エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー]龍が如く 見参! 〈感想・評価〉

トレーラー

 
評価:70/100

短評

 
 龍が如くシリーズらしい江戸時代初期の祇園(ぎおん)をゲーム内で再現しようというチャレンジ精神溢れる好ましい部分と、2に比べゲームテンポが悪くなったり、致命的なほどセンスがダサい部分があったりと、長短の落差が激しい箱庭アクションRPG。
 

苦行の3時間の先にあるもの……

 
 プレイ開始直後、元はPS2のHDリマスター版である1と2をクリアし、ついにハードをPS3に移した龍が如くシリーズ最初の作品ということで、どれだけグラフィックが綺麗になっているのかワクワクしていると、なんと画面がボケボケでインターフェースの文字や会話ウィンドウ内の文字がまともに読めず「何で元がPS2のゲームの後にPS3のゲームをやったら画面がしょぼくなるんだ?」と呆然とさせられました。理由は1と2のHDリマスター版は解像度が1080pだったのに、今作は720pなので、単純に解像度が下がった分視認し辛かっただけ。しばらくプレイし、1080pの鮮明さに慣れていた目を720pに慣らすと画面がボケているという感覚は落ち着き、文字が普通に読めるようになり一安心。
 
 解像度にも慣れ、ようやくまともにプレイできると思うと今度は素手でのバトルが2に比べると味気なさ過ぎて困惑。理由は簡単で素手での戦闘をメインにしていた1・2に比べ、今作は宮本武蔵が主人公ということもあり剣での斬り合いが主なので、ステゴロの殴り合いはオマケ程度のものに格下げされたため。
 
 素手での戦闘がしょぼくなったことの理由にも合点がいき、ようやくプレイに集中できるかと思いきやなんと、序盤は3時間ほど、なぜ宮本武蔵が祇園にいるのかという理由を説明するだけの強制回想プロローグが続き、もう嫌になるほど一本道の退屈なプレイを強要されうんざり。
 
 
 「いいからさっさとまともにゲームをやらせろ!!」
 
 
 と、半ばぶち切れながら退屈この上ない回想エピソードを死んだ目でこなし、ようやく本編がまともに始まる頃には疲れ果てました。
 
 デモンズソウルのようにあえて序盤を苦行とすることでプレーヤーに高難易度耐性を付けさせる、などという何らかの意図があってやるならまだ分かりもしますが、本作はただストーリーの説明と伏線を敷くためだけに3時間近い苦行を強いられるのでたまったものではありません。作り手は明らかにユーザーに甘えすぎで、こんなゲーム開始直後にムービー→イベント戦闘→ムービー→イベント戦闘→ムービー→イベント戦闘→ムービー……という、苦行の連続を体験させたら飽きられて途中でゲームを放り出されるという危機意識がないのかと呆れました(例えば、ラスト・オブ・アスの主人公の過去を描くプロローグが3時間続くと考えれば分かりやすいと思います)。
 
 序盤の強制回想プロローグ地獄という難所を抜けると、ようやくいつもの龍が如くシリーズらしく、色街である祇園と繁華街である洛外町(らくがいちょう)の二つのエリアを自由探索できるようになり印象が上向きます……が、ここまで辿り着くまでに評価は最低レベルまで落ち込んでいるため、その後の信頼回復が容易ではありませんでした。
 

技術的には進歩、演出的には後退した祇園

 
 シリーズの一作目で感じた妥協せず一つの街とそこに住まう住人を描ききるという強い意志に近い、江戸時代初期の祇園を再現しようという高い志は非常に好感が持てました。街の作りは1・2から一新され、祇園や洛外らくがい町という今作の中心となる街はエリア全体がシームレス(店の中や街から街に移動する際は読み込みが入る)で、1・2にあったカメラ切り替え処理がなくなり、一部カメラが固定の場所はあるものの、街の中である程度自由にカメラを動かせるように。
 
