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[レビュー]テイルズ・オブ・グレイセスf(エフ) 〈感想・評価〉

 

トレーラー

 
評価:80/100

短評

 
 スピーディで楽しいバトルシステムの魅力のみで一点突破を狙ったかのようなバトル特化型のシンボルエンカウント型RPG。バトルシステムの完成度に対して、ストーリーやその他システムが追随できておらず、ややバランスに欠ける。
 
 
 

孤軍奮闘するバトルシステム

 
 今作で最も面白さの土台を支えているのはシリーズでも屈指と思われるバトルシステムの魅力です。
 
 攻撃にはA(アーツ)技という通常攻撃タイプと、B(バースト)技という広範囲攻撃や魔法などやや特殊な攻撃を行う二種類のタイプがあります。キャラクターによってアーツが得意だったりバーストが得意だったり、両方こなすバランスタイプだったりが設定されており、敵や状況に応じて使い分けを求められ、これがいい感じで刺激となり、マンネリ回避に貢献。序盤はなぜ攻撃タイプが二つに別れているのか意図を図りかねましたが、これが敵の弱点を突くという要素を帯びだし、ひたすら同じパターンの攻撃を繰り返すマンネリをうまい具合に遠ざける働きをしてくれます。
 
 バトルは常にスピーディなテンポを重視。簡易的なスタミナシステムであるCC(チェインキャパ)数値は、何もしないとあっという間に回復するため、敵を攻撃し放題という締まりのない状態を避けつつ、CC数値(スタミナ)の残量に気を配りながら攻撃・回避を行うという必要最低限の緊張感を確保できており、非常に好ましいバランスです。別途MP(テイルズで言うとTP)のようなものはなく、ただ簡易的なスタミナシステムであるCC数値だけで全ての攻撃コストを一元化してくれるため、例えば蘇生魔法を使って欲しいのにMPが空で、まずMPを回復させてから蘇生魔法を使う……といったもたつきは排除され、ちょっと待てばあっという間にチャージされるCC数値を消費するだけであらゆる行動が可能。この行動を全てCC数値に一元化するというシステムと、アーツとバーストの二種類の攻撃スタイルを敵の弱点に応じてスイッチしながら戦うという組み合わせの妙が功を奏しており、攻撃も回復も非常にストレスフリーな使用ができ、隙のないハイスピードバトルの爽快感に磨きをかけています。
 
 今まで自分がプレイしたテイルズオブシリーズの中でもバトルシステムだけ見たら間違いなくトップクラスの完成度な今作ですが、それ以外のシステムは可もなく不可もなくな程度。
 
 RPGにとって下手をしたら最重要である成長システムは適当で、通常のレベルアップはもはやただの空気。セットした称号に応じて付随するスキルをSP(スキルポイント)を貯めることで入手していくという、ファイナルファンタジー5のジョブチェンジシステムの簡易版のような成長システムも一見興味深いのですが、ただ称号をセットすれば自動的に付随するスキルが追加されていくだけで味気なく、プレイヤーが何かを選択する喜びが希薄。
 
 成長要素の醍醐味とは複数の選択肢から何かを選択すると他を諦めるか、もしくは取得を先送りしなければならないという心地よい選択の苦悩にこそあり、このようなセットする称号を選ぶ以外にはほぼ全自動的にスキルがプラスされていくだけのシステムでは物足りません。せめて称号の熟練度が上がる度に複数の選択肢から取得するスキルや強化する項目を選べるなどの工夫が欲しかったです。
 
 他にもエレスポットという、セットする項目によってバトルの補助や移動の高速化、アイテムの自動生成といったことをほぼオートで行ってくれる便利なシステムもありますが、これも頻繁にチェックさせられるため集中力増幅の効果は多少あるもののゲームの面白さを底上げするほど決定的とも言えず。武器・防具に強化用の欠片を合成し、武器・防具の熟練度を上げるとその合成した効果をアクセサリー化して抽出でき、それを装備できるという合成システムも非常に回りくどくて理解できるまで時間が掛かりました。なぜ一端関係のない武器・防具に合成してからアクセサリー化しなければならないのか理解に苦しみます。
 
 結局、どれもこれも完成度の高いバトルシステムを強化するほどの魅力はなく、どうしてもシステム周りはバトルシステムだけが突出して出来がいいという印象しか残りません。
 
 
 

あの日出会った花畑の少女の名前を僕達はまだ知らない。

 
 チュートリアルを兼ねた幼少期のプロローグエピソードが終わり本番である青年期が始まった瞬間、これからどのような壮大な物語が紡がれていくのだろうかワクワクしましたが、この瞬間の胸の高鳴りが結局ゲーム内で最大の高揚感でした。
 
