エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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[レビュー]ベイグラントストーリー、スクウェアRPGの頂点 〈感想・評価〉

プレイ動画


評価:95/100

短評

 
 自分の好きなRPG生涯ベスト級の大傑作。究極のストレスデザインがもたらす至福のゲーム体験がゲーム愛を喚起させるゲームの中のゲーム。目新しさよりも、敵の弱点をつくだけという堅実性を重視したコンセプトの徹底が心地よい。
 

あらすじ

 
 バレンディア国にかつて存在した城塞都市レアモンデ。大地震によって崩壊し、現在では地形の変化により他の地域と隔離され、古代の予言者の名を冠したカルト教団メレンカンプの根城とされる廃都市である。そのカルト教団メレンカンプと裏で繋がっていると噂されるバルドルバ公爵邸にメレンカンプの教団員が押し入り、バルドルバ公爵の息子を誘拐するという不可解な事件が発生。
 
 事件の真相解明とメレンカンプのカリスマ的リーダーシドニーの確保、もしくは抹殺のためレアモンデに派遣されるVKP(バレンディア治安維持騎士団 )のリスクブレイカー(重犯罪者処理班)アシュレイ。アシュレイが魔都レアモンデで思い出す、隠された記憶とは……。
 

舞台となる魔都レアモンデの魔性

 
 舞台となる魔都レアモンデは、初代バイオハザードのようにマップが開始場所からラストステージまで全て繋がっている作り(最初は鍵が掛かっている扉をスルーして先に進み、鍵を入手したらかなり手前に戻る構造)。自分はこのような同じ場所を何度も何度も訪問するタイプのエリア構造が非常に好みで、一本道で二度と戻らないエリアがあるようなゲームよりも、舞台に愛着が湧きます。
 
 構造が魅力的なだけでなく、音周りの作り込みも丁寧で、魔都に合った暗めで妖しいBGMや耳に残る癖のあるSEなど、音楽の力が縁の下の力持ちとなり雰囲気作りの一助として機能しています。特に、地下に潜るような場所に若干のホラー要素を持たせるような美術を施し、気味の悪いSEやBGMで不安な気分を搔き立てた後、陽光が差す市街に出ると、今度は川のせせらぎなどの環境音だけとなり、ほっと気分を落ち着かせたりと、緊張と緩和をスイッチする音の演出が非常に巧みです。
 
 ムービー部分で登場人物たちが会話している場所が後々訪れる場所の予告となっている演出も気が効いており、追う側、追われる側双方が同じ場所を時間差で通過しているという地続き感を自然と演出できています。
 
 全エリアに名前が付けられているという神経質的なこだわりもレアモンデという狂った魔都を引き立てる素晴らしいアクセントとして機能しており、魔都演出に一片の隙もありません。
 

究極のストレスデザイン

 
 このゲームはあらゆる行動にストレスを付随させることを徹底しています。テレポートで指定した魔法陣に飛ぶ際に少なくないMPを消費し、敵を攻撃する際もリスクゲージ(命中率低下、敵からのダメージ量上昇)が増加し、攻撃すれば武器の耐久率が減り、HPを回復するには主に回復魔法でMPを消費し、MPを回復するにも自動回復のため短くない時間を消費。
 
 このように、行為全てに溜めとなるストレスを盛り込み、それを達成することに快感をそっと忍ばせています。このゲームにタダで一方的に得をさせて貰える箇所は少なく、何をするにしてもプレイヤーに大なり小なりの代償が付き纏うことに。このプレイヤーに掛けてくる圧が絶妙の極みに達しており、バランス調整に費やした血の滲むような苦労がありありと想像できます。
 
 この結果、プレイヤーはゲームから一方的にサービスで報酬を与えられているというもてなし感とは無縁の、工夫によって結果を勝ち取ったのだという誇らしい気分に浸れます。全行為に対価を要求することでプレイヤーにゲームと対等であると認識させ、ゲームに奉仕をしてもらうという不健全な関係を正し、ゲームと真に対等な関係を能動的に築かせる、という、凄まじいまでに困難な偉業を達成しており、このような水準に達しているゲームには数えるほどしか出会ったことがありません。
 
 プレイそのものが純粋感動であり、ゲーム内の全行為が喜びとなる、怪物じみた満足度の作品に仕上がっています。
 

敵の弱点を突くという、ただそれだけの面白さを追求し尽くしたシステム

 
 バトルシステムはシミュレーションRPGの面白さを少々のリアルタイム性を追加し擬似的に再現したようなシンプルですが奥深いもの。システムそれ自体に特に複雑さはありませんが、そのシステムを用いて行う弱点探しが楽しいです。
 