 ただ、技術的には間違いなく進歩しているのに、どうしても1・2の昔のバイオハザードのような俯瞰気味の固定カメラが切り替わっていく方式は、あれはあれでカメラアングルにより街の表情をどの様にフレーミングして切り取るかの計算が入っていたので、なくなるとなくなったで普通の味気ない自キャラの後方からのありがちなアングルとなり、若干寂しさも感じました。
 
 祇園も洛外らくがい町も広さは神室町(かむろちょう)に劣っていますが、この時代の空気を伝えようという工夫が景観や店の看板などのデザイン、NPCの服装や挙動から垣間見え、妥協を感じさせない作り込みの密度は好感触でした(贅沢を言えば物理演算オブジェなど、プレーヤーが触れられ、ゲーム内世界との距離を近づけさせられるものもあちこちに設置して欲しいところですが)。まだまだ発展の余地はそこここに垣間見られるものの、PS3用の一作目としてリニューアルは果たせているので及第点の完成度だと思います。
 
 ただ、問題は1・2のようにメインのストーリーが神室かむろ町で起こり、神室かむろ町内をあちこち移動させられるという作りではなく、何かイベントが起こると祇園や洛外らくがい町からさらに外のエリアに移動し、そちらでイベントが展開するという構造です。これのせいで、祇園や洛外らくがい町はただの遠出をする際に準備をするための拠点程度の印象しかなく、ストーリー展開が街(舞台)と密着していません。祇園や洛外らくがい町以外のエリアは、ただの退屈な一本道か、本当にイベント用の狭いエリアしかなく、舞台としての魅力は皆無。もっと物語の舞台を祇園や洛外らくがい町に限定しなければ、せっかく作り込んだ街並みが真価を発揮できず、非常に勿体ないです。
 
 それと、神室かむろ町は一つの街の中に大人が多いホテル街や飲み屋街、若者が多い劇場前広場など、複数の表情が存在し、場所によって異なる雰囲気を醸していたのに対して、祇園や洛外らくがい町はどうしても住人が無個性気味で、味気ないのも神室かむろ町に勝てない原因の一つだと思います。それに、アイデアとしてはキャバクラ→遊郭、キャバ嬢→遊女という置き換えは分かるのですが、やはりキャバクラに対して、遊郭というのは正直時代劇などの映像作品でしょっちゅう題材として見かけるということもあり、キャバクラほど新鮮に映りませんでした。龍が如くシリーズが斬新な着眼点を追及するなら、祇園を舞台にするのはいいとしても、遊郭を中心に据えるという安易なアプローチは避けたほうが無難だったと思います。
 
 後、これは些細な問題ですが、龍が如くお馴染みのプロダクトプレイスメント(ゲーム内で実際の店や商品をそのまま登場させるプロモーション手法)が、当たり前ですが江戸時代なため皆無で、やや味気なかったです。この実際ならマイナスになりかねないプロダクトプレイスメントとうまく付き合い、なんならゲーム進行にすら組み込み(ストーリーを進行させるのに必要なアイテムがゲーム内ドン・キホーテで売っていたり)、シリーズの味として機能していたので、無くなるとそれはそれで寂しいです。商品や店のプロモーションすら魅力として取り込んでしまうほど懐が深い龍が如くシリーズはやはり姿勢として大人なんだなぁとしみじみ。
 

作業化し足を引っ張りだしたバトル

 
 今作の問題点の中でも放置できないのがバトルテンポが非常に悪くなってしまった点。シンボルエンカウントでバトルに移行するという点はまったく同じなものの、バトル中の動作が非常にもっさりしてレスポンスが悪く、その影響で動かしていて楽しくない上にバトルも長引くため一戦一戦が面倒臭く感じるように。
 
 前作から引き続きヒートアクションという爽快感のある必殺技と、相変わらず邪魔なだけのQTE要素で成り立っているバトルですが、今作は1・2のような素手ではなく剣がメインで、そのため、鍛冶屋で武器を強化・錬成する要素が加わり、ここは割と好印象でした。武器をひたすらお金で強化し、限界まで強化すると素材を用いて錬成(クラフト)し、次のランクの武器に改良するという作業を繰り返すため、龍が如くシリーズの豊富なサブクエストとも連動し、非常にプレイのモチベーション維持をアシストしてくれます。強力な武器を作ればザコ敵もサクサク倒せるようになり一石二鳥なのですが、問題はそのバトルシステム自体がもっさりして爽快感に欠けるため、どうしてもバトルは煩わしさのほうが勝ってしまう事。プラス、ヒートアクションを発動した際のド派手なモーションが長くなった点も、戦闘の緩慢ぶりに拍車を掛けてしまっています。
 
