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[レビュー]シャドウ・オブ・モルドール(steam版) 〈感想・評価〉

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トレーラー

 
評価:80/100

短評

 
 バットマンシリーズとアサシンクリードのシステムのいいとこ取りをしており、節操の無さが若干気にはなるものの、パルクールを用いるステルス要素と爽快感のあるアクション、ブランドという敵を洗脳し同士討ちさせるシステムのコンボが魅力的なオープンワールドステルスアクションRPG。
 
 

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これぞアクションRPGのお手本!

 
 ゲームの基本部分はほぼアサシンクリードやファークライなどのUBIのオープンワールドゲームベースで、マップを探索し、ファストトラベルポイントとリスポーンポイントを兼任する鍛造塔を解放しながら、メインミッションをひたすら進めるもよし、サブクエストやマップに点在するやり込み要素を回収して回るも良しな作り。
 
 正直、プレイ開始直後はあまりにもUBIのオープンワールドゲームに似すぎていたため「なんだこの出来損ないのアサシンクリードみたいなゲームは……」というマイナスの印象からのスタートでした。しかし、徐々に本作のアクションRPGとしての完成度の高さに評価が上向いていきました。
 
 開始直後はあまりバトルシステムに工夫がなく、単にバットマンシリーズと同様のボタン一つでお手軽に出来る攻撃とカウンター、回避アクションをただなぞっただけの焼き直しをやらされている感覚でしたが、メインミッションが進むごとに単調だったアクション性が嘘のように向上していきます。それも次から次に新しいアクションが追加されていき操作が煩わしくなっていくという類のものではなく、それまでと同じアクション中に簡単な派生バリエーションが追加されるという形のため、別段操作が複雑化するということもありません
 
 シンプルな操作性という利点を維持しつつ出来ることは格段に増えていくというアクションゲームにとって理想的とも言えるバランスで惚れ惚れします。
 
 まず、バットマンにもあるヒットストリーク(攻撃連続ヒット数)が一定数溜まると出せる必殺技の様なアビリティ(インスタント処刑・インスタント洗脳など)が追加されるとザコ敵を戦闘中流れを止めずに即死させられたり、洗脳し同士討ちさせたりといった行動が可能となり、戦闘のテンポがぐっと向上します。さらに、その場その場でどう立ち回ればいいのか思考を促がされもするため、たとえ敵にあっさりやられたとしても「あそこでもっとこう立ち回ればよかったのに」と、失敗の原因を常に自分側に置けるため、理不尽さをゲームに八つ当たりすることもありません(ただQTE要素が多いため、そっちではイライラさせられますが)。
 
 

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 これは自分にとって最も好ましい、真剣にプレイしていればさほど手こずらないものの、ちょっとでも油断したり手を抜いて雑なプレイをするとあっけなくやられるというバランスをうまく実現できており大変好ましかったです。
 
 それと、今作のメインテーマでもある復讐という要素とも絡みますが、ウルク達をわざと憎々しげに描くことでウルクへの負の感情を植えつけ、敵を処刑する際にそっと快感を忍ばせるというテクニックも、敵にトドメを刺す際の処刑モーションのカメラワークや小気味いいSEと相まって心地よく、システム的にも演出的にもアクションゲームとして隙がありません。
 
 アクションゲームとして優秀なことはさることながら、それだけにとどまらずRPGとしても基本中の基本である最初に不便さをプレイヤーに強いて不満を抱かせてから不便に感じた部分を成長要素によってさっと取り除いてあげるという成長への溜めをしっかり演出することで、アビリティツリー(スキルツリーと同じ)が解放されていくことに快楽が生じるように調整されており、ここら辺のバランス感覚はUBIのスキルツリー作りのヘタさと比べると圧倒的に上です。
 
 

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 プラス、本作がステルスアクションというやや複雑な一面を持っているということも踏まえると、序盤は快適性をセーブし、プレイヤーに負荷を掛けてシステムに順応させることに努め、ある程度立ち回りに慣れてきたところで負荷部分という補助輪をさっと外す。そこからはプレイヤーに自由な戦略性を提供するという、RPG要素をプレイヤーに対しての能動的なアクションリミッター解除装置としてうまく用いているデウスエクスシリーズなどと似たような印象で、無駄がありません。
 
 