 このゲームは考えながらプレイしないと防御力が高い敵にダメージが与えられないという事態が頻発します。敵にダメージを与えるにも敵の弱点をアナライシスというサーチ系魔法で調べたり、アナライシスが使えなくとも魔法をターゲッティングして予想ダメージ量から弱点属性を割り出したり、武器交換で打撃・切断・貫通のどの種類の攻撃方法が有効なのか試行させたりと苦労を要求し、プレイヤーにタダで報酬(大ダメージ)が与えられることはほぼ皆無です。プレイヤーに要求されるアクション的なことと言えば、せいぜい敵との間合いの調節や、バトルアビリティを使うことくらい。
 
 バトルの面白さの本質はセッティングにあり、いかに敵にあった武器に持ち替え、アビリティをセットし、種族や属性値に配慮した補助魔法や攻撃魔法を選択するか、ただそれだけです。それだけなのに考えて選択するという行為に喜びが生じ、大ダメージを与えられる度に興奮が全身を駆け抜けます。
 
 武器や防具には種族(ヒューマンやビースト、ドラゴンなど)に応じた種族値や、属性(火や水、土や風など)に応じた属性値というものがあります。
 
 装備ごとに固定ではなく流動的で、攻撃した敵の種族・属性に応じてパラメータが増減するため、特定の種族に特化した武器などを用意しておかないと最悪ダメージをまったく与えられなくなることも。この種族値や属性値、武器の攻撃タイプの複雑さが初見のプレイ時には一番のネックで、どのパラメータがダメージに影響を与えるのかが分かり辛いため、序盤は効率的に敵の弱点をつくということが困難極まりないです。
 
 逆に言えば、効率的な攻撃方法さえ分かればこのゲームの面白さは跳ね上がるため、序盤であまりバトルアビリティには頼らず、種族値の調整と武器交換で敵を倒す癖をつけておかないと、難易度が跳ね上がる中盤以降が地獄になります。
 
 プラス、このゲームは敵のHPがあまり序盤から変化せず、防御力だけが桁違いに増加する仕様。そのため、通常のゲームと異なり、与えられるダメージ量が増えず、中盤以降は小ダメージで何とかやりくりしていく形となり、爽快感や成長感が薄めです。そのせいでRPGにおいて大事なキャラが強くなっているという実感が得られず、モチベーションが落ちるのが問題と言えば問題な程度。これもシステムに慣れてしまえばそういうものと割り切れるため、不満とまではいきません。
 

不満あれこれ

 
 まずは、魔法やブレイクアーツ(必殺技)の演出が長い点。いちいち魔法を使う度に戦闘を中断され、数秒待たされる羽目に。ただ通り抜けたいだけのエリアで敵の魔法待ち状態に頻繁に遭遇すると、さすがにイライラします。
 
 後、魔法やアイテムの使用、バトルアビリティの変更など、頻繁に行われる動作にはショートカットキーが設定されていて大変便利なのですが、唯一マップをボタン一つで開くことが出来ず不満。このゲームはダンジョンの構造がやや複雑で迷いやすいため、頻繁にマップを開くのですが、それがいちいちメニュー画面から選択させられるのが面倒です。
 
 プラス、バイオハザードでいうところのアイテムボックスのような、使わない道具を保管するコンテナがいちいち使用する度にセーブしなくてはならず、合成する際など、頻繁に装備の出し入れをするのに非常に不便な点。しかもセーブ自体が遅いため、イライラが倍増する始末。
 
 合成自体もパターンが分かり辛く総当たり的になってしまいがちで、コチラがやりたいのは新しい武器を作ると言うよりは、種族値や属性値の新武器への移行だったりするため、いまいちプレイヤーの要望に添った自由度の高い合成システムになっていない点が不満。
 

最後に

 
 最初は迷宮の様な魔都レアモンデがごとく難解なシステムがプレイヤーを惑わし、最後には劇中でグラングリモアの魔に魅入られた者たち同様にこのゲームの虜にさせられる文字通り魔性のRPG。
 
 このような大傑作に出会える喜びを人生の糧とせんがために自分はゲームをやるのだと再認識させられる、非常に幸福なゲーム体験でした。
 

余談

 
 オマケ要素でもあるアイアンメイデンというダンジョンの全エリアのネーミングが拷問がコンセプトというのが好きでした。高難易度のゲームとは一種の拷問と同じというメッセージが素直。
 

 

ベイグラントストーリー

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