 1・2と異なり、ヒートアクション(必殺剣)が収集要素となり、そこら中のエリアにいる動物やイベントを見つけてはインスピレーション(天啓)を得て新技を会得できるのが楽しくついつい集めてしまったり、そのヒートアクションも近・中・遠距離で発動できたり、一刀・二刀流・大太刀というスタイルごとに用意されていたりと、かなり豪華で、基本の操作性さえもう少しまともなら2を凌駕するバトルシステムになれた可能性を秘めているのに残念です。
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、洛外らくがい町に同心が巡回していて、視界内に入ると「御用だ! 御用だ!」と言って追いかけてくるというシステムは本当にいらなかったです。「御用だ!」と言われながら追いかけ回される時代劇風アイデアを思いついてそのまま考えなしにノリで入れてしまったという安易さが露骨過ぎて、このシステムが何かゲームの魅力に貢献するという事が皆無です。龍が如くとは街を散策するのを楽しむゲームなのに、散策の楽しみを妨害する様なシステムを配するというのはこのゲームに対する冒涜に等しく、いい加減にして欲しいです。
 
 それと、1・2の登場人物の何人かがそのままの容姿で登場するため、ほとんど時代劇というよりも、コスプレ時代劇コントを見ている様な印象しか受けませんでした。ハッキリ言って宮本武蔵がなんとなく前作主人公の桐生一馬に似ている程度で後は全部オリジナルキャラで良かったのに、変に前作のキャラを出してしまったせいでおふざけ感が出てしまい、作品としてはマイナスに働いてしまったと思います。
 
 後、今作で最も酷いと感じたのは、冒頭の3時間に渡る強制回想プロローグではなく、尋常じゃないほどセンスがない、作品の余韻を破壊し尽くす、最低最悪な話の幕引きの仕方です。もし自分が龍が如くシリーズで最初にプレイしたのが今作で、このラスト周りを経験したら多分未来永劫このシリーズに再び興味を持つことはないであろうと思うほど酷いです。見たことを後悔させられる駄作の邦画を観終わった後の余韻に非常に近く、うすら寒さすら覚えました。こんな作り手の正気を疑うほどのダサい終わり方でプレーヤーに何かメッセージが伝わると本気で思っているなら、作り手は狂っています。
 
 ただ、このセンスのダサさは正直1・2でもちょこちょこ顔を出す瞬間がありました。この問題点は実は前々からシリーズに潜んでいたものでもあり、これまでは目立たなかっただけで、このセンスが今後また噴出することがあるのかと思うと不安でなりません。
 
 ここまで完膚なきまでにパーフェクトに超絶ダサくて痛いゴミ以下のラストは二度と御免です。
 

最後に

 
 クリアまで約20時間ほど。
 
 江戸時代初期の祇園の雰囲気をゲーム内で再現するという新しいことに挑戦する姿勢が窺える点は大好きですが、ダメな部分が信じられないほどとことんダメで、ほぼ序盤と終盤の出来の悪さにより評価が激落ちしているので、サンドイッチに例えると具はそこそこ美味しいのに、具を挟む外側のパンが両方腐っているような感じ。
 
 間違っても龍が如くシリーズで初プレイが今作という自体だけは何がなんでも絶対に避けるべきで、自分が一作目をやって感銘を受けた部分をほぼ真逆にひっくり返した様な出来で、一作目が良い意味で問題作だったのに、こちらはとことん悪い意味での問題作です。
 
 ・・・・・・ただ、ボンテージルックのインリン・オブ・ジョイトイに言葉攻めされる滝修行のミニゲームは最高でした!!
 

龍が如くシリーズ

 

 

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