作のメインコンセプトであろう闇遊戯(アテム)という永遠のライバルを失った喪失感に苛まれる海馬の描写は素晴らしいものがありました。
 
 画面は彩度が低めな感情すら冷やしそうな色味で、しかも全体的に青味がかっている様な印象を受けるほど青という色に満ちています。それはブルー・アイズ・ホワイト・ドラゴン・・・・・・海馬を連想させるカラーデザインで、永遠のライバルを失い心が深く沈んだ海馬の心象が反映されている様にも見えます。終始いつものように傲慢に振る舞う海馬・・・・・・なのに、青という色が感情を抑制するかのように画面を寂しげに染め上げ、センチメンタルを心の奥底に秘匿しながらそれを必死に振り払うかのようにデュエルに没頭する海馬の姿を痛々しげに際立たせ、作品全体を悲哀で満たしています。
 
 ストーリーもやたら集合無意識集合意識というワードを強調し、皆が強く信じればそれは実在することになるんだという、闇遊戯(アテム)という存在の在り方の定義に終始し、物語の終焉ラストのラストで「あぁ、これは全て海馬のための物語だったんだ」と納得しました。
 

最後に

 
 ストーリー・デュエル内容ともに退屈でしたが、海馬のための2時間10分だと思えば特に文句もありません。
 

余談

 
 今作を見ていて一番連想したのがゲームのシャドウハーツⅡで、アリスを失い表面上は気丈に振る舞うも心は悲嘆に暮れるウルの姿でした。海馬とウルの印象がダブるなんて、今作の異質さの証明のよう。
 

遊☆戯☆王シリーズ

 
 
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