 中盤(と言うかほとんど終盤)で明らかになるけれん味全開のとんでもスケールの世界観設定はテイルズオブシリーズの中では悪くないほうなのにも関わらず、そこまでの持って行き方が下手でカタルシスとして機能していません。シナリオの構成が雑なため、ちょっとしたディテールの掘り下げや伏線が足りず、ないしは機能せず、ただ設定が剥き出しのままプレーヤーの前に放り出されるため「なんだって! 自分たちがいたこの世界って実は!?」と認識がひっくり返らなければならないはずなのに、「え? 何これ? どういうこと?」と、事態を飲み込めず、提示される情報にきょとんとさせられるだけ。プレーヤーの意識の照準を世界観設定に合わせて誘導できておらず、唐突にドラマから世界観設定方面に興味の主軸が移るのに対応できませんでした。なぜ散々ドラマで引っ張っておいていきなり終盤で世界観設定を強調しだすのか謎。せっかく大長編ドラえもん/のび太とアニマル惑星(プラネット)のようなワクワクする設定まで用意したのに、もう少し世界観設定へ疑問を持たせてから世界の捉え方そのものがひっくり返る倒錯感を丁寧に演出して欲しかったです。
 
 設定のぶっ飛びさ加減に対してカタルシスがないというのとやや関連するのが非常に淡泊な話し運びのトーン。原因はいくつかあるものの、やはり幼少期から青年期への移行を丁寧に描きすぎてしまったことの弊害でもある主人公アスベルがすでに序盤で成長しきってしまったことによる認識変化の乏しさ。テイルズ・オブ・ジ・アビスが中盤まで引っ張った主人公が己の傲慢さを悔い改め心を入れ替えることで劇的な成長を遂げるという強力なドラマ性を序盤で使い切ってしまったため、主人公が旅を通して成長していくという手応えが極端に薄いです。これは一つ一つの街がほとんど通過点にしか感じられず、旅を通して多くの人や価値観と出会うという描写が少ないことにも起因していると思います。親友を救いたいという物語の動機付けもプロローグで友情を誓い合った以降はそれほど強調されず、しかも話の論点がアップデートされないため同じ様な印象しか受けない行動がひたすら繰り返されるだけで単調。中盤以降は若干影が薄くなりがちで、話の推進力としては非常に弱いです。
 
 ストーリーは構成に難があり、全体的に淡泊気味。まったく同じ設定で同じストーリーでも必要な箇所に必要な描写を付け加え、プレーヤーの興味を的確に牽引してさえいけばいくらでも印象が上向く余地があるため非常に惜しい。特に自分は国産RPGのカタルシス展開大好き人間なので、終盤の衝撃的な設定が明らかになる展開はもう少し素直にビックリしたかったです。
 
 
 

不満あれこれ

 
 一番気になったのはPS2版のアビスほどではないものの、エリア移動の際に常に軽いロードが入る点。ただ部屋の扉を開けるだけでも軽いロードが挟まれるため、単発では別段気にならないものの、数を重ねていくとどうしてもストレスが蓄積されていきます。
 
 後は、ストーリーの推進力が弱めなせいで、テイルズオブシリーズの根本的なゲームとしての体力の低さが露呈しているのも気になりました。ストーリー以外ではほとんどバトルシステムとダンジョンのパズル頼みなバランスが剥き出しで、テイルズってこんなに土台となるシステム周りが貧弱なのかと改めて気付かされることに。発売順と逆ですが、先にゼスティリアをプレイしていたので、あのマップの広さに甚く感心させられたのはこの貧弱さをうまく誤魔化す効果があったからなのだと納得。
 
 
 

最後に

 
 本編クリアまで約35時間ほど。本編クリア後に追加される後日談である未来への系譜編はクリアまで約7~8時間で、合計約40時間強ほど。
 
 バトルシステム7:その他要素が3くらいのバランスで、完成度の高いバトルシステムに依存し過ぎなきらいもありますが、これほどまでにバトルがマンネリ化せず、ラストまで瑞々みずみずしいシステム鮮度を保ち続けられるのは驚異的。細かい不満も多々ありますが、操作の快楽性からもたらされる爽快感抜群の素晴らしいバトルシステムを実現できた時点で今作の価値は十二分です。
 
 
 

テイルズオブシリーズ

 

 

中盤で衝撃的な世界観設定が明らかになるゲーム

 
 

 

 

テイルズ オブ グレイセス エフ

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