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 もしかしたら隠れて進んでもいいし、正面から戦ってもいいという攻略のバリエーションが存在するステルスゲームは、いきなり全てのシステムをオープンにするのではなく、どんな機能が欲しいのかをプレイヤー側に一旦所望させ、それに対してゲーム側が複数の選択肢を提示し、そこから好きな攻略方法をその都度チョイスさせるという、選択の駆け引きを楽しむRPGの面白さと相性が良いのかもしれません
 
 

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指輪物語ではなくロード・オブ・ザ・リング

 
 自分は映画版よりかは原作小説のファンですが、当然というか指輪物語を題材にしているといっても映画寄りなバランス設定で、あまり好みなイギリスファンタジー的な優雅で落ち着いた指輪物語感ではなく、ハリウッド的ド派手アプローチ方向で少々ガッカリしました。
 
 原作小説のエピック(叙事詩)ファンタジー要素がメインで、ヒロイック(英雄譚的)ファンタジー要素はそこそこくらいのバランスだったものを、映画化する際に見やすくするため大幅にエピック要素を削り、ヒロイック要素を増量させたバランスをほぼ踏襲しており、自分の好きな指輪物語とはやや逸脱した調子で、指輪物語が題材ゆえにモチベーションが強化されるということも別段ありませんでした(映画版は映画版で大好きですが)。
 
 指輪物語を題材とするゲームとしても、海外のゲームのハイファンタジーへのアプローチの手法をそのまま転用するような形で、プレイしている最中ずっと指輪物語に明らかに影響を受けて作られているエルダースクロールズなどの海外のRPGに似た何かをやっているようなもやもやした気分が晴れることはありませんでした。ハイファンタジー作品としての歴史は指輪物語の方が圧倒的に古いのに、ゲームでハイファンタジーものをやるという挑戦に限っては海外のハイファンタジーゲームのほうが指輪物語を題材としたゲームよりも歴史とそれに伴うノウハウの蓄積があり完成度も高いゆえに、ゲームというメディア上ではもはやどっちが主従でオリジナルなのか分からなくなります。
 
 もし本気で原作の指輪物語の魅力を抽出してゲームにするのなら、先行する指輪物語もどきのゲーム群とは根本的に異なるアプローチを取り差別化しないと、現状ではただの指輪物語もどきゲーム群もどきという何とも中途半端な立ち位置になってしまい、全てのオリジンである指輪物語のほうが昨今の完成度の高いハイファンタジーゲームの亜種みたいに見え、かわいそうです。
 
 本作はバットマンやアサシンクリードのシステムをほぼそのまま土台にして作られていることから見ても、あまり指輪物語をゲーム化する際にオリジナルのものを創造しようなどという意志は感じられず、ただ商業的に指輪物語のアーカイブを利用しているだけで、今作をプレイしたからといって指輪物語愛が深まるといったことは特にありませんでした。
 
 ここら辺は指輪物語という途方もないスケールの人工神話を創造したトールキンにも通じる、指輪物語を映像化するため狂気的な美術へのこだわりを発揮したピーター・ジャクソン監督のほうが作り手のスタンスとしては圧倒的に好感が持てるところ。
 
 

不満あれこれ

 
 本作のウリの一つであるはずのネメシスシステムという、サウロン軍内部の階級制度に干渉し、小隊長をブランド(洗脳)して軍団長に出世させたり、洗脳し潜り込ませたウルクと他のウルクとを抗争させたりするというシステムはアイデアとしては面白いのに、実際にやるとただメインミッションのイベント用程度の印象でしかありません。思いついたシステムを取りあえず実装してみたという感じでイマイチ乗り切れませんでした。
 
 

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 もっと本編そっちのけでドハマりしてしまうほど作り込まないと、よくできたステルスアクションRPG部分に比べ、なぜかメインであるはずのネメシスシステムの方がオマケに見えてしまうという本末転倒なバランスになっています。もっと、メタルギアソリッドピースウォーカーⅤ:ザ・ファントムペインのようにウルクをフルトン回収してマザーベース的な反サウロン軍組織を拡大していくようなSLG的な面白みを加味する、などもう一工夫が欲しかったです。
 
 

最後に

 
 クリアまで約15時間ほど。
 
 最近UBIの成長要素のバランス設定が下手クソなゲームばかりやっていたせいか、本作のアクションRPGとしての出来の良さには素直に感心させられました。
 
 アクションゲームとしても優秀で、かつRPG(成長)要素がそれを邪魔せずアシストすることに努めるという、アクションとRPGがお互いを尊重しあう良好な関係を築けており、アクションRPGとして非常に満足度が高い良作。
 

 

シャドウ・オブ・モルドール

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