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[レビュー]この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO(セガサターン版) 〈感想・評価〉

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プレイ動画


評価:90/100

 

短評

 
 A.D.M.S.(アダムス)システムの斬新さ、シナリオの度を越したスケール感、数々の遊び心に溢れる仕掛けと、最高級のアドベンチャーゲーム体験が味わえる。欠点も数多いものの、一度プレイしたら記憶に刻まれること必至の圧倒的な熱量を秘めている大傑作。
 
 

あらすじ

 
  学界で異端の歴史学者の異名を持つ父が行方不明になってから数ヶ月。もはや死亡したと思われていた父から突然ある人に会えというメッセージが記された手紙と、リフレクターデバイスという並列世界を移動するための装置が届けられる。並列世界を旅し、全ての謎が解き明かされた時、この世の果てで主人公を待ち続けるユーノに会わなければならない理由を知る……。
 
 

セーブの利便性(やり直しの自由)を奪うという逆転のゲームデザイン

 
  本作はA.D.M.S.(オート分岐マッピングシステム)によりプレイヤーの辿ってきたルートが自動で可視化されるという独自のシステムを搭載し、そのマップを利用し、多数存在する並列世界(分岐したルート)を移動し、他の並列世界(もしくは過去)でしか入手できないアイテムを入手してきて、呼応する箇所で使い先に進むというのがメインのゲーム性になっています。
 
 感心させられるのは宝玉セーブ(マップ内に任意で設置できる仮のセーブポイント)をプレイヤーに管理させるという発想です。どんなジャンルでもある程度共通する最強の救済措置であり、万能のシステムであるセーブをサブ的な保険としての役割に留め、メインはテレポート兼、クイックセーブ機能を有する宝玉セーブを利用するという斬新なアイデアに唸らされました。
 
 並列世界を頻繁に移動するというシステム上、他の並列世界にアイテムを持ち越せない通常セーブはただの進行状況を保存するだけの保守的なシステムに成り下がり、アイテムを持ち越せる宝玉セーブこそがメインのシステムとして際立つように設計され、他のゲームでは味わえない積極的なクイックセーブ&クイックロード体験が味わえます。個数に限りのある宝玉を考えながらマップに設置していかなければペナルティとして膨大な時間をロスするため自然と緊張感が生まれる作りとなっており、適切にセーブしないとムダに時間を浪費するという緊張感を持たせるだけでこれほどゲームとしてやり応えが生まれるのかと目から鱗でした。
 
 最終目標はマップ上に点在する宝玉を回収することですが、この部分もよくできています。宝玉所持数がそのままセーブスロットの数となるため、宝玉は先に進むために手に入れる鍵アイテムであると同時に、ゲームを有利に進めるための便利アイテムでもあります。それゆえ、プレイを楽にするために手に入れたいという欲を常に持ち続けられ、宝玉を回収できた時の喜びもひとしおに。
 
 宝玉セーブの使い方を熟知すると、アイテム回収もマップの探索も高速化し、システムを肌で理解できたという充実感を得られることも大きいです。
 
 

壮大なドラマを紡ぐのに壮大なシステムを用いる

 
 これほど語られる物語のスケール感のでかさと、それを語るA.D.M.S.システムの並列世界を移動するという途方も無いシステム的アプローチが呼応し、相乗効果を生んでいる作品も珍しいです。物語を語るのに、それに適切な語り口としてのシステムをリンクしてあげることで、感動が何倍増しにもなっています。
 
 シナリオとシステムを同一人物が管理するからこそなし得た、豪華な物語と、その物語のポテンシャルを最大限引き出すためのシステム設計の隙のなさが堪能できます。これほどリッチな物語&システム体験は自分がこれまでプレイしたアドベンチャーゲームの中でも間違いなくベストで、いかに物語とシステムがゲームの面白さを成立させるための両輪であるのかを確認できる希有な作品です。
 
 

欠点多し、しかし高見を目指したがゆえの誇るべき未完成さ

 
 YU-NOは不満点も数多く、看過できない深刻なものもちらほら。
 
 まず、会話内容に中身がなく、ダラダラ長い点。全体の半分くらいのやり取りは削っても本編に影響はないであろう駄話で、ゲームのテンポ感を著しく削ぐ原因となってしまっているのが残念。あらゆるシーンにエロ要素を散りばめすぎるのももはやサービスを通り越して嫌がらせかというレベルに達し、度を越しすぎ。ギャルゲー的な要素と本編のストーリーも非常に食い合わせが悪く、色々な女の子にちょっかいを出しまくる行動が、最終目標へ至る動機へのノイズになってしまっており、本末転倒。
 
 ややネタバレになりますが、終盤の舞台になる異世界編のあらゆる点が問題。ハイファンタジー感がいくらなんでも耐用年数切れの古くさい記号的なもので、ドラマとしての高級感を著しく削いでしまっています。
 
 後、A.D.M.S.システムが採用されず、ゼノギアスのディスク2を想起させる、ただお話を延々読み進める点は不満ではありますが、開発の都合上仕方なかったらしいので割り切ることに。
 
 一番勿体ないと感じるのは、前半にやってきた出来事と、終盤の展開にほとんど関連性が無い点。A.D.M.S.システムを使いこなし進めてきたミステリー要素多めの本編パートと、異世界編の度を越したようなスケール感のSF的物語に落差がありすぎて、二つのパートの繋がりが希薄です。本編パートでやってきたことの積み重ねが異世界編で一旦白紙になってからまた積み上げていくような、物語的な感情曲線がぶつ切られる印象を受けます。
 
 最後に、一番大きいのは褒めポイントであると同時に序盤のストレス源にもなるA.D.M.S.システムの問題。確かに宝玉セーブを用いるシステムは秀逸なのですが、いかんせん宝玉設置場所を間違えると最初からやり直しさせられるというペナルティが序盤にはあまりにも酷と言えば酷。システムに慣れさえすればどうということはないですが、これのせいで序盤は延々同じルートをくり返しプレイさせられるという拷問のような時間を過ごすことになり、正直面白さよりも面倒さの方が勝ってしまいます。
 
 このゲームは正直欠点が多く、とても手放しで褒められるものではありません。しかし、それは新しいことに挑戦しようという作り手の志があまりにも高すぎたことが原因で生じてしまった問題であり、不思議とこの作品に対する評価を下げる因子にはなりません。
 
 

最後に

 
 偉大なる未完の傑作。普通なら未完成であるという状態は作品にとってマイナスにしか働きませんが、ここまで志が高い失敗は、志の低い成功を軽々と凌駕します。このような志の高い未完成作品が世に溢れて欲しいと切に願います。
 

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この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO

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